ファミコン版『ドラクエ3』には女性専用装備があり、一部優遇されていました。その傾向はスーパーファミコン版でより顕著となり、差はいっそう広がる形に。名作RPGのなかで、どんな格差があったのでしょうか。



女性だけが装備でき、キャラクターのグラフィックも変化する『ドラクエ3』の「あぶないみずぎ」。「アッサラーム」で購入できる。 画像はファミコン版『ドラゴンクエストIII そして伝説へ…』

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男女の違いが攻略にも影響を及ぼす

 国民的RPGとして知られる「ドラゴンクエスト」シリーズのなかでも、ナンバリング3作目にしてロト3部作の完結編ともなった『ドラゴンクエストIII そして伝説へ…』は、ファンの間でも指折りの名作として高く評価されました。

 その人気はいまも衰えることなく、フルリメイクしたHD-2D版『ドラゴンクエストIII そして伝説へ…』が2024年11月14日に発売されます。この作品の登場を待ち望んでいた多くのゲームファンは、発売日の決定にSNSで喜びの声を上げました。

 進化した『ドラクエ3』の登場は、実に喜ばしい限りです。しかし、オリジナルのファミコン版や、初リメイクとなったスーパーファミコン版の『ドラクエ3』には、とある問題を抱えているとの指摘もあり、一部のファンの間で幾度も話題になっています。

 その問題とは、ずばり「女性キャラクターの優遇」です。本作は主人公である勇者も含め、各職業を男女別に選択できます。職業選択の時点では男女ともに平等ですが、ゲームを進めていくと、大きく分けてふたつの優遇問題に直面しました。

女性キャラの「装備優遇問題」

 装備できる武具は、基本的に職業ごとに制限されています。鍛錬を積んでいる戦士は武器・防具ともに装備できる範囲が広く、フィジカル面は不得意な魔法使いは武具の選択肢が少なめです。また、職業専用の装備もありました。

 武具の大半は、職業ごとに装備の可否が分かれます。しかし「女性だけが装備できる」という特別な武具が、ごく一部だけ存在しているのです。原点ではあるファミコン版では「あぶないみずぎ」や「まほうのビキニ」、「ゆうわくのけん」がそれに該当します。

 実用性で考えると「あぶないみずぎ」は趣味に留まるレベルですが、装備キャラの見た目が変わるので無意味なアイテムではありません。しかし、「あぶないみずぎ」の上位版ともいえる「まほうのビキニ」は、見た目も変わるうえに守備力も高いと良いことづくめです。

「まほうのビキニ」の性能は他の鎧と比べても高く、一部の職業(の女性)にとっては最強クラスの防具になります。ただし特別な効果はないので、防御力自体は劣るものの回避率が上がる「みかわしのふく」の方が優秀、と考える人もいます。どちらを選ぶかは人によって分かれるものの、「あぶないみずぎ」が最終的な装備の選択肢に入るほど強力なのは間違いありません。

 そして「ゆうわくのけん」は、装備できる職業に制限があるうえに、直接攻撃するための手段としてはそれほど優れていません。しかし「ゆうわくのけん」を装備できない職業でも、女性であれば誰でも「どうぐ」として使うことができます。

 この「ゆうわくのけん」を「つかう」と、「メダパニ」の呪文と同じ効果が発動します。その場合、敵が混乱して同士討ちを行うので、仲間が被害を受ける割合が減ると同時に、敵をより倒しやすくなります。

 職業と状況次第では、本人が殴るよりも「ゆうわくのけん」を使う方が有効な場面も少なくありません。例えば魔法使いのMPを温存させたい時、「ゆうわくのけん」の使用は選択肢のひとつになります。

 また、経験値を大量にもらえる「メタルスライム」と戦う際にも、「ゆうわくのけん」の効果が活躍します。混乱した「メタルスライム」は逃げにくくなるので、逃走防止策としてまさにうってつけなのです。



「性格」は、リメイク版『ドラクエ3』で加わった新たな要素。勇者の場合、ゲーム開始直後に質問を投げかけられ、その返答によって性格が決定する。画像は、PS4版『ドラゴンクエストIII そして伝説へ…』

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「装備問題」はリメイク版でより顕著に

装備の優遇問題は、リメイク版でさらなる局面に

 HD-2D版『ドラゴンクエストIII そして伝説へ…』は、『ドラクエ3』のリメイク作品になります。しかし、リメイクされる『ドラクエ3』はHD-2D版が初ではありません。初リメイクを飾った『ドラクエ3』は、1996年に発売されたスーパーファミコンソフトです(本記事では便宜的にスーファミ版を「リメイク版」と表記)。

