1980年放送の『太陽の使者 鉄人28号』は、『鉄人28号』のTVアニメ第2作です。初の巨大ロボットアニメとして一世を風靡した『鉄人』も、リアルロボ路線の流行で時代遅れに。2作目はどう改変され、どのような最終回だったのでしょうか。



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【画像】見た目も全然違う? 2代目はかなりスマートに… こちらが初代の鉄人28号です(5枚)

戦時中に日本軍が開発したロボットという設定はなかったことに

 1980年、日本テレビ系で金曜18時から放送された、『鉄人28号』のTVアニメ第2作『太陽の使者 鉄人28号』は、1963年から1965年に放送された第1作の設定を大胆にアレンジした作品でした。後半では、舞台が宇宙にまで広がり、戦いがスケールアップします。それは大ヒットした後番組で、同じ横山光輝先生原作の『六神合体ゴッドマーズ』にも大きな影響を与えました。

 1970年代後半から1980年代前半にかけて、リバイバルブームが到来し、『仮面ライダー』『鉄腕アトム』などの過去の人気作が続々とリメイクされており、『太陽の使者 鉄人28号』もそのひとつです。ちなみに元々のタイトルは第1作と同じですが、のちに第1作と区別するために「太陽の使者」とつけ加えられています。

『太陽の使者 鉄人28号』は時代に合わせて、大幅に設定変更がされています。まず、オリジナルにある「鉄人は太平洋戦争中、旧日本軍に開発された」という設定は、時代とそぐわないためにカットされ、さらに鉄人のデザインはオリジナルよりもシャープになっています。また新たに、動力源は太陽エネルギーという設定も加えられました。

 鉄人には太陽エネルギーを増幅する装置が内蔵されています。そのシステムがあれば、世界のエネルギー事情は一変し、世界の利権を独占できるため、悪の組織が鉄人を狙う理由となりました。

 変わっていないのは鉄人の装備です。基本的にビームやミサイルなどの飛び道具は一切持たず、パンチやキックなどの肉弾戦で敵に立ち向かいます。

 また、主人公「金田正太郎」が操るリモコンは、2本のレバーのシンプルなものから「ビジョンコントローラー」、通称「Vコン」と呼ばれる、大きめのノートパソコンほどのサイズになりました。

 正太郎は第1作のような「少年探偵」ではなく、「インターポール」の特別調査員です。拳銃の所持や自動車の運転が許され、「敷島博士」からプレゼントされた陸と空を移動できるホバークラフトの「クリッパー」を愛用しています。

 正太郎は父とともに、「28号」の開発に携わった敷島博士の家で家族同様に暮らしており、敷島博士の長女「牧子」(通称、マッキー)が、正太郎のガールフレンドとして新加入しました。

 第1作が放送された1960年代は冷戦時代で、『007』などのスパイ映画の全盛期です。その影響で、第1作の敵の多くは、国際スパイ組織や秘密結社でした。『太陽』の戦う敵も、当初は世界征服を狙うロボット・マフィアのボス「ブランチ」です。しかし、後半では状況が一変します。

 実はブランチの影には黒幕がいたのです。それは宇宙全体の支配をもくろむ「宇宙魔王」でした。宇宙魔王の出現により、戦いが地球全体から宇宙にまで広がります。鉄人も宇宙で活躍できるようにパワーアップされ、正太郎たちも宇宙戦艦に乗り込んで宇宙魔王と決戦に挑みます。鉄人はロボットだけでなく、宇宙魔王の円盤や怪獣とも戦うようになりました。

 もはや、「鉄人」というより、鉄人をセルフリメイクした『ジャイアントロボ』に近い世界観といえるかもしれません。宇宙魔王も『ジャイアントロボ』に登場した悪の組織「BF団」の、宇宙征服を狙う「ギロチン帝王」に近い絶対的な能力を持った存在です。

 宇宙魔王の息子「魔獣王子グーラ」は正太郎といったん、友達になりながらも、敵と味方に別れてしまいます。地球は宇宙魔王がグーラに与えた星だったのです。しかし、グーラは鉄人に何度も地球征服を阻まれ、魔王のサポートを拒んで鉄人と一騎打ちに向かいます。実はグーラを追い込んだのは、魔王に仕えていたロボット「ロビー」でした。ロビーは故郷の星を魔王に滅ぼされており、秘かに復讐の機会を狙っていたのです。

 息子のグーラが鉄人に敗れ死亡すると、魔王は怒りのあまりにブラックホールを放ち地球に迫りました。正太郎たちを乗せた宇宙戦艦は、ロビーの導きで魔王の胸に飛び込みます。その奥深くには暗黒太陽があり、実体化した魔王が待ち構えていました。鉄人は魔王の剣を胸に受けながらも、全エネルギーを放出すると、ブラックホールとともに魔王は消滅します。ようやく、地球に平和が戻ったのです。

 このように『太陽』は、オリジナルキャラやメインライターである藤川桂介さんのストーリーテーリングによって、第1作とは全く違う展開を見せながらも、鉄人本来の魅力を損なうことなく、クライマックスを迎え幕となりました。



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『太陽の使者』の好評を受けて2作連続で横山光輝原作のロボットアニメを放送

『太陽』の成功を受けて、後番組は同じ横山先生の『マーズ』を原作にした『六神合体ゴッドマーズ』(1981年)が放送されます。企画当初、1979年から始まった『機動戦士ガンダム』の大ヒットによって「ロボットの集団化」の風潮が強く、これを受けたスポンサーである玩具会社の意向により、原作にはない六体のロボットが合体する設定が生まれました。

『太陽』に続いてメインライターを担当した藤川桂介さんの著書『アニメ・特撮ヒーロー誕生のとき ウルトラマン、宇宙戦艦ヤマト、六神合体ゴッドマーズまで』によると、『ゴッドマーズ』製作前の打ち合わせで横山先生から「すべてお任せしますから、自由に書いてください」といわれ、「原作となる『マーズ』という作品は、出版されてから、かなり時間がたっているもので、時代に合わせて変える必要があるでしょうから――」と伝えられたといいます。

 残念ながら著書には『太陽』についてのエピソードは掲載されていません。しかし、『ゴッドマーズ』に関するエピソードを読む限り、横山先生は原作の改変に柔軟で、『太陽』を製作するにあたっても、積極的に時代に合わせた設定変更を望んでいたのではないかと推測できます。

 横山先生の時代の潮流に柔軟な姿勢と、制作側とスポンサーの両方の意向を汲み取った藤川さんによる脚本の妙により、『ゴッドマーズ』は1年3か月にわたって放送され、のちに映画化もされる大ヒット作となりました。これも『太陽の使者 鉄人28号』の成功あってこそではないでしょうか。