2002年から2009年まで7年間にわたって放送された日常系アニメ『あたしンち』。最終回の印象が不思議と薄くて、内容を覚えていないという方は多いのではないでしょうか。原作マンガの最終回と合わせて振り返ります。
『あたしンち』第21巻 著:けらえいこ(KADOKAWA/メディアファクトリー)
【画像】えっ、死んでないの? こちらが「死亡説」流れるマンガキャラです(4枚)
何気ない日々を大切に描く日常系作品の傑作
けらえいこ先生による『あたしンち』は、1994年に読売新聞日曜版で連載が始まった日常系コメディマンガです。2002年にはTVアニメ化され、日本国内だけでなく、海外でも高い人気を獲得しました。
『あたしンち』の原作マンガとアニメの最終回を知っていますか?
『あたしンち』の魅力はなんといっても、共感できる日常エピソードと個性あふれるキャラクターたちです。西東京市在住の立花家の長女「みかん」を中心に、弟の「ユズヒコ」や「父」「母」たちが織りなす、優しく温かい作品世界は多くの人を魅了しました。
『あたしンち』では世界を揺るがす大事件や、超自然の出来事はありません。通学中に頭をよぎるちょっとした疑問や、友達との会話のなかで感じたかすかな違和感など、普段だったら見逃してしまいそうな「小さな気付きや感情」を拾い上げてくれます。過度な喜びや悲しみではなく、日常系コメディらしく平凡で平和な毎日のちょっとした変化に価値を見出す喜びが描かれています。
そのような『あたしンち』は、原作マンガが2019年に21巻で完結し、7年にわたって放送されたTVアニメも終了したことで最終回を迎えたと思っている方は多いのではないでしょうか?
しかし実はまだ終わっていないのです。
『あたしンち』は長期連載でよくあるように、メディアの移動がありました。そのため作品の移動を把握していないと、いつの間にか終わってしまったかのように誤解しがちです。
1994年から連載が始まった『あたしンち』は、2012年に読売新聞日曜版での連載が終了し、21巻でひとまず完結しました。このとき、最終エピソードで突然「母」がピンクのエプロンを『スーパーマン』のマントのように羽織って「元気でいればきっとまた会える」「みなさん本当に ありがとう…!」と歌いながら空を飛ぶ、これまでにない展開が話題を呼びました。
この時、ネット上では展開の唐突さと違和感から、作者の母が文字通り「天に昇った」ことで、いつまでも続く平和で幸せな日常が描けなくなったのではないかと、まことしやかに語られました。21巻の表紙では「母」がほほえみながら手を振っているイラストが描かれたこともあり「死亡説」を信じた方も多かったようです。しかしこれはあくまでもうわさに過ぎず、X(旧:Twitter)で公式に否定されています。
多くのファンにとって終わらない日常が終わってしまったショックは、都市伝説を生み出すほどのものであり、数年を経ても自然消滅しないほど根強いものだったようです。
その後、『あたしンち』は掲載誌が「AERA」に変更されて連載が再開されました。2024年時点では『あたしンちSUPER』にタイトルを変更して3巻まで刊行されています。
アニメ『あたしンち』キービジュアル (C)ママレード/シンエイ
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マンガだけでなくアニメも場所を変えて継続中!
アニメ『あたしンち』もまた、放送局や放送地域がたびたび変更されました。『あたしンち』のアニメ1期は2002年から2009年まで7年にわたる長期放送でした。このとき、放送時間が移動したり、全国放送から地方放送に変更されたりしています。
また「いつの間にか終わっていた」「最終回の記憶がない」というファンが多いのは、放送地域の変更に加えて最終回で特別な展開がなかったことも関係していそうです。
ちなみにアニメ1期の最終エピソード「あたしンち、お弁当バトル」では「弁当がおじさんくさい」と言われたみかんが、母にかわいい弁当を作るようお願いしたものの、最終的に出来上がったのは「母のキャラ弁」だった、というものです。『あたしンち』らしい日常の一幕のような最終回だったといえるでしょう。
その後、2015年からは『新あたしンち』のタイトルで約半年間にわたり、アニマックスで放送されました。そして2020年からは活動の拠点をYouTubeに移し「【アニメ】あたしンち公式チャンネル」として、過去に放送されたエピソードが公開されたり、新作アニメ『あたしンちNEXT』が作られたりしています。
同チャンネルは2024年時点で登録者117万人を突破しており、動画本数も500本を超えています。1本あたりの動画の再生回数が20万から30万回を超えるものが多く、100万再生を超える動画も珍しくありません。コメント欄も賑わっており『あたしンち』ファンの愛が感じられます。
このように『あたしンち』は原作マンガ、アニメともに活動中のため、本当の最終エピソードは描かれていません。終わらない日常は今も続いているのです。