世界には多くのユニークな食文化が存在し、思いもよらない材料から作られている食品もあります。今回はうんちや嘔吐物、唾液を使った10の食べ物や飲み物を紹介します。

①パンダ茶

▲photo by Mark de Jong via Pexels

パンダ茶は中国四川省の雅安(があん)山岳地帯で、パンダのうんちを肥料にして生産される高級茶です。

2012年に、50グラム(約16カップ分)が3,500ドル、つまり1杯あたり約200ドルで販売され、「世界で最も高価なお茶」として話題を呼びました。

「パンダは竹のみを食べるが、消化器官系が貧弱で、食べたものの栄養素は30%以下しか消化しない。つまり、パンダの排泄物には栄養素と繊維質が豊富に含まれており、これらの重要な栄養素は施肥のプロセスを通じてお茶の中に取り込まれる。」とお茶の開発者は主張しています。

ちなみにお味のほうは「モルトの香りと熟成したナッツの風味が特徴」らしいです。

②龍涎香(りゅうぜんこう)

▲photo by Peter Kaminski via Wikimedia Commons

龍涎香はマッコウクジラの胃または喉で生成される結石です。

甘い土のような神秘的な香りがし、お香や香水として利用さていることで有名ですが、香料としてキャンディーやアイスにも使用されています。

希少性が高く、大きさや品質によって数千万円から数億円もの高値で取引された例があります。

龍涎香が作られる生理的機構や意義に関してはまだ完全には解明されていませんが、嘔吐物ではなくうんち説が濃厚なようです。

③シェラック

▲photo by Dibyendu Roy via Pexels

シェラックは、ラックカイガラムシが樹液を吸って体外に分泌した樹脂状物質です。

エタノールで溶液化されたシェラックは、表面に薄い皮膜を作って水分の蒸発や湿気を防ぎ、光沢を出す効果があるため、光沢材としてチョコレートやキャンディーなどに使われたり、チューインガムベースとしても使用されています。

樹脂状のままでも艶があって蜜っぽい見た目で美味しそうですね。

④ポンテギ

▲photo by Quang Nguyen Vinh via Pexels

韓国のストリートフードであるポンテギは、蚕のさなぎを茹でて味付けしたおつまみ的な食べ物です。

蚕はクワの葉を消化・吸収して絹糸を口から吐き出して繭を作るため、間接的に蚕の唾液が含まれるといえるかもしれません。

見た目が完全に昆虫のため苦手な人もいるようですが、栄養価が高く安価で美味しいため、愛されている屋台料理のようです。

蚕は人間が助けないと生きていけないか弱い生き物である反面、美しい絹糸をもたらしてくれ、さらに最近では蚕のフンの蒸留酒やサナギから作るソーセージが開発されるなど、大きな可能性を秘めていますね。

⑤パパイタン

▲photo by tofuprod via Wikimedia Commons

パパイタンはフィリピンのイロコス地方を中心に親しまれている伝統料理の1つです。

山羊や牛の内臓を余すことなく使ったもつ煮込みで、その独特の風味と栄養価の高さで知られています。味つけに胆汁が使用されているため強い苦味が特徴で、地元の人々に愛されているスープです。

厳密にはうんちではないのですが、胆汁が使われているために、海外では「poop soup」や「dung soup」(うんちスープ)を呼ばれることもあるようです。

⑥ツバメの巣

▲photo by ayustety via Flickr

ツバメに似た鳥のアナツバメの巣で、古来より中国で重宝されてきた高級食材です。

巣の材料は空気中に浮かぶ極微細な羽毛や塵で、それをアイナツバメが唾液分泌物で固めて作ります。

アワビ、フカヒレと並び、中国三大珍味の1つとして有名です。

⑦カース・マルツゥ

▲photo by Shardan via Wikimedia Commons

「世界で最も危険なチーズ」といわれるカース・マルツゥは、ペコリーノ・サルドというチーズに、チーズバエに卵を産み付けさせ熟成させて作ります。

熟成中に卵が孵化し、ウジ虫がチーズを食べて消化・排出することによって脂肪の分解とチーズの発酵が進み、非常に柔らかいチーズができます。

味は強い酸味とほのかなウジ虫の苦味があり、珍味として楽しまれています。

しかし、このウジ虫は人間の胃酸では死なずに生き残り、腸壁を食い破って蠅蛆(ようそ)症を引き起こす恐れがあります。また、発酵を超えて腐敗状態まで進み、人体にとって有毒である危険性もあります。

