韓国チームとよく練習試合をしている育成年代の日本クラブの指導者らは、「最近、韓国のサッカーが変わってきている」と、韓国サッカーが変化しつつあることを感じているようだ。
ちょうど、パリオリンピック予選で、韓国がインドネシアに敗れるという波乱が起きた。韓国サッカーは実際に変化しているのか? 韓国の全国スポーツ紙「スポーツソウル」のスポーツ部1チーム長、キム・ヨンイル(金龍一)記者に聞いた。
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――今回のパリオリンピック予選で、9大会連続の出場記録が途絶えました。韓国の国民の受け止め方はどうでしたか?
金龍一(以下、金)「韓国男子サッカーが、オリンピックに出られなかったのは1984年のロサンゼルスオリンピック以来、40年ぶりです。サッカーは韓国で最も人気のあるスポーツのひとつであるため、国民に非常に大きな衝撃を与えました。しかも、韓国より格下のインドネシアに敗れての予選敗退だったため、さらに大きな失望となりました。
予選前、代表チームの運営を巡って大韓サッカー協会に対して批判的な意見が多く寄せられていた時期でもあったため、オリンピック出場を逃したことが、国民的な怒りにつながった部分もあります。
韓国の場合、オリンピックで銅メダル以上を獲得すると兵役免除の特典が与えられます。2012年ロンドンオリンピックの際、韓国が銅メダルを獲得し、当時中心選手だったク・ジャチョル選手、キ・ソンヨン選手が兵役免除の恩恵を受け、ヨーロッパの主要リーグで非常に長い期間活躍したことがあります。オリンピックを超えてフル代表チームの競争力アップにつながることもあるので、オリンピックでより『挑戦』を重要視するのも事実です。
しかし、今回は兵役の恩恵を受けて海外に進出できる環境を得られなかったので、サッカー界には少し残念な雰囲気が生まれました」
――インドネシア戦での敗戦というのも、大きなショックでしたか?
金「インドネシアの監督は偶然にも、ロシアワールドカップ代表チームを率いたシン・テヨン監督でした。PK戦での敗戦でしたが、韓国が運が悪くてPK戦で負けたのではなく、戦術面で劣勢だったと思います。そのため、よりショックが大きかったと思います。
最初に、大韓協会に対する批判的な世論があったと言いましたが、カタールアジアカップの後、韓国代表チームの監督だったユルゲン・クリスマンが解任されました。その後、新監督を探していたのですが、大韓協会が新監督を選任するのに非常に難航しました。3月の北中米ワールドカップアジア予選で、韓国チームがタイとホーム・アンド・アウェーで2連戦をしましたが、その時、代表チームの監督が空席で、臨時監督を置かなければならない状況でした。
この緊急事態に対応できるのは、過去にオリンピック代表チームを率いていたファン・ソンホン監督ではないかという意見があり、ファン・ソンホン氏が臨時監督に任命されました。オリンピックのチケットが懸かった23歳以下のアジアカップは4月に予定されていました。アジアカップを1か月前に控えた非常に重要な時期です。当時、ファン・ソンホン監督を臨時監督として置いた状態で、タイと2連戦を行ないましたが、結果的に、ファン・ソンホン監督は、代表チーム危機の火消しに成功しました。
しかし当時、オリンピックチームはアジアカップを控えて、コーチ陣が中東に行って親善大会を行ない、準備をしました。結果的に、監督が家を空けることになりました。そういったこともあり、オリンピックチームが内部的に混乱していたことも事実です。
アジアカップでは、グループリーグを3戦全勝で決勝トーナメント準々決勝に進出しましたが、思うような戦い方ができず、不安に感じる要素もありました。結局、決勝トーナメント準々決勝でインドネシアに負ける結果につながり、サッカー協会がオリンピック予選を兼ねたアジアカップを軽く考えていたのではないかという批判を受けました」
――日本の育成年代で、韓国のチームと練習試合を行なうチームの指導者のなかには「最近の韓国チームは怖さがなくなった」と言う人もいます。このことをどう見ますか?
