原作マンガのイメージを大切にしたキャスティングおよび、俳優陣の演技が高い評価を得ている実写映画「キングダム」シリーズにおいて、4作中1作しか登場していないものの、強い印象を残したキャラクターそれぞれの魅力と、俳優陣それぞれの真摯なアプローチを振り返りましょう。



映画『キングダム2 遥かなる大地へ』渋川清彦演じる縛虎申のポスタービジュアル (C)原泰久/集英社 (C)2022 映画「キングダム」製作委員会

【画像】え…っ? 「長澤まさみの楊端和が完璧」「実写のホウ煖こわッ」 こちらが再現度高すぎた『キングダム』キャラ達です

それぞれの独自のアプローチにも注目

 3作連続で興行収入50億円を超えた実写映画「キングダム」シリーズ(原作:原泰久)の4作目であり、最終章と銘打たれた『キングダム 大将軍の帰還』が2024年7月12日から上映中です。

 同シリーズは「信」役の山崎賢人さん、「エイ政」役の吉沢亮さん、「王騎」役の大沢たかおさんなど、シリーズを通して登場する、俳優陣の存在感と演技も絶賛されています。

 そして、この記事では「4作中1作しか登場していないキャラクターを演じた俳優たち」も推したいのです。たとえば、1作目で反乱を起こす王弟「成キョウ」を演じた本郷奏多さんは、『GANTZ』や『シン・仮面ライダー』でも見事だった「クズ」キャラの演技が完璧で、玉座に座る角度まで再現した演技が絶賛されました。

 そのほか、いかにもマンガ的なキャラ「ムタ(演:橋本じゅん)」「ランカイ(演:阿見201)」まで再現された実写『キングダム』のなかでも、特に強い印象を残した3人を振り返ります。俳優たちそれぞれが原作のキャラクター性を理解しつつ、撮影時に独自のアプローチをしていることも話題になりました。

左慈役の坂口拓さん

 1作目『キングダム』のラスボスポジションで、元将軍の「左慈(さじ)」役の坂口拓さんは、「太刀筋が見えない」ほどの素早い剣さばきと、サイコパスそのものな悪役の演技が絶賛されました。劇場パンフレットでは、実は最初に撮られていたアクションシーンであり、不安を抱えていた主演の山崎さんへ、坂口さんが「手を決めずに、本気で斬りかかっていい」と声をかけていたことが書かれています。

 本物の格闘家であり戦闘術をマスターしている坂口さんは、「本気で斬りかかる」演出がされても「剣をよける」ことができるため、劇中の信の覚醒とシンクロするように、山崎さんのアクションも開眼させていたのだそうです。

 また、坂口さんは自身のYouTubeチャンネル「狂武蔵たくちゃんねる」の、「ラスボス「左慈」を演じた坂口拓が “キングダムの裏側” を全部話します!!」という動画内で、劇中の左慈のアクションを解説していました。なぜ太刀筋が見えないほどに速く剣を振れるのか、その理由の一端が語られており、この動画を観てから本編を観直すとさらなる感動があります。

縛虎申役の渋川清彦さん

 2作目『キングダム2 遥かなる大地へ』に登場する、他者にも自身にも厳しく、自分も敵陣に突っ込んでいく向こうみずな面もある千人将「縛虎申(ばくこしん)」には、ワイルドな役も多く演じてきた渋川清彦さんがキャスティングされています。発表時から実に納得できるキャスティングだと思っていたものの、本編でのハマりっぷりは想像以上でした。

 信に「勇猛と無謀は違う」と諭す様に説得力があり、危うい面も含めて魅力的に思えてくるのは、「それだけではない」奥行きのある渋川さんの佇まいや、チャーミングさのおかげかもしれません。

『運命の炎』が放送された際の「金曜ロードショー」の公式X(旧Twitter)では、渋川さんは出演シーンのほとんどが馬の上だったため、渋川さんは馬に乗るのはゼロからのスタートでも、必死でトレーニングをしていたことが語られています。

 ほかにも、渋川さんは走るシーンで暑く鎧をつけて演じるのはとても大変だったものの、その大変さが縛虎申の必死さにつながり、逆にそれが良かったのかもしれない、とも感じていたそうです。俳優としての挑戦が、そのまま役の説得力につながっているといえるでしょう。

紫夏役の杏さん

 3作目『キングダム 運命の炎』に登場し、戦争孤児であり、育ての父から教えられた教えを守り、子供時代のエイ政を守り抜いた趙国の闇商人「紫夏(しか)」を見事に体現した杏さんは、もともと原作マンガの大ファンだったそうです。時事ドットコムのインタビューでは、撮影現場では紫夏が登場するマンガ本を持ち込み何度も見返したと語っています。

 紫夏を「癖のある登場人物ばかりの中で、真っ直ぐで輝く月みたいな存在」だと語る杏さんは、「メイクさんと相談しながら、リアリティーとマンガのギリギリの段階を保てるようにした」ことも語っており、原作のイメージを大切にしつつ、可能なアプローチとのバランスを入念に探っていたこともうかがええます。杏さん自身が3人の子供を育てる母親であることも、劇中で若き日のエイ政を危険を顧みず守ろうとする「意思」と、シンクロしていたともいえるかもしれません。

 この他にも、 シリーズ中3作に登場した「楊端和」役の長澤まさみさん、「羌カイ」役の清野菜名さん、「澤圭」役の濱津隆之さん、「尾平」役の岡山天音さん、「渕」役の田中美央さんなども、原作のイメージにぴったりなキャスティングかつ演技だったと称賛されています。こちらは、ぜひ『キングダム 大将軍の帰還』で、それぞれの最後の活躍を見届けたいところです。

※山崎賢人さんの「崎」は正式には「たつさき」
※常用漢字外のキャラクター名の表記はカタカナにしています