戦隊や単体ヒーローが活躍する特撮作品は、日本ならではの文化と思いがちですが、実は中国発の特撮ヒーローも存在します。一部から「パクリなの?」という声があがる一方で、「クオリティが高い」と評価する特撮ファンも少なくありません。



平成ライダーの雰囲気も感じられる「鎧甲勇士」シリーズの玩具、「鎧甲勇士 形刻 黒闇帝皇侠 可動アクションフィギュア」(異次元重工)

【画像】意外とイケるかも? これが中国発『鎧甲勇士』の戦士たちです(4枚)

制作陣には日本人スタッフも?

 日本のマンガやアニメ、特撮作品などのキャラクターは、海外のクリエイターたちに影響を与えることもあります。とはいっても、盗作や模倣、いわゆる「パクリ行為」に対しては、ファンとして許し難い気持ちになるものです。

 お隣の中国では、日本のマスコット的な有名キャラやアニメ、特撮作品などをほぼそのままパクったようなキャラがいるという情報がニュースに取り上げられたこともあります。ただ、なかには日本の特撮文化を踏襲しつつ、オリジナル性を発揮した「中国発の特撮ヒーロー」も存在するのです。

 たとえば2008年放送の『金甲戦士』は、主人公がヒーローの「金甲戦士」に変身して宇宙海賊たちと戦うという特撮番組です。この金甲戦士のデザインは、全身がシルバー、レッド、ゴールドの3色を基調としており、どことなく日本の代表的な特撮作品『ウルトラマン』を想起させます。

 とはいっても、金甲戦士は「ウルトラマン」と違って巨大化しません。等身大のまま悪党と対峙する姿は、どちらかといえば仮面ライダーやスーパー戦隊に近い雰囲気があります。

 意外だったのはネット上における反応です。日本からではなく、中国国内の視聴者から「ウルトラマンのパクリだ」という批判の声が集まることになりました。確かにウルトラマンに似たビジュアルかもしれませんが、前述したようなオリジナル要素に加え、武器も使うため、パクリというよりも、「日本特撮から影響を受けた作品」という見方のほうが適切なように思います。

 2009年放送の『鎧甲勇士』(ARMOR HERO)も「仮面ライダーっぽい」といわれている中国特撮です。

 5人の戦士たちが「鎧甲勇士」というヒーローに変身し、闇の勢力と戦うという物語です。中国では人気の作品のようで、劇場版やシリーズ化にも発展しています。筆者が初めて観た時に感じたのは、5人の鎧甲勇士の外見は「平成ライダーに似たデザイン」という印象でした。

 やはり、特撮ファンの間で「まんま仮面ライダー」などの声があがる一方で、「日本特撮のクオリティを見事に再現できている」「日本特撮に対するリスペクトを感じる」「仮面ライダーをオマージュしている」など、好意的な意見も出ていました。

 確かに中国拳法のような肉弾戦や、激しいワイヤーアクションなど、特撮ヒーローものとして見どころが満載で、この作品独自の魅力を放っています。それもそのはずで、同作には日本人のスーツアクターや、日本特撮の映像制作会社である円谷プロダクションの造形師なども関わっていたようです。



DVD『五龍奇剣士/Metal Kaiser』

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日中合作で進められた幻の特撮作品

 円谷プロダクションが関連した中国特撮の作品といえば、『五龍奇剣士 メタルカイザー』も忘れてはいけません。主人公「袁東(イェントン)」が五龍奇剣士のひとり「青龍剣士」に変身し、地球の脅威となる怪獣や侵略宇宙人と対峙するという作品です。

 同作は円谷の特撮スタッフによって中国で展開予定だった作品で、平成ウルトラマンシリーズを手がけてきた原田昌樹さんをメインの監督として制作が進められました。しかし、原田監督の逝去などの事情によって制作は中止になり、「お蔵入り」という残念な結果となったのでした。

 その後、2014年には、撮影が終わっていた第3話までを収録したDVDが発売され、完結はしていないものの、ファンにお披露目することになりました。実際に視聴した人からは、「特撮作品として普通にクオリティが高い」「中国風の要素を取り入れたアクションがなかなかカッコいい」と、高く評価する声があがっています。

 こうして中国特撮の注目作を振り返ってみると、隣国である中国でも特撮が人気コンテンツのひとつであることがうかがえます。いつの日か、再び日中合作の特撮ヒーローが誕生することはあるのでしょうか。