ライター歴20年目で、無理だと思っていた「作家」を目指した理由。佐藤友美が語る。

大切なのは「自分時間」を増やすこと

さとゆみさんは現在シングルマザーで、中学生の息子とともに暮らしています。ライティング講座での定番の質問の一つが、仕事とプライベートの両立について。しかし、さとゆみさんはこの質問に違和感を覚えると話します。

「そもそも、仕事とプライベートは明確に分けられるものではないと思います。私にとっては、どちらもただの生活でしかないんです。仕事とプライベートの経験すべてが、血となり肉となると思うんです」

仕事とプライベートについて考える際に大切にしているマインドセットがあるといいます。それは、自分の時間をいかに増やすかということ。

仕事の時間が長いことやプライベートの時間が足りないことは、本質的な問題ではない。重要なのは、その時間が自分の時間であるか、それとも人の時間であるかだといいます。

「私は人の時間を過ごすのが嫌なので、なるべく自分の時間を増やすことを意識しています。たとえば、息子の保護者会の活動を正直面倒だと感じていたことがありました。保護者会が退屈なのは、それが人の時間だと感じるから。だったら自分の時間にしてしまおうと、PTA副会長になりました」

さとゆみさんは息子が小学3年生のとき、PTA副会長を自ら引き受け、1年間活動しました。役員決めや先生と保護者間の連絡などの業務に奔走。PTA内でのやり取りのメールは、多いときは日に50件ほど。仕事が終わり次第、大量のメールに目を通す日々を送りました。

「大変だったけど、やって良かった」とさとゆみさん。保護者会の活動をどうすれば自分ごととして捉えられるか。検討した結果、出た結論がPTAの内部に入る選択でした。外部の参加者として仕事を割り振られる立場から、内部に入り自らPTAを運営する立場になることで、学校に関する活動が「自分時間」へと変わったのです。

さとゆみさんは自身の連載「ママはキミと一緒にオトナになる」にて、PTA活動でのできごとについて2本のエッセイを書きました。結果的にではありますが、プライベートの経験が仕事にもつながったのです。


佐藤友美さんの著書『ママはキミと一緒にオトナになる』

ライター24年目の今年、さらに「自分時間」を増やすべく、さとゆみさんは新しいはたらき方に挑戦します。仕事の大半を1〜3月で終わらせて、4〜12月は仕事量を抑えながらインプットや新しいチャレンジに時間を充てるといいます。

12月までにはマラソンに挑戦したい。さらに、小説も執筆したいそうです。

「走ることは初めてのチャレンジです。今はまだ3分しか走れないので(笑)。小説は昔から書きたいと思っていたのですが、引き受けている仕事をしながらだとなかなか執筆時間が取れなくて。それで、今年は3月までに大きな仕事を終わらせて、スケジュールを空けました。12月までの期間は新しい経験に時間を費やしていきたい」

目の前の仕事をただこなすのではなく、新たな機会に飛び込んでいく。さとゆみさんは仕事でも、プライベートでも、挑戦を続けます。

(文:岡村幸治、写真提供:佐藤友美)