「サッカー界の絶滅危惧種」4人を引き付けてゴール演出の“エース”久保建英にソシエダ番記者が賛辞!主将の一発レッドには怒り「不可解だ」【現地発】

 刹那主義が横行する今日のサッカーでは、直近の試合におけるパフォーマンスがダイレクトにその選手の評価に繋がる。つまるところ毎試合、毎試合、結果を残さなければならないわけだ。

 ロベルト・オラベSD(スポーツディレクター)はよくレアル・ソシエダでCBを務める大変さを強調する。曰く、フィードで攻撃の起点になり、前に出てインターセプトし、カバーリングに奔走し、ラインコントロールを駆使してラインを統率しなければならない、と。

 さらに昨シーズンの総括を兼ねた記者会見では、前線からプレスをかけ、スペースを作るフリーランを繰り返し、周りと連携してゴールに迫り、ポストプレーをこなし、クロスに飛び込み、高い確率でネットを揺らさなければならないと、CFの大変さについて言及した。

 であれば、タケ・クボ(久保建英)もそのオラベの作る“大変なポジションリスト”に加えなければならないだろう。プレスに奔走し、自陣まで戻って守備をして、中央にポジションを取り組み立てに関与し、味方のマークを外す動きに呼応して相手DFを引きつけスペースを作る。
 
 もちろんドリブルで切り裂き、クロスやパスでチャンスを演出し、高い決定力を発揮することも求められる。これらの条件を1つでもクリアできなければ批判に晒されるのだから、全くもって大変だ。

 スポットライトを浴び続ける選手の宿命だ。にもかかわらず、タケは決して隠れることはない。いや、むしろ自らスポットライトを一身に浴びようとしているかのように、常にボールを要求し、うまく行かなくても、また次のプレーでボールを要求する。シーズン中、このスタンスが変わることはない。サッカー界全体で絶滅危惧種として大切に保護しなければならない宝物だ。

 イマノル・アルグアシル監督ももちろんそのことは分かっている。スタメン落ち&決勝点&セレブレーションと様々な出来事が起こったエスパニョール戦の後、いろいろと言われているが、背番号14の能力を高く評価している。

 だからアラベス戦の前日の記者会見で、事態の収拾を図った。「ベンチスタートだったから怒っていたと、誰かが言ったのかい? ベンチにいた他の選手と同じくらい、必要なレベルの怒りは感じていただろう。ただ、あのセレブレーションは私に向けられたものではない。なんなら彼に直接聞いてみるといい。適切なセレブレーションではなかったことは彼自身が分かっている。ドレッシングルームでは謝罪していたよ」という説明が矛盾したものであっても、だ。
 
 翌日、いつものポジションの右サイドでスタメン起用した。立ち上がりのソシエダは良かった。限られた時間ながら、今シーズン最高の内容と言っても過言ではなかった。テンポの良いスムーズな連携でタケにもボールが渡り、5分にはセルヒオ・ゴメスのクロスに走り込んでシュートを放ったが、うまくヒットできなかった。しかしそんなソシエダとタケに水を差したのが、審判団だった。

 29分、キャプテンのミケル・オジャルサバルが不可解な形で一発レッドで退場処分となったのだ。後ろから出された足を意図せず踏んだだけで、当然激しく抗議したが、判定は覆らず。その後、中央寄りのエリアにポジションを移すなど、タケにとっても影響大のジャッジとなった。

 その直後の32分、ソシエダに電光石火の一撃が生まれる。起点となったのはタケだった。右サイドからカットインして4枚の相手選手を引きつけ、サポートに入ったマルティン・スビメンディを経由してボールはセルヒオ・ゴメスに渡ると、ゴール前に鋭いクロスを供給。タケの引きつけるドリブルで空いたスペースに走り込んだブライス・メンデスがネットを揺らした。
【動画】相手4人を無力化した久保が起点となったソシエダの先制点
 さらに前半ロスタイムには、オフサイド判定となったが、DFの間を縫う極上のスルーパスを通して、シェラルド・ベッカーのシュートを演出した。

 ハーフタイムを挟んだ後半、タケは中盤をダイヤモンド型にした4-4-1のトップ下に入った。ボールに触れる機会が増えて居心地が良さそうだったが、その実、ゴールから離れた位置であるケースがほとんどで、見せ場は作れなかった

 このところ対戦相手の警戒度がますます増しているが、1人退場となって、当然、包囲網は強くなっていた。そんな中でも周囲は常に決定的な仕事を要求する。 エースと言うのはかくも大変なポジションなのだ。

取材・文●ミケル・レカルデ(ノティシアス・デ・ギプスコア)
翻訳●下村正幸

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