『仮面ライダー』と並ぶ、漫画家・石ノ森章太郎氏の代表作『サイボーグ009』は、2024年で生誕60年を迎えました。1968年に放映されたTVアニメの第1シリーズがYouTubeで無料配信されるなど、再評価が高まっています。終戦記念日が近いこの時期、ぜひチェックしておきたいTVアニメの名作エピソード「太平洋の亡霊」を紹介します。
2024年8月20日に発売されるコミカライズ『サイボーグ009 太平洋の亡霊』(原作:石ノ森章太郎/脚本:辻真先/作画:早瀬マサト/秋田書店)
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平和のために戦う9人のサイボーグ戦士
人気漫画家の石ノ森章太郎氏は、23歳のときにマンガ執筆を一時休み、世界一周旅行に向かいました。そのときの体験をもとに、1964年7月からSFマンガ『サイボーグ009』の連載を始めました。世界各地で起きている紛争の裏で暗躍する武器商人や人種差別などの社会問題を盛り込んだ意欲作で、石ノ森氏の代表作となっています。
サイボーグ戦士たちの生誕60周年にあたる2024年は、9人の小説家たちが競作した『サイボーグ009 トリビュート』(河出文庫)が発売されました。また、1968年にNET(現在のテレビ朝日)系列で放映されたTVアニメシリーズの第1期『サイボーグ009』が、【原作誕生60周年記念】としてYouTube上で期間限定での無料配信が行なわれています。7月19日より毎週金曜日に3話ずつ、全26話が配信される予定です。
第1期『サイボーグ009』のなかでも名作と評判が高いのが、第16話の「太平洋の亡霊」です。8月15日(木)の「終戦記念日」を前に、「太平洋の亡霊」を振り返ります。
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水爆実験で沈んだはずの「長門」が復活
島村ジョーこと「009」は、フランソワーズこと「003」、そしてギルモア博士と一緒に、ハワイを訪ねました。太平洋戦争の始まりとなった真珠湾に一行がたたずんでいると、そこで怪事件が勃発します。空からゼロ戦部隊が舞い降り、海からは人間魚雷と恐れられた「回天」が現れ、真珠湾に停泊していた米軍の船を撃沈していったのです。
夜間戦闘機「月光」や突撃用ロケット機の「桜花」も、米軍に襲い掛かります。日本海軍のシンボルだった戦艦「大和」も復活し、その威容を見せつけます。米軍が反撃しても、まったく歯が立ちません。日本の敗戦から30年、旧日本艦隊が亡霊のように甦ったのです。
さらに、米国本土を震撼させる事態が起きます。水爆実験によってビキニ環礁に沈んだはずの、日本海軍の旗艦「長門」までもが出現しました。高濃度の放射能を帯びた「長門」は、そのまま米国の西海岸へと向かいます。このままでは米国で暮らす一般市民にまで、災害をもたらすことになります。
魔物たちが大騒ぎするクラシックの名曲「禿山の一夜」が、BGMとして怪しく流れます。無人のまま進撃を続ける旧日本艦隊に、さしものサイボーグ戦士たちも手も足も出せないままでした。「長門」の米国到着が刻々と迫ります。
『サイボーグ009 トリビュート』(河出文庫)