アニメにおいて艦艇の操舵手というと、若干地味なポジションながら、それでもその技量一本でガッツリ人気をかっさらうキャラも見られます。リアルにも、そうしたちょっとおかしい(褒め言葉)「操艦の天才」がいました。
現実にもいた規格外の操艦巧者は「話を聞けば聞くほどおかしい(褒め言葉)」!
現実では、大気圏内外を自由自在に飛び回る艦艇が実用化されていないため、艦を戦闘機のように自由自在に操る操舵手/艦長も実在はしない一方、海面を航行する艦艇には、これを文字通り自由自在に操った艦長/操舵手が実在します。そのひとりが旧日本海軍の森下信衞海軍少将です。
森下海軍少将は第二艦隊参謀長として戦艦「大和」の沖縄特攻に参加し、生還した人物として知られています。その第二艦隊参謀長に任じられる前は、「大和」の第5代艦長を務めていました。
森下少将は操艦の名人として知られる、常人離れしたエピソードに彩られた人物です。たとえば1944年6月には、アメリカ海軍の潜水艦の発射した魚雷を回避するために艦隊の陣形が乱れたのを見て取ると、自ら舵輪(操艦装置)を握って、僚艦「武蔵」との衝突を回避しています。
同年10月に勃発したレイテ沖海戦にも、森下少将は「大和」艦長として参加しています。この海戦ではアメリカ海軍の航空機が投じた魚雷や爆弾が猛威を振るい、旧日本海軍は「武蔵」をはじめ多数の艦艇を失いました。そうしたなか、森下少将は巧みな操艦で命中弾を3発にとどめ、「大和」を生還させています。
現代の基準ではコンプライアンス的にダメなのでしょうが、この時の森下少将は防弾チョッキも着用せず、しかも咥えタバコで指揮を執るという、アニメのキャラクターもかくや、というふるまいを見せたと伝えられています。
前述したように、大気圏内外を自由自在に飛び回る艦艇は実用化されておらず、本当に実用化されるのかも未知数ですが、もし実用化されれば、森下少将のような人物が、「リアルノイマン」「リアルマックス」になる……のかもしれません。