「ガンダム」シリーズのモビルスーツは、頭部を破壊され撃墜されるものがある一方で、その程度なら戦闘継続は可能であるような描写も見られます。頭部はモビルスーツにとって致命的な急所なのか否か、というお話。



「機動戦士ガンダム クリスタルジグゾーパズル【ラストシューティング】」(プレックス) (C)創通・サンライズ

【画像】は? 浮世絵!? こちらがその「ラストシューティング」浮世絵です

「たかがメインカメラをやられただけだ!」←普通は致命的なのでは?

『機動戦士ガンダム』最終盤、「シャア・アズナブル」が駆る「ジオング」との激闘で、「アムロ・レイ」の「ガンダム」は左腕と頭部を失いました。その頭部を喪失した際、アムロは「たかがメインカメラをやられただけだ!」と叫んでいます。

 普通、メインカメラの喪失は「たかが」では済まない問題なのではないかと思われますが、実際、頭部を破壊されてもアムロとガンダムは戦闘を継続できていました。

 覚醒したニュータイプであるアムロだからこそ言えたセリフなのかと思いきや、『機動戦士ガンダム 第08MS小隊』でも「RX-79[G] 陸戦型ガンダム」が頭部を破壊されながら、ガンカメラに接続し視界を回復、任務を続けています。

 一方で、その「たかが」頭部を潰されただけで戦闘不能=撃破されたモビルスーツの描写も、数多く見てきたはずです。果たしてモビルスーツにとっての頭部は、急所たりうるものなのでしょうか。

 たとえば『機動武闘伝Gガンダム』においては、頭部を破壊されると失格となるように、「ガンダム」シリーズの世界における人型兵器にとって、頭部の損失は大きなダメージとなるのは明らかです。理由は簡単で、目であるメインカメラは主に頭部に装備されているためです。

 しかし『機動戦士ガンダム』第1話「ガンダム 大地に立つ!」で、アムロのガンダムに動力パイプを引きちぎられた「ジーン」の「ザクII」はメインカメラの機能を喪失したものの、上官の「デニム」に「スレンダーの待っているところまでジャンプできるか?」と問われ「補助カメラが使えますから見えます」と答えています。

 最初期のモビルスーツであるザクIIにすら補助カメラが搭載されているのですから、たとえ頭部がやられたとて、戦闘能力は大幅に減衰するものの必ずしも戦闘不能に陥るとは限りません。絶対的な急所ではありませんが、失うと非常に苦しい状況に追い込まれるのが頭部なのでしょう。

 もちろん、頭部撃破で確実に撃墜となる機体も存在しています。代表例は頭部にコクピットがある「MSN-02 ジオング」でしょう。パイロットを失えば、どんな強力なモビルスーツであろうが戦えるわけがありません。



頭部破壊といえば……。「HG 1/144 陸戦型ガンダム地上戦セット」(BANDAI SPIRITS) (C)創通・サンライズ

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頭部に弾薬や特殊な装備を持つ機体

 頭部に弾薬を装備している機体も危険でしょう。特に地球連邦軍の機体は頭部にバルカン砲を搭載している機体が多く、誘爆の危険性があります。数十発の60mm弾が誘爆すれば、機体に大きなダメージが入る可能性も極めて大きいといえるのではないでしょうか。

『機動戦士ガンダム 第08MS小隊』の第9話「最前線」では、「カレン・ジョシュワ」の乗る「RX-79[G] 陸戦型ガンダム」が湖に潜んでいた「アッガイ」の奇襲を受け、頭部を破壊されています。熱をともなわない格闘攻撃だったためか、弾薬が誘爆しなかったのは不幸中の幸いでしょう。

 頭部に重要な装備、特殊な装備を持つモビルスーツといえば、ゲーム『機動戦士ガンダム外伝 THE BLUE DESTINY』シリーズに登場した「イフリート改」と「ブルーディスティニー」シリーズの機体が挙げられます。

「ブルーディスティニー」シリーズはニュータイプを打倒、駆逐するための「EXAM」システムを装備しており、そのコアユニットは頭部に位置しています。そのため、初期型EXAMを搭載したイフリート改はベース機のイフリートよりも頭部がかなり大きくなっているのが特徴です。

 後期型EXAMを搭載したブルーディスティニー1号機は当初、「陸戦型ジム」をベースにしていましたが、性能を引き上げるために「陸戦型ガンダム」へと機体を変更し、頭部はジムのものを移植しています。このような特殊な装備を持つ機体であれば、頭部破損は機体の存在意義に関わる水準のダメージとなるでしょう。

 ここまで挙げてきたさまざまな事例などとは別のところで、もうひとついえるであろう重要なことは、人型兵器にとって、頭部とは機体の象徴といえる部分でもある、という点です。

 マンガ『機動戦士ガンダムUC 星月の欠片』(著:森田崇/構成・設定:関西リョウジ/メカニック作画:石口十/原案:矢立肇、富野由悠季/KADOKAWA)では、頭部をレプリカのガンダムヘッドに付け替えただけの「ジムII」が3機の「ハイザック」と交戦した際に、ハイザック側のパイロットがガンダムの幻想に怯えてしまい、一方的に撃破される姿が描かれました。

 頭部とは、重要な機能を持つ象徴たる部位でありながら、重装甲を施しにくい急所でもあります。「ガンダム」を含めたすべてのロボットアニメで、これからも頭部の使い方は模索されていくでしょう。