「長年の思いが叶った、アートな奇書!」奥泉 光×川名 潤『虚史のリズム』

――最後にカバーについて、お話しいただけますか。

川名 カバーは最後までなかなか決まらなかったんですね。本屋さんでこの重い本を手に取って、パラパラッて開いたら、dadadaという文字が並んでいるわけじゃないですか。だったら外側でも遠慮することはない、外側からずっとdadadaっていってるほうがいいかなと思ったんですね。

 だから、カバーには本文と同じ書体でdadadaを前面に出したのですが、帯のコピーが送られてきたのを見ると、「響き続けてきた」のところに傍点がついている。そのとき、なんとなくまだdadadaが足りない気がしていたので、ここにdadadaを入れられると思って、傍点の代わりにdadadadadadadaを入れました。

 何日かかけて装丁を考えていたんですけど、バイオリズムがあって、今日はすごく入れたいと思う日と、ちょっとびびっているみたいな日があったりした。で、最終的には整合性を取ろうとして、あまり入れすぎずに隙間を増やしていくという感じになっていたんです。きっとそのことがどこかで頭に引っかかっていて、足りないというのがあったんでしょうね。

奥泉 帯のdadadaのルビもとても効いているし、分厚い背にはタイトルが大きく置いてあって、重量感がとてもいい感じで出ています。

川名 本屋さんの棚に差してあっても充分に存在感が出る厚さなので、タイトルが大きく入る形にしました。

奥泉 長年の思いが叶った、とてもいい本ができて、大変嬉しいです。

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虚史のリズム

奥泉 光

2024年8月5日発売5,280円(税込)A5判/1104ページISBN: 978-4-08-771839-3

新しい戦前? 否、死者の声は響き続けてきた——
ある殺人事件を機に巻き起こる、国家機密の「K文書」を巡る謎……。
近現代史の魔法使いが仕掛ける、至高のメガ、もといギガ、もといテラ・ノベル!

1947年東京、石目鋭二はかねてより憧れていた探偵になることにした。進駐軍の物資横流しなど雑多な商売をこなしつつ、新宿にバー「Stone Eye」を開き、店を拠点に私立探偵として活動を始める。石目がレイテ島の収容所で知り合った元陸軍少尉の神島健作は、山形の軍人一家・棟巍家の出身。戦地から戻り地元で療養中、神島の長兄・棟巍正孝夫妻が何者かによって殺害される。正孝の長男・孝秋とその妻・倫子は行方知れず、三男の和春も足取りが掴めない。他の容疑者も浮かぶ中、神島の依頼を受けた石目は、初めての「事件」を追い始める。ほどなく、石目のもとに渋谷の愚連隊の頭から新たな依頼が舞い込む。東京裁判の行方をも動かしうる海軍の機密が記されている「K文書」の正体を探ってほしいと言われるが……。

作中に差し挟まれる、dadadadadadaという奇妙なリズムが意味するものとは?
記憶と記録が錯綜する、超規格外ミステリー。