人を頼り、“居心地のいい場所”を確保する
——ご著書で、婚活アドバイザーを「実に人間臭い仕事」だと表現されていました。
一見華やかに見えるかもしれませんが、とにかく人間臭い仕事です。というのも、複雑な家庭環境で育ったり、幼少期にトラウマを抱えていたり……会員さんはいろいろな悲しみや苦しみを抱えている人が多くいます。「今、幸せです!」と言える人はあまりいないのが現状。そうした中、皆さんの人生の一部始終を“聞き込んで”いきますが、それだけでもエネルギーを要します。
私の前に座った瞬間に泣き出したり、口から溢れ出るようにボロボロと苦労話をされたりする方も多いです。それを数時間のカウンセリングで聞き出し、否定はしません。
人によっては、どんな人と結婚したいのか、どんな生き方をしたいのか分からない人もいます。その道標となるレールを一緒に考えて、「そのレールを2人で走ってくれる人があなたのお相手ですよ」と伝えるのが私の仕事です。
——交際経験のない男女やシングルマザー・ファーザー、これまで婚活に失敗し続けた人などを次々と成婚へ導いている植草さん。そのマッチング力は、持って生まれたものなのでしょうか。
母の影響もあると思います。私が幼少時のころ、父が約30人の従業員を連れ九州から関東へ行き、会社を立ち上げたんです。関東では母が従業員に出会いの場を用意し、1年で約30人全員を結婚へ導いたのを見ています。結婚後も、仲人として従業員の心をフォローする母の姿を目の当たりにし、「結婚とはこういうふうに、人の手でサポートするものなんだ」と学びました。
だからマッチング力は、才能というよりはお節介力なんですよね。普段から、年ごろの男女を目にすると、「この人は一人で生きているけど、誰かがサポートしてくれたほうが楽になるかもしれない」と必然的に考えてしまうのです。
——会員さんには、どのような気持ちで接していますか?
マリーミーの会員さんは約7割が「他社で結婚できなかった」という方です。中には10年以上婚活し、数百万円を費やしてこられた方もいます。「ご苦労されてきましたね」と頭の下がる思いです。
それから、私も子育てをしてきたので、女性を目の前にすると娘のように思えますし、男性は甥っ子のように思いながら接しています。もともとの性格も人情深く、愛情深いのかもしれません。
——婚活アドバイザーとしてはたらくうちに、仕事への想いは変化しましたか?
立ち上げ時を振り返ると、集客に必死でした。
でも今思うのは、「長年やってきて良かったな」ということです。10数年前に結婚した会員さんのお子さんが中高校生になっているので、あと10年もすればその子たちが「お世話になります」と二世代で来てくれるようになるかもしれません。その日が来るまで頑張っていきたいな、と思います。
——キャリアに悩むはたらく若者の中には、自分に自信が持てずに新たな一歩をなかなか踏み出せなかったり、将来に漠然とした不安を抱いていたりする人も多いです。最後に、そうした読者にメッセージをいただけますか。
今いる場所は、自分が選んだ道です。そこは疑いを持たずに、まずは今の環境で自分の「居場所」を見つけてみてほしい。そのために、「教えてください」「ありがとうございます」「助かりました」という“きちんとした言葉”で人を頼るのです。人間は、頼られるとうれしいもの。言葉を上手に使って、居心地のいい場所を確保しましょう。
(文・原 由希奈 写真提供:結婚相談所マリーミー)