アイドルじゃない普通の芸人だから『151センチ、48キロ』の写真集に
―芸人でありながらアイドル的な写真集を出すことについて、どう思いましたか?
講談社さんから写真集の企画を提案されて、素直に「おもしろそう!」と思いました。これまでも雑誌取材で綺麗に撮影してもらえるのはうれしかったですが、写真集のタイトル『151センチ、48キロ』のとおり「標準体型のナチュラルな私を見せる写真集なら、自分なりの良さが出せそう」と思えたのも大きかったですね。
芸人としてはネタができれば問題ないので、無理やりかわいい自分をつくり上げるのは変だけど、自然体の自分を見せる分にはいいと思っています。だから撮影直前までビールを飲んでいました(笑)
―撮影前のダイエットはしなかったんですね。
写真集はお金を払っていただくことなので「綺麗にならなくては!」と思い姿勢を良くするためピラティスや整体など行きました。ただ、お話が来た時点で平均的な体重だったので、ここから痩せてアイドルの方と同じ体重になる必要があるのかなと思って。私にはアイドルのような偶像的な美しさを求められていない気がしたので、自分らしく撮ることに決めました。
―写真集の制作でこだわったことは?
写真選びを慎重にやったことです。自分があまり盛れてないなと思った写真は結構な枚数でもお願いして取り下げていただいたり、信頼している人にも写真をチェックしてもらったりしました。
―異例の売れ行きになり、どう思いましたか?
印税が楽しみで、欲しいものをお気に入り登録しています(笑)写真集を買うのはほとんど男性かと思っていたんですが、標準体型に共感してくれた女性も買ってくれて「私と一緒だ!」「痩せなくてもかわいくなれるんだ」といったコメントをもらえてうれしかったです。男性の方も「ナチュラルさがいい」と言ってくれて、このままの私を認めてもらえた気がしました。私の良さをみなさんに教えてもらった素敵な機会になりました。
私も「もっと二重幅があったら目が大きく見えるのに」とか「頬骨が引っ込めば小顔に見えるのに」とか容姿に対するコンプレックスがあったんですが「このままでいいんだ、好きなものを食べてもいいんだ」って思えましたね。
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初の単独ライブが、大ブレイクよりも自信になった
―写真集発売直後に初単独ライブも開催しましたね。やろうと思ったきっかけは?
にゃんこスターって私とスーパー3助さんの破局報道が大きすぎて、そのまま解散したと思っている人もいるんですよ。結成してからの7年間ずっと新ネタをやってきたけど知らない人もいると思うので、ここらへんで単独ライブをやって「今のにゃんこスター」を知ってもらいたいと思ったんです。ライブのチケットが写真集より売れないってニュースになりましたけど、ちゃんと250席売れて安心しました。
―単独ライブを終えて、心境の変化はありましたか。
やってみて「私って自己肯定感が低すぎたのかも」って思ったんですよね。7年前、いきなり縄跳びネタでテレビに出て「こんなの芸人じゃない」って叩かれたので、当時は街ですれ違う人を「この人もツイッターで私の悪口を言っているんじゃないか」って疑っちゃって、人の目が見ることができないくらい心がどんよりしていたんですよ。単独ライブをやると決めてからも「7年前に売れた芸人の単独ライブを見たいと思う人はいるのかな?今のにゃんこスターを応援しているなんてカッコ悪いって思われるんじゃないかな?」と不安でした。
でも、単独ライブで舞台に出たら信じられないくらいワッと歓声が上がって、2時間ずっと会場全体が盛り上がっていて、にゃんこスターってこんなに愛されていたんだなって思って。ワイヤーアクションで6メートルの高さから会場を見渡した時に、お客さんが少ないライブでも気にせず来てくれたファンの方、テレビから知ってファンになってくれた方、ツーマンライブから知ってくれたファンの方、これまでの7年間で少しずつ積み上げてきたお客さんが今ここにいて、にゃんこスターを応援してくれているんだと実感しました。30歳にして自己肯定感が上がった気がします。
―前向きな気持ちになったんですね。
一方で「やっぱり自己肯定感が低いんだな」と改めて再確認した部分もあるんですよ。単独ライブが成功しても「もっとこうしたらよかったな」という負の感情が大きかったことにビックリしました。
昔は、今より自分に自信がなかったので決断力も弱かったと思います。それでも7年前に世に出させていただいてから、エッセイで自分の言葉を綴ったり、出来ない仕事はちゃんと断るという向き合い方をしたり、単独ライブをやるって決めて実行したり、1つ1つ積み重ねてきました。そして、分かりやすくて大きな成果よりも「自分の意志でやったこと」の小さな累計の方が自信になると気付きました。まだ何も成していない私が言うのも憚られるのですが、大きくて無謀に見えることでも、出来るサイズに小さく分解してやってみて自信をつけることが大事なのかもしれません。
―今後はどんな活動をしたいですか?
縄跳びのネタに感謝しつつも、新しいネタもたくさん届けたいです。理想は東京03さんみたいに全国の大きなキャパの会館でただただ楽しいネタの興行をして食べていけたら最高です。でも80歳になって縄跳びを飛んでいるのもおもしろいと思うので、縄跳びのネタも大切にしつつ、新しいネタと共に未来に進んでいきたいです。
(文:秋カヲリ、写真:永田太郎)