パリ五輪が7月26日(日本時間27日)に開会式を迎えるが、現地では不穏な空気が漂っている。大会期間中は世界40か国以上から約8万人におよぶ警官隊や治安部隊、民間警備員が警戒にあたる。その厳戒態勢の理由は「テロ対策」だ。
現地取材記者が言う。
「かなり緊張状態にあります。18日にはパリのシャンゼリゼ通りで警官が外国人の男に刺されるという事件がありました。男はその場で別の警官に腹部を撃たれ、搬送先の病院で死亡。刺された警官はケガで済んだようですが、日本でいえば銀座の歩行者天国で起きたようなものです」
開会式前の男子サッカーで日本は1次リーグ初戦相手の南米強豪パラグアイに5-0と快勝したが、合宿地・ボルドーがあるジロンド県では、五輪テロを計画した疑いで18歳の男が拘束したと仏の日刊タブロイド紙(パリジャン)が報じた。日本サッカー協会(JFA)の山本昌邦ナショナルチームダイレクターが「テロ対策は事前に現地入りしているスタッフが入念に行った」とコメントしているが、警備をするにも限界がある。
同じく男子サッカーのアルゼンチン―モロッコ戦(24日)では後半16分のアディショナルタイムにアルゼンチンが同点ゴールを決めたと思われたが、直後に観客が乱入。アルゼンチンベンチに発煙筒のようなものが投げ込まれる事態となり、試合が2時間も中断した。結局、再開後のVAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)のオフサイド判定により同点ゴールは取り消され、アルゼンチンは敗戦。マスチェラーノ監督は「試合前日の練習場では我々盗難にも遭っている。ある選手は時計、指輪全てのもの失った」という衝撃の告白もしており、まさに踏んだり蹴ったりだ。
「別の競技の選手からは車上荒らしにあったことも公表されている。セーヌ川沿いで行われる開会式には32万人以上の観客が集まるとされ、これは過去の五輪の5倍以上。開会式も含め競技中も、何が起きても不思議ではない状況です」(前出・現地取材記者)
緊張状態の中、パリ五輪がいよいよスタートする。
(小田龍司)