試合が終わり、ヒール役のレスラーがリングから退場します。花道に差し掛かると少女から花束を差し出されました。ファンのために「悪役」を演じながらも、心の中では感謝しているようで……。 作者のアカツキさんにお話を聞きました。



少女から花束を贈られた悪役レスラーの対応とは?(アカツキさん提供)

【マンガ本編】女の子に花束をプレゼントされた悪役プロレスラー 乱暴に受け取った裏の顔に「ギャップ萌え!」

外道選手の行動に「素敵」

 ヒールレスラーとして名を馳せる外道選手が試合後、退場する最中に花道で女の子に花束を渡されます。ヒールらしく乱暴に受け取りますが……?

 アカツキさん(@buchosen)が「ヒールと花束」としてX(旧:Twitter)に掲載した『味のプロレス』が話題です。いいね数は7.1万を超えており、読者からは「ヒールとしてのイメージを守りながら心遣いも忘れない、ファンサービスにあふれた素晴らしいレスラーだ」「悪役なのに人気者は才能」「本当のヒールは、心をヒール(回復)させる」などの声があがっています。

 アカツキさんはイラストレーター・漫画家として活動しており、SNSで大人気の80、90年代のプロレスを題材にした、愛しかない4コママンガ『味のプロレス』全4巻(新紀元社)が発売中です。

 作者のアカツキさんにお話を聞きました。

ーー今作『ヒールと花束』を描いた理由や、生まれたきっかけなどを教えて下さい。

 この作品は、お客さんの目撃談を元に描きました。よく人から、『味のプロレス』の「味」って何ですか? と聞かれるのですが、それは「人間味」です。リングの姿とは違う意外な一面を描くことで、見る人にプロレスラーの新たな魅力を知っていただけたらと。

 同時に、こういうエピソードの作品は、プロレスを知らない世間の方にも伝わるので大変うれしいです。「味のプロレスはプロレス知らなくても楽しめる」という声が届くと、描いていて良かったという気持ちになります。『味のプロレス』は、プロレスファンはもちろん、世間にもプロレスの魅力を届けるために描いているので、このエピソードは「届く」と感じ描きました。

ーー今作を描くうえでこだわった点や、お気に入りのシーンはありますか?

 この『ヒールと花束』には、昔のマンガやドラマのシーンでよくあった「真面目な女子生徒が不良のふとした優しさに触れてキュンとする」要素があると感じました。ですので、ギャップ萌えをうまく4コマで表現できるよう心掛けて描きました。



80、90年代のプロレスを題材にした4コママンガ『味のプロレス オールスター編2』著:アカツキ(新紀元社)

ーー今作はヒール(悪役)の意外な一面が描かれています。プロレスにおけるヒール(悪役)の重要性や、アカツキさんが魅力を感じるポイントなどがあれば教えて下さい。

 私が思うプロレスにおいてのヒールというのは、暗闇に浮かぶ月のような存在です。プロレスの歴史を遡っても、古くは力道山にはフレッド・ブラッシー、アントニオ猪木にはタイガージェット・シン、ジャイアント馬場にはアブドーラ・ザ・ブッチャーと、昭和のヒーローには必ず強敵なヒールのライバルがいました。

 ヒールが強ければ強いほど、憎ければ憎いほど、観客はヒーローを応援し一挙手一投足に熱狂する。ヒールという月があるからこそ、ヒーローという太陽が輝くのだと思います。 ヒールなくしてプロレスなし。