金「ここ10年、日本の指導者だけでなく、タイ、ベトナムなど他のアジア諸国で選手を指導している韓国人指導者からもそのような話をたくさん聞きました。
以前、ユースの選手がベトナムで他国の選手と親善試合をする現場に出張したことがあります。その時は、韓国、日本、ベトナム、タイの4か国の12歳以下の選手と15歳以下の選手が試合をしていました。その時に印象的だったのは、韓国と日本の試合で日本のコーナーキックの場面です。
韓国のディフェンダーがゴール前で足を高く上げて荒っぽい守備をしていたのですが、日本の選手は、そこに積極的に頭を突っ込んでヘディングシュートをする気迫あふれるプレーを見せていました。それだけでなく、とても闘争的に身体を張っている姿もたくさん見ました。実はそれまでは『日本のサッカー』というと、綺麗にボールを蹴り、綺麗にパスを出すというイメージを持っていました。
しかし、この10年の間に、日本のトップ選手だけでなく、ユースの選手たちの闘争心など、以前の世代とは大きく変わったことを私自身も感じていますし、実際に他の指導者からも同じような意見を多く聞いています。
それに対して、韓国は以前と比べて『気迫』が不足していると思います。日本や中東のような国々は以前より、精神的な部分が強くなっています」
――韓国の伝統的な特徴であった強いメンタルがなくなりつつあるのでしょうか?
金「過去、韓国は午前中に1回、午後に1回、そして必要に応じて夜にもトレーニングをしていました。精神力強化のために山に登るなどの強度の高いトレーニングをしていましたが、最近では効率的に時間を配分して運動をしており、選手たちが余暇活動を通じてストレスを解消することも重要なトレーニング過程のひとつだと考える傾向があります。
昔のように高強度のトレーニングをするのは時代遅れだと感じる選手が多くなりました。もちろん、このような環境でも競技力を高めている選手もいますが、一方で、そのためにトレーニングを怠る選手が増えたという話もあります。そのため、全体的に平均的なメンタルのギャップが以前より開くしかない環境だと思いますし、時代の変化に合わせてメンタルを強化するためのシステムが再び確立されなければならない時期だと思います」
――スポーツの世界で、儒教的伝統が弱くなってきたことは、スポーツの強化に影響している部分はありますか?
金「韓国のMZ世代(日本のZ世代)は個性が強く、自己主張が強いです(※韓国のイ・ガンイン、日本の久保建英らがこの世代に当たる)。この世代は、公正性を重視し、水平的なコミュニケーションを好みます。
この世代に対して、監督がただ叱るだけ、怖がらせるだけでは選手はついてきません。ですから、指導者の場合も、誰からも尊敬される人物であるかどうか、専門性があるかどうか、さらに水平的なコミュニケーションができるかどうかが非常に重要になってきました。 賢い指導者は、自分の能力をきちんと表現しながら、同時に選手が自分の役割を果たせるように指導します。だから、その役割の良し悪しを評価しながら、選手にプレッシャーをかけたりもします。
最近では、専門性を備えつつも、水平的にコミュニケーションを取り、選手の役割分担を適切に行ない、それをよく評価する指導者が有能だと評価されています」
――日本もそうですが、スポーツ教育の現場で、暴力、暴言は絶対ダメというふうになっていますか?
金「以前は結果を重視していたため、暴力などなんでも許される雰囲気がありましたが、今は結果も重要ですが、過程も重要視される時代になっています。それは選手の人権ともリンクしています。暴言や暴力を正当化できないのは当然のことであり、過程の価値が重要視されるようになり、暴力や暴言がよりタブー視されているようです」
――暴言まではいかなくても、激しい言葉を使うのも控える雰囲気がありますか?
