日本初。人口肛門を露わにした「水着オストメイトモデル」とは。エマさんが語る。

日本に22万人いるオストメイトたちへ、希望を伝える

自分自身の変化に戸惑いを感じる日々の中、何気なくInstagramで「#オストメイト」と検索してみると、海外のオストメイトたちが不透明のパウチをつけ、ビーチやジムなどを楽しんでいる投稿を発見。エマさんは担当の看護師へすぐに「このパウチをつけてみたい」と依頼し、デンマークに本社を持つコロプラスト社から取り寄せてもらいました。サイズ感などが合わないと便が漏れてしまうこともありますが、取り寄せたパウチはエマさんにフィット。現在もグレーのパウチを愛用しています。

さらに、パウチを見せ、笑顔で楽しそうに生活している投稿も見かけ、エマさんには一つの思いが湧きました。

「オストメイトたちにとって、ストーマは生きるための選択です。生きている証、勲章だと私は捉えていて。

だからこそ、日本に22万人もいるオストメイトたちには羞恥心や絶望感ではなく、希望と自信を持って生きてほしいと思い始めました。海外のオストメイトたちがそうであるように、楽しく生きていけることを伝えたい。そう思い、私は服を脱ぎました」

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Emma Otsuji Picklecs(@officeemma)がシェアした投稿

それが、冒頭でもご紹介したこの写真です。自ら服を脱ぎ、パウチをつけた目一杯の笑顔の撮影を自費で敢行。すると、この写真を偶然NHKの方が見つけ、ドキュメンタリーをきっかけに、オストメイトモデルとしての活動がスタートしました。

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医師であり、オストメイトである。利他的であり、利己的である

現在、オストメイトモデルであり、がん研有明病院の健診センターで内科医としても勤務されているエマさん。医師の仕事を続けているのには理由があります。

「ちょっとだけ医師で、ちょっとだけ患者の私は、患者さんたちが持つ小さなお悩みに応えることができるんです。オストメイトだと公表したことで『実は私も』という声も、たくさんいただきました。

オストメイトとしてのことはもちろん、たとえば、便秘が辛いとか、検査が怖いとか、できれば主治医に聞きたいけど、聞いていいか分からない、そんなちょっとした困りごとを聞ける立場にいるんですよ」

オストメイトモデルとして活動を始めて3年。エマさんは「まだまだ私のジャーニーは続きます!」と話しました。次なる目標は、オストメイトではない方々へオストメイトのことを理解してもらうこと。たとえば、多目的トイレで見かけるオストメイトマークの認知や、「オストメイト」という言葉自体の認知も広げていきたいそう。

「この病気が発覚するまでが平坦な道のりではなかったからこそ、命のありがたみも実感していますし、オストメイトの私だからこそ伝えられることがあると思っています」


多目的トイレのオストメイトマーク(筆者撮影)

最後に、エマさんにとってはたらくことはどのような意味をもつのかお伺いしました。

「私にとってはたらくことは、利他的であり、同時に利己的であると思います。私の好きな曲の1つに、槇原敬之さんの『僕が一番欲しかったもの』というのがあって、歌詞をご存じですか?」

1番の歌詞は、自分が素敵なものを拾ったけど、隣にその素敵なものを自分よりも必要としてる人がいて渡してしまう、2番の歌詞も、またさらに必要な人がいたから渡してしまう……と続きます。最後、「自分は何も持っていないんじゃないか」と思い振り返ると、そこには幸せそうに笑うたくさんの人がおり、
「今までで一番素敵なものを、僕はとうとう拾うことが出来た」と締めくくられます。

「私も、この歌詞と同じなんです。『みんなに希望を伝えたい』『誰かの役に立ちたい』と思いはたらく中で、実は私が一番救われています。

医師として患者さんに知識が還元できていることも、オストメイトの皆さんから暖かい言葉をもらうことも、すべてが私の励み、生きる意味になっているんです」

エマ・大辻・ピックルスス(えま おおつじ ぴっくるす)のプロフィール – LIMELIGHT / ライムライト
https://www.limelight-net.com/talent/EmmaOtsujiPickles.html

(文:田邉なつほ 写真:テラ ケイコ)