8月12日の閉会式まで残りわずかとなったパリオリンピック。今大会は207の国と地域が参加しているが、史上最多の“メダルラッシュ”に沸く国がある。現在もパレスチナ自治区ガザへの侵攻を続けるイスラエルだ。スポーツライターが語る。

「3日に行われたウインドサーフィン男子決勝で、トム・ルーヴェニー選手が金メダルを獲得したイスラエルは、7日時点で金1つ、銀4つ、銅1つと計6つのメダルを獲得しています。前回の東京大会が最多タイとなる4つ。すでに史上最多を更新しているのです」

 イスラエル国内で、4年に一度のスポーツの祭典がどれほどの関心を集めているのかは不明だが、IOCの対応が全く異なるとして、比較対象に挙げられるのがロシアだ。

 ロシアとベラルーシはウクライナへの軍事侵攻を理由に、国としての参加は認められていない。だが、イスラム組織ハマスと戦争状態にあり、かつ多くの民間人犠牲者を出しているイスラエルはお咎めなし。「なぜロシアがダメでイスラエルがOKなのか」という疑問がわいてくる。

 IOCの矛盾に深く切り込んだのは、8月5日放送の「報道1930」(BS-TBS)。アメリカ、パシフィック大学のジュールズ・ボイコフ教授は、インタビューVTRの中で、「IOCのロシアとイスラエルに対するダブルスタンダードは、本質的に不公平であり、見過ごすことができません」と真っ向批判。さらに、IOCはイスラエルの後ろ盾であるアメリカに配慮していると指摘し、その理由について「IOCの収入の9割はアメリカのNBCをはじめとする放送局と企業スポンサーから出ています」と語った。

 なお、NBCが購入した2021年から32年までの放映権の額は約7800億円。ボイコフ教授は「オリンピックを理解するには金銭面に注目することが重要だ」とのコメントを寄せていた。

「ロシアはドーピング問題、ウクライナ侵攻を理由に、2016年のリオデジャネイロ大会を最後に国としての参加を認められていません。一方、イスラエルは1952年のヘルシンキ大会から参加を続けており、唯一、不参加となったのは1980年のモスクワ大会。ソ連(当時)がアフガニスタンに侵攻したことで、西側諸国が足並みをそろえてボイコットしたためです。今回のガザ地区への軍事侵攻は、世界各国から非難を浴びていますが、堂々と五輪に参加できる裏には、やはりアメリカの存在があったということ。しかも巨額の五輪マネーがイスラエルの参加を後押ししたとあっては、ガザの人々にとってもやりきれないでしょう」(前出・スポーツライター)

 なお、今回、パレスチナはオリンピックに6名の選手を送り込んでいるが、いまだメダル獲得のニュースは伝わってこない。日本人としてはどうしても判官びいきしたくなるが、果たして結果やいかに。

福島シゲル

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