F1第17戦アゼルバイジャンGPで、ハースはケビン・マグヌッセンに代わって来季フル参戦デビューを果たすオリバー・ベアマンを起用する。これはマグヌッセンがペナルティポイントの累積により1戦の出場停止処分となったからだ。この処分やマグヌッセンのドライビングスタイルなどに対する見解を、小松礼雄チーム代表に聞いた。
マグヌッセンは今季、多くのレースでペナルティを受け、その度スーパーライセンスにペナルティポイントを加算されてきた。最初はサウジアラビアGPのアレクサンダー・アルボン(ウイリアムズ)との接触で3点、そして中国GPでの角田裕毅(RB)との接触で2点、そしてマイアミGPではスプリントでルイス・ハミルトン(メルセデス)とバトル中のコース外走行で3点、決勝レースでのローガン・サージェント(ウイリアムズ)との接触が2点が加算され、“リーチ”状態に。そして先日のイタリアGPではピエール・ガスリー(アルピーヌ)と接触したことで2点が追加されて累積12点となり、現行システム採用後初めて出場停止となったF1ドライバーとなった。
ただこの一件に関しては、ペナルティポイントが不当な理由で与えられることもあるため、出場停止処分は酷であるとコメントするF1ドライバーも多い。小松代表も同じ見解であるとして、納得のいかない裁定も多かったと語った。
「出場停止というと、ひとつの出来事として捉えられがちですが、全てのインシデントを振り返らないといけませんよね?」
「上海での角田との一件も、私としてはケビンだけに非があったとは思っていません。それにマイアミではアルボンとでしたっけ?(実際にはサージェント)あの接触もペナルティポイントが適切だとは思いません。彼に非があったインシデントもあると思いますけどね」
「でもモンツァに関しても、ペナルティガイドラインに従った結果だと思いますので反論できませんが、そのガイドラインそのものが正しいのかは疑問です。それが私の個人的な見解です」
小松代表が触れたモンツァでの接触に関しては、ガスリーとマグヌッセンがバトルを展開する中で、第2シケインでガスリーのインに飛び込んだマグヌッセンがロックアップしてしまい、ガスリーと軽く接触する形でコース外に押し出してしまった。小松代表は、レーシングインシデントのようなものだとして、これでペナルティポイントを2点加算されるというガイドラインは見直すべきだと主張した。
ペナルティポイントは重大な違反にのみ科されるべきかとの質問に、小松代表はこう答えた。
「その通りです」
「ケビンが接触を引き起こしたことには議論の余地がありません。ケビンがロックアップしてガスリーを外に追い出しました。でもレーシングインシデントのようなものだったと思います」
「接触があった事実は否定できませんが、ガイドラインを見ると、これで2点か3点(加算)ですよね? ガイドライン自体、素晴らしいものとは思えません。我々も見直す必要がある一方で、彼ら(レースディレクション)も見直す必要があると思います」
「『抗議しないのか?』などと言われることもありますが、そもそもタイムペナルティに対しては控訴できません。ガイドラインにそう書かれているなら、そういうことなんです」
また、あと1回のペナルティで出場停止になる状況に追い込まれながら、マグヌッセンがハードにレースをし続けた点について指摘された小松代表は、マグヌッセンのスタンスには問題がなかったとして、彼のアプローチを擁護した。
「正直、モンツァでのケビンのレースには何の問題もなかったと思っています」
「確かに彼はロックアップしましたし、ガスリーと接触して、彼を押し出してしまいました。でもそれがレースですよね? ペナルティポイントやタイムペナルティに関しては、ルールなので仕方ありません。ただレーシングドライバーとして彼のやったことに関しては、何も問題なかったと思っています」
「彼はハードにレースをしたんです。スポーツマンシップに反することをしただとか、ダーティな走りをしたわけではありません。彼は良いレースをしていました。ただ、彼があの時点で10ポイントもらってしまっていたことはただただ残念です」
加えて小松代表は、マイアミでのハミルトンの一件だけが、一線を超えた「やり過ぎ」な場面だったのではという指摘に同意し、それ以外はマグヌッセンが大きな過ちを犯したことはなかったと述べた。
また、サウジアラビアでタイムペナルティを受けた後に角田の前に立ち塞がり、チームメイトのニコ・ヒュルケンベルグをアシストしたことも、問題なかったと改めて語った。
「正直、良くない週末だったのは、複数のペナルティを受けたマイアミだけだと思っています。サウジでの角田との一件も、レースの一環ですよね? 上海の角田との接触も50/50だと思っています」
「ですから、モンツァまでに科された10ポイントが全てケビンの責任だとは思っていません。やり過ぎだったレースもあったと思いますが、シーズンを通して彼が大きな過ちを犯したとは思っていません」
「サウジの一件も、(マグヌッセンは)アルボンとの接触でペナルティを受けることになっていて、ポイント争いから脱落していたことがわかっていたので、ニコのピットストップのギャップを作るよう指示しました。ケビンにとって、それを実行するための唯一の方法があれだったのです」
「そこからの彼は完璧に仕事をこなしました。多くの人々がスポーツマンシップに反するだとか言っていますが、それは普通のことで、どのチームも同じことをしたでしょう。あれは完全にクリーンでした。だから彼は正直不当なレッテルを貼られているだけだと思います」
このように、マグヌッセンは“レッテル貼り”をされてしまっていると語る小松代表。そういったレッテルにより、マグヌッセンがインシデントに絡むたびに「またマグヌッセンが……」と言われてしまいがちだと言えるが、小松代表はそういった外野の雑音は意に介していない。
「私は自分たちの目の前にあるもの、ケビンに求められること、ケビンがしたことを見るだけです」
「彼が間違っていると思えば、話をしますし、彼が正しいと思えばバックアップします。モンツァのようにペナルティに反論することはできませんが、正直彼がそれほど悪いことをしたとは思っていません。ロックアップしてしまった……それだけです」