FWの軸は上田綺世が最有力。クラブで少ない出番も「コンディションは別に悪くない」。浅野、小川、細谷らの起用法は?【日本代表】

 2026年北中米ワールドカップ優勝という大目標を掲げる日本代表にとって、本大会への切符獲得は絶対条件。だが、2018年ロシア大会、2022年カタール大会のアジア最終予選では、いずれもUAE、オマーンとの初戦を立て続けに落とすという苦しいスタートを強いられている。

「『アジアは普通にやっていればイケる』という油断があったり、欧州組で移籍で悩んでいたり、試合に出られなくてコンディションが上がっていない選手もいたりするので、9月の初戦は難しいんですよね。

 しかも、今回の初戦・中国の監督は、前回のオマーンの(ブランコ・イバンコビッチ)監督。前回もメチャクチャ守備対策されて、攻撃が何もできなかった部分もあった。コンディションも相手は長期合宿をやってすごく整っていた。

 後半もカウンターで危ないシーンがたくさんあって、厄介だった印象が強い。今回も同じような形で日本対策してくるんじゃないかと思います」と、37歳の“生き証人”長友佑都(FC東京)も警戒心を露にしていた。

 実際、イバンコビッチ監督率いる中国は、6月11日の二次予選・韓国戦でも徹底した堅守で相手を大いに苦しめている。今回の日本戦も人数をかけて守ってくる可能性が大。日本としては「引かれた相手をどう崩すのか」というアジアで毎度のように直面する課題を克服しなければ、白星スタートは見えてこないのだ。
 
 そこで注目すべき点の1つが、FWの起用法ではないか。第二次森保ジャパン発足後は上田綺世(フェイエノールト)が軸を担っており、2024年は9試合中5戦に先発。4ゴールを挙げている。2023年のドイツ戦など重要なゲームでも結果を残している彼を、森保一監督は大いに信頼しており、今回もスタメン起用を考えていると目される。

 多彩なシュートと起点を作る動きに長けた万能型FWの上田が最前線にいれば、伊東純也(スタッド・ドゥ・ランス)と三笘薫(ブライトン)の両ウイングからのクロスにも飛び込めるし、久保建英(レアル・ソシエダ)らとのコンビネーションでも崩せる。複数マークがつくと見られるなか、フリーになるのはそう簡単ではないだろうが、駆け引きに秀でる上田なら何らかの突破口を見出してくれるはずだ。

 ただ、気になるのは今季のオランダ1部での出場時間が極端に少ないこと。8月10日の開幕・ヴィレムⅡ戦は後半28分、18日のズウォーレ戦は同38分、25日のスパルタ戦は同33分から出場という状況で、プレー時間はいずれも20分以下にとどまっている。

 直近9月1日に予定されていたアヤックス戦は中止。日本のエースFW候補は「まだシーズンが始まったばかりなので、これからなのかなと。でもコンディションは別に悪くない」と淡々と語っていたが、重圧のかかる大一番だけに、一抹の不安もないとは言い切れないのだ。

「前回の最終予選で全12得点の半分以上に絡んだ伊東純也のような活躍で代表を引っ張ってほしい」と水を向けると、本人は「その通りですね」とキッパリ。「どの試合でもフォワードが決めれば勝てると思う。だからこそ、普段と同じ状態を作ることが大事」と平常心を持って準備していくつもりのようだ。

【画像】初日は6人がピッチに登場!初日のトレーニングを行った日本代表の大迫敬介・谷晃生・長友佑都・中山雄太・望月ヘンリー海輝・細谷真大!
 ファーストチョイスの上田がゴールを奪って弾みをつけてくれれば、チームも楽になるし、余裕を持った試合運びができるようになる。そのシナリオが理想的ではある。だが、そうならないケースも想定すべき。浅野拓磨(マジョルカ)や小川航基(NEC)、細谷真大(柏)の有効な使い方も模索しておくことが肝要だ。

 浅野に関しては、今年に限って言えば、1月のアジアカップ・イラク戦しか最前線で先発していないが、10年にも及ぶ長い代表キャリアの中では数多くの1トップ経験がある。スペースのない状況だとなかなかスピードを活かせないだろうが、時間が経過し、オープンな展開になってくる後半なら、相手により脅威を与えられる。森保監督も1トップ、もしくはクラブの主戦場である右サイドのジョーカーとして位置付けているのではないか。やはり浅野は“いざという時の駒”としてベンチに置いておきたい。

 一方の小川は、4枚のFWの中で最もヘディングと競り合いに長けた選手。直近8月31日のシッタート戦で今季初弾と好調ぶりをアピールしているのも心強い。高さと強さを兼ね備える中国守備陣を攻略しようと思うなら、彼のようなつぶれ役がいた方が糸口も探りやすい。上田とチームの状態次第だが、早い段階での投入を考えてもよさそうだ。
 
 もう1人の細谷はご存じの通り、パリ五輪で大きく伸びた若手。本人も「アジアカップの頃よりはプレーの幅も広がっているし、良いプレーができる自信がある。フォワードの競争は厳しいですけど、爪痕を残せるように頑張りたい」と鼻息が荒い。そういった野心はチームの前向きな起爆剤になりそうだ。

 ただ、彼は万能型FWという意味で上田と重なるところが多いため、浅野や小川のように「流れを変えるための交代要員」には選ばれない可能性も高い。むしろチャンスなのは、9月10日の敵地でのバーレーン戦かもしれない。森保監督が細谷を長い時間、使える状況にするためにも、中国戦は上田中心に勝ち切らないといけないだろう。

「慎重になりすぎず、僕らが相手に対して主体的に出したい戦術を前半から積極的かつアグレッシブに出していくことが大事」と上田は自らに言い聞かせるようにコメントしていた。その言葉通り、相手に威圧感を与えるような入りを見せること。日本の主軸FWにはそれを強く求めたいものである。

取材・文●元川悦子(フリーライター)

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