より上手に片付けるためのQ&A
──片付けるときに注意すべき点はありますか?
小さいころ、親に「片付けなさい!」と言われて、散らばったものを見えないところに隠して済ませた経験はありませんか? 片付けは学校で習う機会がないので、隠すことが片付けだと思ったまま大人になってしまうことも。
でも、この方法では物を取り出したり探し物をしたりするたびに部屋が散らかり、また隠して……、の繰り返し。これでは時間がもったいないですよね。大切なのは一つ一つのものに向き合い、使用頻度を考え、定位置をはっきりと決めることです。
──「出す・分ける・決める・戻す」は、デスク以外にも使えますか?
もちろん使えます。たとえば、3日連続でキッチン・カウンターの上をゼロにしてみましょう。デスク周りと同様に、キッチン・カウンターの上にあるものをすべて紙袋に入れて、使う頻度の高い場所に定位置を作っていければ、片付いた状態を保てます。
すると、「ちょっと掃除してみようかな」という気持ちになるかもしれません。実際にピカピカにすると、また気持ちが上向いて、次は洗面台、次は寝室……、と、どんどん片付けたい気分に。脳が疲れない、居心地のいい空間が家の中に増えていきます。もちろん、財布やバッグの中も「出す・分ける・決める・戻す」の4ステップでスッキリと片付きますよ。ぜひ試してみてください。
──部屋全体がスッキリと片付いていると、仕事に集中できそうです。ただ、使用頻度の低いものをしまうと、あっという間に収納場所が一杯に……。思い切って捨てるべきでしょうか?
いいえ、必要なものなら無理して捨てることはありません。まずは収納の方法を見直しましょう。
ものをバラバラにしまうのではなく、収納スペースにぴったりのサイズの箱を用意し、その中に詰めていくと余分なスペースを作らず収納できます。我が家では、押し入れにぴったりおさまるサイズの衣装ケースを12個買って、並べて使っています。
また、アウトドアグッズはコンテナに入れてベランダへ。季節ごとの洋服やスーツケースなどは収納サービス「サマリーポケット」に預けています。なので、居住空間だけ見るとミニマリスト風ですが、持ち物としては一般的な量だと思います。
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「片付け」で自己肯定感も上がる
──ところで、米田さんは昔から片付けが得意だったんですか?
いいえ、もとは苦手な方だったかも。地方に生まれて、脚本家の祖父と研究者の父が持っている大量の本に囲まれて育ちました。大学生のときに東京で一人暮らしを始めると、実家の感覚でものを集めていたら部屋に物があふれて、片付けについて真剣に考えるようになりました。
その後、仕事でユーザーが預けている荷物のデータ解析をしたり、ユーザーのご自宅を取材したりといった調査を続けて、もっと良いご提案ができるようになりたいと思うようになって整理収納アドバイザーの資格を取得したんです。
それが今から5年前。学んでみると、想像以上に深みがあって面白い領域なので、どんどんのめりこんで今に至ります。
──どんな点を面白いと感じられましたか?
ずっと片付けって家事の一種だと思っていたんです。でも、実はロジカルシンキングに近いんですよ。データを整理するときとよく似ている。方法がわかれば、どんな人でも身につけられるスキルだと思います。
──部屋の片付けができるようになると、狭いお部屋でも快適に暮らせますよね。
そこも大きなメリットです。片付けが苦手だと、物があふれるので広い家に住みたくなりますよね。都心で広い家に住もうとすると家賃が高いので、なるべく郊外で、設備が悪くてもガマンして住むという選択をしがちです。
一方、片付けのスキルを身につけて、狭い部屋でも快適に暮らせるようになれば、都心で設備のいい家に住むという選択肢も選べるようになります。通勤時間を削減でき、余った時間を新しい趣味に充てられるかも。片付けにはうれしいメリットがたくさん詰まっているんです。
──教えていただいた4ステップは、お部屋だけでなく、財布やバッグなどに応用できる点もステキですよね。
もっと言えば、頭の中のモヤモヤも「出す・分ける・置く・戻す」の4ステップで整理できるんですよ。
まず、悩みや感情を一度全部吐き出して“見える化”します。そして、考える頻度の高いものから順に解決法を考えて、実行していくんです。こうすることでいつまでも悩んだり、混乱したりすることが減りました。
──マインドフルネスにもつながりそうなお話ですね。
実際、片付けが上手になって、自己肯定感も上がったと感じる方がいらっしゃいます。よく言われるように、まさしく“部屋の状態=ココロの状態”。私は「明鏡止水」という言葉がすごく好きで、きれいに整っている空間があればあるほど、「自分はよくやっている」と感じられるんです。
毎日、満足な自分で過ごせれば、幸せな時間も増えるし、チャレンジ精神も湧いてきます。雑多な部屋で、気もそぞろのまま過ごしていては人生そのものが無駄になってしまいかねません。
ぜひ、片付けの基本である4ステップを身につけて、集中力を高め、自分がしたいことに全力で取り組める空間づくりを始めてください!
(文:矢口あやは 写真:鈴木渉)