熱戦が続くパリ五輪だが、8月11日の大会終了までもう指折り数える段階。すると、ほぼ折り返しを迎えた4日、国際オリンピック委員会(IOC)役員から、早くも今後の開催地について言及があり、なんと日本の名前が挙げられた。
「IOCのクリストフ・デュビ五輪統括部長が、日本のメディアに対し、『日本が開催を検討するかは分からないが、近い将来、また冬季五輪などの開催地になるだろう』との発言を行ったのです。日本メディア相手のリップサービスの意味も含まれているのでしょうが、この発言の裏には、国を挙げての五輪誘致が時代にそぐわなくなっている現実があることを再認識させるものでもある。立候補する国がゼロになる時代も近いのかもしれません」(スポーツライター)
五輪誘致の「不人気」はだいぶ前から広がっている。ギリシア・アテネで開催された04年夏季五輪では11都市が手を挙げたものが、今回の24年大会では2都市しか立候補しなかった。18年には26年冬季五輪の誘致でカナダのカルガリーで賛成投票が行われ、結果は「反対」。金はかかるが負担や混乱も多く、経済効果も疑問な、まるで“お荷物”扱いだった。
コロナ禍の中での開催に大反対の声があった東京五輪では、組織委員会での汚職という悪い“置き土産”までが付き、結局、札幌が手を挙げていた冬季五輪誘致は実質、断念。IOCは7月24日、30年冬季はフランス・アルプス地方に、34年はアメリカ・ソルトレイクシティーを同時決定した。
「この2カ国同時決定も実は異例のこと。とりわけ冬季大会については、そもそも開催できる国と都市に限りがある中、将来的には地球温暖化で開催可能な国10カ国になるとも言われています。冬季の種目は、五輪開催のみならず、普段の選手の練習環境の変化も懸念されている。そのため2カ国同時決定の裏には、『まずは開催地確保』のIOCの苦しい胸の内が透けて見えます」(同)
地球温暖化では海面上昇で国そのものが水没してしまう懸念もあり、夏季五輪でも将来的な不安を抱える。その意味では、ファンが大挙して押し寄せCO2を大量排出することから、開催自体が環境にとって害悪ともされる。
「今回のパリ大会では、CO2削減のため肉の出ない選手村の食事やエアコン無しの選手村、セーヌ川開催にこだわって結局は延期されたトライアスロンなど、『環境にやさしい』『カーボンニュートラル』を掲げながら、エコとの共生にはどうしたって向いていない五輪の現実がいくつも露呈しています。さらに選手村で盗難事件が続出し、なんだかんだ治安の良さや秩序立った大会運営など、『東京大会は良かった』という声がレガシーという名で関係者の間で語られていると聞きます。そんなことから、今回のIOC幹部の発言には『日本に押しつけたいのでは』との穿った見方が出ても何ら不思議ではありません」(同)
ちょうど日本であれば、無観客で経済効果を取りっぱぐれたリターンマッチの意思も期待できるということかもしれない。だがそのぶん、現在の大阪・関西万博におけるような大ヒンシュクも買うことになるだろう。果たして手を挙げる自治体は出てくるのだろうか。
(猫間滋)