「子ども1人育てるのに1500万円かかる」は本当? 元国税専門官が解説する教育費の真実

少子化が進む一つの要因に経済的な不安が挙げられる。子どもを1人育てるのには相応のお金が必要になるが、その正確な数字とは? 誰も教えてくれない「じつはそこにあるお金の話」を元・国税専門官が人生のライフステージごとに徹底解説した『僕らを守るお金の教室』(サンマーク出版)より一部抜粋、再構成してお届けする。

「教育費は子ども1人1500万円」は本当?

お金は、「イメージだけで語らない」がとても重要です。

イメージに惑わされない。

教育費を例に、この姿勢の大切さと効果を実感してみましょう。

「子ども1人の教育費に1500万円かかる」と聞いたことはないでしょうか?

この「教育費1人1500万円」の根拠としてよく用いられるのが、文部科学省が公開する「子供の学習費調査」(令和3年度)。

これによると、幼稚園から高校卒業まですべて公立でも約570万円、すべて私立なら約1840万円の教育費がかかるとされています。大学の平均的な学費については別途文部科学省が情報を公開していますが、同じ令和3年度の情報では国立大約240万円、私立大なら約400万円。

この情報を、「高校までは公立に通い、大学は私立」というケースに当てはめると、たしかに1千万円に近い大きなお金がかかりそうです。

もしも幼稚園から大学まですべて公立でも約810万円、オール私立なら約2240万円が必要になります。

でも、こうした統計の数字だけを見て過剰に不安になる必要はありません。

なぜなら、実際にかかる教育費は統計値と大きくずれることがほとんどだから。

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私立高校と公立高校の差は埋まりつつある

そもそも、子どもの教育費は、公立か私立か以外にも、実家通いか下宿か、どのような学部に入るのか、留学するのか、といった複数の要素の組み合わせで決まります。不確定要素が多く存在し、完全には予測できません。

さらに重要なのが、「国などからサポートを受けられる」ということ。

拙著『僕らを守るお金の教室』でも詳しく解説していますが、教育費をサポートする制度はたくさんあり、近年さらにパワーアップ中。世帯年収などの条件にもよりますが、私立高校に通ったとしても、支援制度を利用すれば公立校との授業料の差はかなり解消できます。また、今後さらに支援制度が手厚くなる可能性も大いにあります。

事実、高いと思われていた私立高校と公立高校の差は埋まりつつあるのです。

とはいえ、まったくお金のことを考えずに生活するのもまた危険です。

これまでの流れも踏まえて、次の3点を意識してみてください。

①まずは大きくライフステージごとのお金防衛術を学ぶ → お金の不安を軽減
②目の前の問題に目を向ける → お金の不安の検証
③目の前の問題を解決するために、お金防衛術を活用する → お金の不足を解決

将来使えそうなお金防衛術の存在を大きく知っておき、そのうえで目の前の問題に意識を向ける。

・「お金の不安」を軽くして、目にかかった雲を振り払う
・きれいな目で現実をとらえて、「お金の不足」に着手、解決する

という手順は、一生涯にわたりお金の問題に健全に対処する基本ステップです。

不安に惑わされずに生きましょう!