そのために「世界で最も危険なチーズ」とよばれ、欧州連合(EU)やアメリカでは健康上の理由から、このチーズの販売は禁止されています。

⑧はちみつ

▲photo by Pixabay via Pexels

ミツバチの働き蜂が花の蜜を採集し、蜜胃(みつい)に貯めて巣に帰って吐き戻し、家蜂が蜜を熟成させ、はちみつになります。

働き蜂が運んだ蜜を、家蜂が巣で何度も口に含んだり吐き戻したりして空気に触れさせ、さらに羽であおいで乾燥させて糖度の高いはちみつを完成させます。

はちみつのあのトロみは、蜂の唾液や体内に含まれている酵素が花蜜の成分を分解することで出来上がるそうです。

刺されると非常に痛いため怖がられがちな蜂ですが、一生懸命はちみつを作っているところを想像するととても愛らしいですね。

⑨うん、このブレンド黒

▲photo by サンクトガーレン公式サイト

ジャコウネコのうんちから採取される未消化のコーヒー豆は「コピ・ルアク」とよばれ、胃腸の中で発酵した豆は独特の良い香りがし、また希少性が高く、高値で取り引きされています。

「コピ・ルアク」の他にも動物のうんちから採取したコーヒー豆があります。

神奈川を拠点とするビール醸造所サンクトガーレンが2021年のエイプリルフールに、ジャコウネコ、ゾウ、ハナグマ、ジャクのうんちから採取したコーヒー豆を使用した黒ビール『うん、このブレンド黒』を販売し話題となりました。

非常に人気で即日完売してしまいましたが、次に販売される時はぜひゲットしたいですね。

https://www.sanktgallenbrewery.com/unkonoblend/[リンク]

➉うんちや尿を食糧に変える研究

▲photo by Adam Evans via Wikimedia Commons

長期有人宇宙飛行では、しばしば食糧や排泄物の処理が問題になります。

それを解決すべく、ペンシルベニア州立大学では、人間のし尿をタンパク質と脂肪を多く含む食品に変換する特定の種類の微生物を活用するシステムが研究されています。

このシステムの要は「嫌気性消化」という微生物が酸素を使わずに廃棄物を分解するプロセスで、「嫌気性消化」は地球上の都市廃棄物を削減するために一般的にも使われています。

テストでは、し尿に第一の微生物群を加えてメタンを生成させ、そのメタンを第二の微生物群に与えました。

その結果第二の微生物群は成長し、52%のタンパク質と36%の脂肪を含む食用として利用できるものになりました。

(ただしテストで使用されたのは実際の人間の排泄物ではなく、代替の液体や固形廃棄物です。)

この技術は将来の宇宙旅行での食料供給に役立つ大きな可能性を秘めており、今後の研究が楽しみです。

<参考>

https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S221455241730041X[リンク]

これらの食べ物、飲み物には、その土地の文化や伝統に根ざしたものもあり、世界には多種多様な食文化が存在することを再確認させてくれます。

ちょっと勇気がいるかもしれませんが、興味がある方はぜひ一度試してみてください。

<引用>

トップ画像:photo by いらすとや https://www.irasutoya.com/2015/08/blog-post_385.html

画像2枚目:https://www.pexels.com/ja-jp/photo/6939448/

画像3枚目:https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Ambergris.jpg

画像4枚目:https://www.pexels.com/ja-jp/photo/5777724/

画像5枚目:https://www.pexels.com/ja-jp/photo/6875090/

画像6枚目:https://commons.wikimedia.org/wiki/File:2013_Angeles_Philippines_Trip_Day_4_(10323515114).jpg

画像7枚目:https://www.flickr.com/photos/ayustety/317460698/in/photostream/

画像8枚目:https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Casu_Marzu_cheese.jpg

画像9枚目:https://www.pexels.com/ja-jp/photo/33260/

画像10枚目:https://www.sanktgallenbrewery.com/unkonoblend/

画像11枚目:https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Andromeda_Galaxy_(with_h-alpha).jpg

(執筆者: ゆずくん)