 このリメイク版『ドラクエ3』でも装備の女性優遇は変わらず、むしろ傾向はより顕著になりました。

 リメイク版では、新たに男性専用装備が追加されましたが、それ以上に女性専用装備も種類が増し、全体的な性能も総じて高めに。職業を問わず装備できるものも多く、女性同士なら仲間内で使いまわせるといった利点も生まれました。

 特に役立つ女性専用装備が、「ひかりのドレス」です。防御力が非常に高く、さらに呪文やブレスのダメージを軽減する効果もあり、どの職業でも欲しがるほどの優秀さです。多くの職業で最高の鎧に成り得る「ひかりのドレス」を、女性だけが装備できる──この事実だけでも、「女性キャラが優遇されている」と感じてしまいます。

女性キャラの「性格優遇問題」

 女性キャラの優遇が目立つもうひとつの要素、それは「性格」です。「性格」という要素はスーファミ版で新たに導入されました。いわば、リメイクをきっかけに生まれた新要素です。

 仲間になるキャラクターは全員「性格」を持っており、レベルが上がった際のステータス上昇に影響を及ぼします。例えば「らんぼうもの」なら力が上がりやすく、それ以外のステータスは伸びづらくなります。この「性格」次第でステータスの伸びが変わり、より個性的なキャラクターを育てられるようになりました。

 そして性格にも「男性専用」と「女性専用」があり、両者の間には拭いきれない格差があります。その代表例といえるのが、女性専用の性格のひとつ「セクシーギャル」で、全てのステータスが伸びやすいという破格の性能となっています。

 力や体力といった前衛向けステータスの伸びはそれなりなので、近接攻撃を重視したい戦士には別の性格が選ばれがちですが、汎用性の高さは随一です。あれこれ考えるのが面倒というタイプのプレイヤーなら、女性全員を「セクシーギャル」にすれば大きな失敗はありません。

「性格」は初期設定で決まり、特定のアイテムを使ったり、装備品によって変更させることも可能です。例えば「ガーターベルト」を装備するだけで、性格が「セクシーギャル」になります。「ガーターベルト」は作中で複数手に入るため、なりやすさの点でも「セクシーギャル」はお手頃です。

「セクシーギャル」の男性版ともいえる「むっつりスケベ」という性格があるものの、性能面はかなり異なっています。体力は上がりやすいものの、ほかの上昇率は全て「セクシーギャル」に負けており、ぐうの音も出ません。またネーミングも、「セクシーギャル」に対して「むっつりスケベ」では、イメージの格差が天地ほどあります。

 女性専用と男性専用の使い勝手を総合的に考えると、全体的に女性の性格のほうが優れています。強いてあげれば、運の上昇を重視した場合は「おじょうさま」(女性)よりも「ラッキーマン」(男性)の方がやや有利ですが、その差は微々たるもの。装備だけでなく性格においても、「女性キャラ優遇問題」が横たわっています。

* * *

「装備」の面では、ファミコン版だけでも女性キャラの方が恵まれており、リメイク版も含めると攻略の難易度も変わるほどの影響があります。また「性格」も、「セクシーギャル」や「おとこまさり」といった女性専用の方が優れており、男性専用の性格はどうしても見劣りしてしまいます。

 このように『ドラクエ3』では、女性の方が明らかに有利でした。しかし、優遇されているのはあくまで女性のキャラクターに過ぎません。優遇されている女性キャラは、女性プレイヤーだけでなく、男性プレイヤーもなんら問題なく使うことができます。むしろ女性キャラ多めのパーティ編成は、男性プレイヤーの方が好むかもしれません。

 その点を踏まえてみると、『ドラクエ3』における「女性キャラの優遇」は、「男性プレイヤーの優遇」と受け止めることも可能です。こうなると、男性と女性のどちらが優遇されて、誰が切ない思いを味わったのか。一概に答えが出せない問題といえるでしょう。

 こうした過去作にあった「優遇問題」が、HD-2D版『ドラゴンクエストIII そして伝説へ…』で是正されるのか。それとも、全く新たな提案を見せてくれるのか。最新のリメイク作に、さまざまな角度から関心が集まりそうです。

ファミコン版『ドラゴンクエストIII そして伝説へ…』:
(C) 1988 ARMOR PROJECT/BIRD STUDIO/SPIKE CHUNSOFT/SQUARE ENIX All Rights Reserved.

PS4版『ドラゴンクエストIII そして伝説へ…』:
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