過度の期待は捨てて、将来の選択肢を広げる
──グループから個人名義で活動することになって、仕事観に変化はありましたか?
失敗しても成功しても全て自分の責任になる、というのは違いかもしれません。仲間がいるからこそ得られる喜びもありますが、一人の方が失敗したときの精神的負担が少なくて済む、というか。いいことも悪いことも、自分の許容できる範囲で完結したい性格なのかもしれません。
──会社勤めを辞めてフリーランスになる人の中には、個人で活動することに不安を覚える人もいます。
私は特に気後れすることはありませんでしたね。私の場合、先のことに不安を覚えてしまうのは「こうしなければならない」という一つのゴールしか見えていないときなんです。ゴールが一つしかない状態だと、少しでも道が逸れると不安になってしまいます。
私はそうならないように、たくさんのゴールや可能性を予想して、物事と向き合うようにしています。たとえば、電車で目的地に移動するときは乗り遅れる可能性も考えて、さまざまな選択肢を用意します。乗り遅れたらタクシーに乗ってしまおう、早く着いてしまいそうだったら散歩がてら一駅分歩いてみよう。
そうやって、万が一のことがあっても気持ちを切り替えられる余裕が、私には大切なんです。あらかじめ対策を練っておけば、不安も軽減されます。行動の選択肢を一つ増やすだけでも、心が軽くなるんです。
──希望的観測だけではなく、まさかの事態にも備えておいた方がいいということですね。
仕事に限らず、何事に対しても過度の期待はしないようにしています。どう転んでも臨機応変に立ち上がれるような、しなやかさを持ち合わせていたいなって。
人生設計でも同じような考え方をしています。生涯独身を貫いて芸の道を突き進むのか、それとも30代のうちに結婚や出産を経験するのか。田舎で自給自足の生活をおくっている可能性もありますよね。先のことはわかりませんが、どの選択肢を選んだとしても幸せだと感じられるように、頭の中でシミュレーションしているんです。
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後輩の成長を後押しできるような先輩になりたい
──日ごろからさまざまなオファーが舞いこんでくるかと思いますが、どのような基準で仕事を選んでいますか?
難しそうな仕事を優先して選ぶようにしています。経験値が上りそうな仕事であったり、まだチャレンジしたことがない役であったり。
──未知の分野を切り拓いていく感じなんですね。
ただ、体を張るような企画は体力的についていけなくなってきたかもしれません(笑)。
──卒業してからの5年間で、ご自身が成長したと感じることはありますか?
年下のキャストから相談を受けたときに「自分も少しは成長したのかなあ」と感慨深くなります。
最近は「お母さん気質」が芽生えてきたのか、思い悩んでいるアイドルの子たちがかわいくて。眠れない夜を過ごしていた、かつての自分とも重なる部分も多い。だからこそ、少しでもプラスに導けるアドバイスをしてあげたくなります。
──後輩にはどういう先輩でありたいですか?
優しい先輩になりたいです。もう一度この人と仕事をしたいと慕われるような存在。現場で頼れる先輩たちに囲まれていたからこそ、私はいままで生き残ってこられました。
特に、同じ秋田県出身の俳優さんの存在が大きいです。あちらも私の存在を意識してはいたようですが、最近やっとお会いすることができました。同郷という安心感もあるし、お互い秋田から出てくることの大変さも身に染みているので、共感し合えます。個人的な悩みも気兼ねなく相談できるので、とてもありがたいです。
──逆に、ご自身が課題に感じていることはなんですか?
もっと出演作品を増やしたいです。これまでは緊張感を抱えたまま舞台や撮影が終わることも多かったのですが、最近は共演者の演技を見て学んだり、自身の演技を振り返ったりする余裕も出てきました。ここからスリーステップくらい駆け上がっていきたいです。