ボール拾いで年収1,000万!? 「池ポチャ職人」ゴルフボールダイバーの仕事とは。

「楽して儲けたい」人はゴルフボールダイバーとの相性が悪い

常に危険と隣り合わせであるゴルフボールダイバーの仕事。しかし知名度が上がるにつれ、木村さんのSNSには「ゴルフボールダイバーになって稼ぎたいから弟子にしてほしい」というダイレクトメッセージが届くようにもなりました。

これまでに数十人に仕事のノウハウを教え、後継者を育てようとした木村さん。しかし、実際に業界に残っているのはたったの2人。「狭き門の職業」だと木村さんは語ります。

「あまりに多いんですよ。『楽して儲けたいから、ゴルフボールダイバーになりたい』っていう人(笑)。誰でもすぐ仕事にできると思ったら大間違い。今、国内ではゴルフ場ごとに受け持ちがなんとなく決まっているんです。よほど突出したスキルや関係値がない限りは、仕事を得ることは難しい。潜水士免許を持っていたとしても、ちゃんと稼げるようになるまでに、相当な営業力と技術力が求められると思います。

そもそも『楽にお金持ちになろう』という発想のもと仕事を探している時点で、ゴルフボールダイバーという仕事との相性は悪い気がしています。コツコツとスキルを身につけ、小さな成長を繰り返しながら徐々に稼げるようになっていく職業だから。『楽して稼ぐ』って、要は『コツコツ成長していく』という過程を吹っ飛ばす考え方なんですよね。求めている理想と現実のギャップがありすぎます」

では、精神的にも肉体的にも過酷なゴルフボールダイバーという仕事を木村さんが続けている理由は?

「やった分だけ目の前で成果に還元されるからです。成功を積み重ね、『日本一の腕を持つ』と他者から認められるようになったからこそ、自分の中でもプライドをもってはたらけている。過酷ではありますが、楽しく仕事ができています。

ゴルフボールダイバーという仕事に限らず、『儲かる』とは小さな成功体験を積み重ねた結果だと思っています。自分との約束を一つずつ守り、達成していくことではじめて『年収』という目に見える成果が出るんです」

https://twitter.com/Golfballdiver_/status/1318343677127712769?s=20&t=PjK8reuaYOKkr4sLYgnG9g
近年では地上波テレビのバラエティ番組でも取り上げられるように。

現在の仕事に対しやりがいを感じる木村さん。最後に、はたらくことに対する価値観がどのように培われたのかを聞いてみました。

「ゴルフボールダイバーになる前は焼き鳥屋を営んでいて、3年間で7店舗まで増やしたんですよ。でも離婚を機にうつ病になり、仕事に対するモチベーションがまったく上がらなくなってしまったんです。ついには生きるのも嫌になって、自ら命を絶つために沖縄まで行きました。そしてその時に偶然出会ったのが、ロストボールを販売する会社の社長さん。その会社へ2016年に勤めたあと、2017年から独立し、ゴルフボールダイバーを名乗り始めました。

おそらく僕が『成果が見えることが楽しい』『小さな成功を積み重ねることで成長できる』と考えるようになったのは、一度『死のう』と決意するまで落ちたからだと思うんです。

中卒で勉強も苦手だったのですが、命を救われてロストボール会社に入ってからは、本も読み始めて。『生きる力をつけて、誰よりも強くなろう』と考えていました。周りからも『やけに野心のある奴だ』と思われていたかもしれません。

そのうち『次は認められるようになろう』『次は社会に対し貢献できるようになろう』と、どんどん欲求が加速していくようになりました。まず自分を幸せにできるようになる。次は周りを幸せにできるようになる、次は社会を……と小さなステップから段階を踏んだことが、今の仕事に対する考え方、やりがいにつながっていると思います」

(文:高木望 写真提供:木村洋志)