近年、過去の人気作がリメイクされる事例が増えています。2022年からリメイクされた『うる星やつら』を始めとして、今後も『魔法騎士レイアース』『らんま1/2』『剣勇伝説YAIBA』など多くの作品が控えています。なぜ、約30年前の作品リメイクが相次いでいるのでしょうか?



『魔法騎士レイアース』新アニメ化決定ビジュアル (C)CLAMP・ST/講談社・TMS

【画像】え…美しすぎる! こちらが『レイアース』原作の美麗イラストです(5枚)

約30年前のアニメのリメイクが増えている

『魔法騎士レイアース』や『らんま1/2』のリメイクが発表されたとき、X(旧:Twitter)は大いに沸き立ちました。ともに根強いファンを多く持つ作品であり、放送当時は多くの男女が夢中になっていたものです。また、同じく再アニメ化が発表された『剣勇伝説YAIBA』は、あの『名探偵コナン』をヒットさせた青山剛昌先生の作品(原作名:YAIBA)です。1993年から放送された旧作では、主人公の鉄刃(くろがね やいば)の声優を「江戸川コナン」と同じ高山みなみさんが担当しています。

 高山さんは『レイアース』では魔法騎士たちに襲い掛かる第2の刺客「アスコット」役として、『らんま1/2』では「天道なびき」として出演しており、思わぬところで作品同士をつなげるキーとなっているようです。リメイク版でも、高山さんの活躍を見たいと考えている方は多いことでしょう。

 それにしても、なぜ約30年前のアニメのリメイクが続いているのでしょうか。

 第一の理由としては、かつてファンだった人たちを視聴者として取り込めるためです。特に当時アニメを観ていた方は、いま30代から50代くらいの年齢で、人口ボリュームがいまの若い世代と比べると非常に多くなっています。購買力も高く、グッズやイベントチケットの売り上げも新規オリジナル作品と比較すると、安定感が出る傾向もあるためです。

 第二に、企画が通りやすい面があるためです。いま社会の最前線で決定権を持つ人にとっても、小さい頃に見た作品は親しみがあります。自分で企画して進めていこうという人もいれば、持ち込まれた企画を見て「ああこの作品か、小さい頃に見ていたよ! これやろうか!」と乗り気になる人もいるでしょう。ノスタルジーを感じながら大きな利益を生むことは、社会的な成功を狙いつつ、自分の心も満足させる理想的な行動ともいえるのです。



青山剛昌先生によるシナリオ完全監修で完全アニメ化が発表された『YAIBA』 (C)青山剛昌/小学館

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多くの人が反応する単語はバズリを狙いやすい

 第三の理由としては、多くの人が知る共通の単語は、SNSでのバズリを狙いやすいためです。『レイアース』のリメイクが発表された直後、なぜか同時代のヒット作である『スレイヤーズ』がトレンド入りし、挿絵やコミカライズを手掛けたあらいずみるい先生が反応する一幕もありました。

 仮に『レイアース』の放送が始まったとしたら、皆でいっせいに「獅堂光」たちのセリフを書き込む姿が目に見えるようです。ラストが東京タワーかどうかはまだ分かりませんが、異世界「セフィーロ」を救う戦いを一度終えた直後、3人で抱き合って叫んだセリフは確実にタイムラインを埋め尽くす、そんな予感もしています。

 もちろん、これまで名前を挙げた作品以外にも、多くの懐かしいタイトルが今後もリメイクされていくでしょう。「最近リメイクアニメが多すぎないか?」と思う方もいるかもしれませんが、いまは作られているアニメの数があまりにも多いため、知名度のあるリメイク作品が目立ちやすいだけで、割合的にそれほど多いわけではありません。

 ただしリメイクといってもそんな簡単な話ではありません。30年前と今とでは社会そのものも常識もかなり変化しています。特にセクハラ描写に関しては『らんま1/2』の「八宝菜」は当時でも厳しいと感じられるレベルでした。いまそのまま出せるわけがありません。

 さらに、アニメの技術そのものが飛躍的にレベルアップしたこともあり、当時を遥かに超えたクオリティの作品が求められるでしょう。『レイアース』の伝説の第3オープニング、田村直美さんの「光と影を抱きしめたまま」は当時のTVアニメ2話分に当たる6000枚のセルを使用しており、当圧倒的なクオリティで視聴者を釘づけにしたものです。

 しかし、目の肥えた旧来のファンに加え、いまのアニメの水準に慣れている若い世代を新たなファンとして取り込むには、過去を越えていかなければなりません。現場の方々への奮闘、そして利益の還元を何よりも望みます。