冷ややかな目で見られていたことも
——気がついたテニスの良さとは?
ひとつはやはり、男女問わず、どんな年齢の人ともプレーができる点です。そしてネットを挟んで相手と真剣に向き合える、すごくフェアなスポーツだというのも、すごく感じました。
——その後、どのように再びテニスと関わり始めたのですか?
最初はコーチをしていました。22~23歳の頃は、ジュニア選手育成やツアーの帯同もしたんです。でも選手と、主張が強い親御さんの板挟みになるのが苦しかった。もちろん親御さんのお気持ちも理解できるんですけどね。
でもそこで改めて私は楽しくテニスがしたいと気づけたんです。そのタイミングでテニスインフルエンサーとして仕事を始めました。
テニス会場やイベントなどに行き、観客のかたと交流したり、情報発信し始めたのが約5年前。現役選手たちが現在ほどSNSをやっていなかったので、どんどん私のフォロワー数は伸びました。でも周囲にはあまり理解されなくて、冷ややかな目で見られたりもしましたね。
——それは、どういうことですか?
ありがたいことに大会では「写真を撮って下さい」とお声がけいただいたり、メディアに出演する仕事もいただいていたので、悪目立ちしてしまったのかもしれません。
現役の選手たちからの評判があまりよくなかったんです。こちらとしては「選手も含めて大会を盛り上げるために」頑張っていたので、その時期は悲しかったですね。
今ではみんなが「SNSやるのは大事だよね」という雰囲気になってきたので、当時よりは優しくしていただいています(笑)。
自分が目立ちたいのではなく、「テニスを盛り上げたい」という気持ちで活動しているので、今後も結果で示していきたいなと思っています。
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おしゃれなテニスで日韓戦
——そのような活動の中で、どのような思いで“テニス女子サークル”を立ち上げたのでしょう?
先ほど言ったように、誰もできる幅の広さがテニスの魅力だと思うんです。ただ、今はテニススクールに行っても、昼間はご年配のかたが多く、夜は会社帰りのサラリーマン男性が多いのが現実です。若い女の子が、いきなり入って一人で楽しめるかといったら難しい。
あと私ゴルフも大好きなのですが、若い女の子がSNS用にかわいいウェアを着て、綺麗なコースで写真を撮るってゴルフでは普通なんですよね。これがテニスではできない理由はなんだろう? そういう場を作れたらなという思いもあって、テニススクールとは違う「おしゃれでかわいい」新しいサークルを作りたかったんです。
——確かに女性だけの社会人テニスサークルは聞かないですよね。
私たちのサークルはレッスン代などもなく、コート代だけ払えば基本は誰でも参加できる。20~30代の女性限定で「オシャレしてきてね」という声掛けはしていますが、ルールもないので、何度も来てくれている人もいるし、毎回初めての参加者もいます。
みんなでかわいいウェアを着て、女子同士で写真を撮って、新しい子を輪に入れるというのも大切にしています。それをSNSで発信することで、テニスをやったことがない人に興味を持ってもらったり、もっとテニス人口が増えて欲しいなと思ってます。
実際に韓国では今、テニスは若い女性の間で「かわいいスポーツ」として人気があるので、日本でも可能性はあると思うんです。
——韓国と日本では何が違うのでしょう?
韓国でのブームのきっかけはSNS。多くのフォロワーを抱えるインフルエンサーたちが、かわいいウェアを着てコートで撮った写真を発信しています。
去年も主催したのですが、今年も9月にサークルのメンバーを連れて韓国で交流戦をやるんです。日韓戦はどんなスポーツでも盛り上がりますし、「おしゃれなテニス」という文脈の日韓戦をこれからも盛り上げていきたいなと思っています。
——改めて伺いますが、宇野さんが伝えたいテニスの魅力や、多くの人にテニスをやってほしいと思う理由は、なんでしょうか?
私自身、テニスをずっとやってきたので、テニス界に恩返しをしたいという思いがあるんです。テニスって楽しいし、今はおしゃれもできるし、色んな人たちと仲良くなれるし、生涯スポーツなので一生楽しめる。
絶対に人生が豊かになると思ってるんですね。
そのためにも、テニスがもっと開放的で、誰からも愛されるスポーツになってほしい。そうでないと、時代は変わっていくなかで、テニスが取り残されてしまうと思うんです。
特にいま、若い女性からの人気がないので、もっともっと参入のハードルを下げて、テニスをみんなに楽しんでもらえるスポーツにすること…それは私にしかできない活動だと思うので、もっと賛同したり応援してくれる人が増えてほしいなと思ってます。
現在もスポーツブランドに協賛してもらっていますが、もっと大きな会場で活動したり、頻度を増やしたいので、活動資金をサポートしてくれるスポンサーさんを広く募集しております。
取材・文/内田暁
写真/松木宏祐