金「言葉を使う場面は、すべてが客観化できる部分ではないので、それはありますね。例えば、ソン・フンミン選手のケースがそうです。
ソン選手の特徴のひとつが、成長過程で父親から直接サッカーを教わったということです。非常に厳格なスパルタ式の訓練を受けたのですが、ソン選手の父親から厳しく指導された選手はソン選手以外にもいました。しかし、その選手や選手たちの両親は、父親の乱暴な言動に愛情が込められていると思っていたので、批判しませんでした。
ソン選手もそれをそのまま受け入れていました。けれども、最近、ある保護者がソン選手の父親の教育方針に不満を提起して、問題が再浮上し、ソン選手の父親が謝罪の意を伝えることになり、それが話題になりました。
厳しい言動が時代的にタブー視されているのは事実ですが、それが完全になくなったとは言えません。なぜなら、あくまで指導者と選手の信頼関係で行なわれることでもあるからです。優しく接するとうまくいく選手がいる一方で、叱るとうまくいく選手もいます。客観化することはできませんが、選手個人の性格、指導者との信頼関係によって変わる問題だと思います」
――どんなコーチが人気ですか? 優しいコーチが人気ですか?
金「もちろん、暴言をするコーチはダメですが、優しければ人気があるとは限りません。優しさは重要ではありません。今は選手だけでなく、ファンも情報を得る手段が多様化しているので、それぞれの専門性が重視されています。
どれだけ指導力のあるコーチかどうかが重要視されています。結局、どれだけカリスマ性があるか、高いレベルの専門知識を持っていて、選手を導くだけの実力を持っているか、また、選手に明確にモチベーションを与えることができる指導者であるかどうか、そういったコーチが人気を集める時代だと思います」
――少子化のために、アスリートになろうとする人が減っていることもありますか?
金「少子化は国家的な問題であるだけに深刻な問題であり、それによってアスリートになろうとする人の数が減るのは仕方がない状況です。
スポーツ界でも対策を講じるために工夫をしているのですが、どのように考え方が転換しているかというと、人口に対する体育活動人口の割合を増やすべきだという方向にパラダイムが変わってきています。スポーツに対する認識を新たにしなければならないという話がたくさん出ています。
ポジティブなのは、スポーツに対する価値観が以前より高くなったということです。今はかならずしもエリート選手として成功しなくても、スポーツ経験者が、社会的にさまざまな分野に進出できるという認識が広まり、さまざまな層で子どもたちにスポーツをさせることが多くなっていますし、また、趣味としてでも運動をさせようという雰囲気が形成されています。
最近、趣味で小学生の子どもに水泳をさせることが多いのですが、人気がありすぎて授業を受けられない生徒がいるほどです。サッカー教室もそうです。幼い頃からスポーツを身近に感じさせ、ひとつの種目にこだわらず、さまざまな種目のスポーツをさせようとする保護者が増える傾向にあります。日本もそうだと思いますが、最近は韓国もさまざまな種目でスター選手の影響でスポーツをやろうとする子どもたちが増えています」
――今は、古い指導法から新しい指導法に移行している時期だと思いますが、この期間はしばらく続くのでしょうか?
金「指導者のパラダイムシフトは継続しているし、これからも継続すると思います。サッカーだけではなく、すべての種目において、外国人指導者の需要も増えています。
韓国も各種目の有望株が不足して奨励プログラムをたくさん作りましたが、今は状況が変わってきています。主要種目は有望選手発掘システムをしっかり整えているので、有望選手がどんどん出てきている状況です。
今は、世界的な指導者を輩出することが重要だという共通認識が形成されています。例えば、韓国プロサッカーリーグ(Kリーグ)のイ・ジョンヒョ監督(光州FC)は、選手時代はスター選手ではありませんでしたが、今はとても人気のある指導者です。彼が指導しているサッカークラブは予算が少ないにもかかわらず、先進的な戦術を導入するなどの努力で、昨シーズン、光州FCがリーグ3位になり話題になりました。
このように、指導者の力量によって選手もファンも歓喜して動く時代になりました。 以前と違って、指導者も勉強しないと生き残れない時代になりましたが、これは良い変化だと思います」
韓国サッカーは、新たな時代を迎えつつあるようである。
取材・文●石田英恒
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