1947年〜49年に生まれた団塊の世代の全員が75歳以上の後期高齢者になることによって起こる「2025年問題」。高齢化社会に伴う様々な問題が議論されているが、そもそも団塊の世代とはどんな人たちなんだろうか?
彼らが生まれ育った背景を『「シニア」でくくるな! “壁”は年齢ではなくデジタル』より一部抜粋・再構成し解説する。
団塊の世代 75歳~77歳(2024年時点)誕生年1947~1949(昭和22年~昭和24年)
【時代背景・特徴】
戦後生まれのため、「戦争の呪縛から初めて解き放たれた世代」と形容される。戦後、世界的に巻き起こったベビーブームは日本でも同様で、戦争直後は多くの子供が生まれた。人口の固まりになったことから、作家の堺屋太一が付けたのが「団塊の世代」という名称だ。
人口が多いため競争意識が高く、エネルギッシュなのが特徴。団塊の世代の代表格はお笑いタレントや俳優、映画監督など多彩な顔を持つ、北野武(ビートたけし)だ。
同じタレントでいえば、一つ上の世代のタモリは落ち着きがあり上品だが、北野武は熱く、過激であり、2人を比べると、双方の世代の性質や温度感が読み取れる。
また、「封建性と革新性」も団塊の世代を表す言葉だ。北野武が象徴的だが、彼は漫才師からテレビの世界に入って活躍したり、絵を描いてみたり、映画監督をやったりするなど、新しいことを率先して行い、戦後の第一走者として道を切り開いてきた。
筆者はTBSの報道番組『情報7daysニュースキャスター』で北野武と共にコメンテーターとして出演していたが、彼に「自分たちの世代をどう思うか」と聞いたところ、「俺たちの世代は何をやっても最初という感覚を持っている」と、語っていたことを思い出す。
同じように、一般の団塊の世代も、大学生の時に安保闘争に身を投じ、革新勢力として保守陣営と真っ向から対峙した。
だが、それらの大学生の大半は卒業して大企業に就職すると、一転して上下関係が絶対である封建的な企業カルチャーに順応した。同期との競争の中で、出世、さらには社長を目指すようになる。こうして学生の頃と、サラリーマン人生とでは真逆な生き方をして、二面性のあるライフスタイルを経験していることも団塊の世代の特徴だ。
(広告の後にも続きます)
「新発売」や「日本初」「世界初」に弱い
【消費・文化】
米国文化にどっぷりとつかった。ザ・ビートルズを聴き、髪形は長髪がトレンドとなり、1971年(22歳〜24歳)に上陸したマクドナルドのハンバーガーを食べ、コカ・コーラを飲んできた。
米国東部にある名門私立大学の通称「アイビー・リーグ」の学生やOBの間で広まった紳士服のスタイルであるアイビーファッションも積極的に取り入れた。
上の世代であるキネマ世代は、記憶がないものの幼少期に戦争を体験している。一方で、団塊の世代は戦争体験とは完全に無縁であり、文字通り、戦争の呪縛から解放され、米国文化には何の抵抗感もなく、むしろ最先端のカルチャーとして率先して吸収していった。
こうして新しい米国文化を次々と生活に取り込んできたため、今でも、「新発売」や「日本初」「世界初」といった新しいものには敏感に反応する世代といえる。
キネマ世代(78~84歳 ※2024年現在)は映画と共に育ったのに対し、団塊の世代は小さい頃からテレビを見て育ったため、「テレビっ子世代」であることも特筆すべき点だ。
北野武も子供の頃は長嶋茂雄のファンであり、ジャイアンツ戦を見て育ち、子供に人気のあるものを並べた流行語「巨人・大鵬・卵焼き」を地で行くような少年時代を過ごしている。
もう一つ付け加えるとすれば、人口が多い世代ということもあり、初めて子供文化・若者文化の芽をつくっていった世代でもある。
まんが雑誌としていずれも1959年(10歳〜12歳)創刊の『少年マガジン』(講談社)、『少年サンデー』(小学館)が飛ぶように売れ、1978年(29歳〜31歳)にタイトーが開発した「スペースインベーダー(通称インベーダーゲーム)」が流行し、喫茶店に設置されたゲーム台に100円玉を積み上げ、昼休みに楽しむ団塊の世代の姿が目立った。
前者は日本まんがのコンテンツ力、後者は家庭用ゲーム機「Nintendo Switch(ニンテンドースイッチ)」といった人気ハードにつながる、最初の流れをつくったといえるだろう。