「長友~」
「ブラボー!」
2024年9月2日、北中米ワールドカップ・アジア最終予選(5日に中国戦、11日=日本時間にバーレーン戦)に向けて全体練習をスタートさせた森保ジャパンの面々を見守る観客からそんな声援が飛ぶ。
この日は練習初日ということもあって、屋外でメニューをこなしたのは大迫敬介(サンフレッチェ広島)、谷晃生(FC町田ゼルビア)、長友佑都(FC東京)、中山雄太(FC町田ゼルビア)、望月ヘンリー海輝(FC町田ゼルビア)、細谷真大(柏レイソル)の6人。彼らが長谷部誠コーチらとランニングしているタイミングで、「長友~」「ブラボー」と子どもたちに声をかけられたのだ。
その光景を見て、凄まじい人気だなと素直に思った。今なお「ブラボー!」と言われるのだから、長友の影響力は半端ないなと改めて驚かされた。
正直、純粋な戦力として代表レベルかと言われると怪しい。今季のFC東京で不動のレギュラーではないし、パフォーマンスそのものも特筆に値するレベルではない。それでも日本代表に選出されるのは彼に特別な力があるからだろう。
そのひとつは、新人を厳しくも優しく包み込む包容力。この日練習場に出てきた長友は真っ先に長谷部コーチとパス交換をしたあと、初招集の望月を呼び寄せて3人でパス回しをした。長友の包容力については以下のコメントからも分かる。
「ヘンリーが僕の圧でちょっとビビっていたので。これは包んでやらないとメンタルをやられてしまうなと思って、長谷部さんとともに。長谷部さんが良い感じで整えてくれるので、三角形でパスをしてヘンリーと心を繋いだという感じです」
ロンドでも大きな声を出して場を盛り上げる長友は、ムードメーカーとして不可欠な選手だ。
もうひとつは、過去4大会もワールドカップ最終予選を戦っている経験だ。これは唯一無二の武器で、過去2大会の同予選でいずれも初戦を落とした原因を改めて究明する意味でも、「2回痛い想いをしている」長友の存在は重要だ。
チームという組織をまとめるうえで、技術的に上手い選手だけを集めても成立しない。時にはいじられ役として盛り上げたり、時には後輩たちを叱咤激励したり、縁の下の力持ち的な役割を果たす選手もいないとチームは上手く回らない。
「長友はコーチとして呼べばいい」との声もあるが、それには賛同できない。コーチと選手との距離感と、選手同士の距離感はまるで違う。選手同士でなければ、日本代表としての想いを書く際の久保建英とのやり取りは生まれなかった(久保が「佑都さん、ブラボーでいいんじゃないですか」と言うと、すかさず長友が「お前、シバくぞ」と切り返して笑いを誘う)。
ひとりでチームの雰囲気をガラリと変えられる選手はそういない。長友に頼ることが森保一監督のマネジメント不全との意見もあるが、果たしてそうだろうか。むしろチームに足りない部分を見極め、長友をチョイスしている指揮官の手腕には好感が持てる。
取材・文●白鳥和洋(サッカーダイジェストTV編集長)
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