9月なのにいまだ続く「ゲリラ“雷”雨」多発のワケ。専門家が警鐘を鳴らす発生時の“危険行動”は「急いで地上に出る」と「長靴で行動」

近年多発する、局地的で短時間にくる大雨「ゲリラ豪雨」。今年は豪雨だけでなく、夏の雷の発生日数が例年の2倍以上となるなど、豪雨と雷が同時に襲う「ゲリラ”雷”雨」の発生と被害が目立った。秋には台風の発生などによる本格的な大雨シーズンを迎える日本列島。地下鉄や車の運転時に大雨に見舞われた際、どのような避難行動が求められるのか。実はやってしまいがちな危険行動を専門家に聞いた。

100キロのマンホールも吹き飛ばす「エアピストン」現象の危険性

突き刺すような太陽光。外を5分歩いただけでも汗が吹きだす猛暑日が続いた今夏。ぴゅーっと冷たい風が吹いたかと思い、ふと空を見上げると、黒い雲が空一面を覆い、突然大雨が降りだす。そんな光景は夏の風物詩の一つだが、今夏はあまりに多かった。

局地的で短時間に降る強い雨「ゲリラ豪雨」は、予測困難なことから今年も多くの被害が確認された。

例えば、8月21日夜に東京都内を襲ったゲリラ豪雨では東京メトロ・市ヶ谷駅に大量の雨水が流れ込み、改札口やホームは水浸しに。地上と改札階をつなぐ階段からは大雨が滝のように流れ、SNSではSOSの声とともに被害の状況を映した動画や写真が次々とアップされた。

また新宿駅前の路上ではマンホールが吹き飛んで10メートルほどの水柱があがる事故も発生した。

東京都下水道局によると、吹き飛んだマンホールの蓋の重さは約100キロだったという。幸いにもケガ人はいなかったが、豪雨発生時の危険な現象の一つであることは確かだ。

なぜこんなことが起こるのか。発生の仕組みや現象を日本気象協会の気象予報士で防災士でもある平松信昭さんに聞いた。

「豪雨によりマンホールの蓋が吹き飛ぶ背景には、『エアピストン』と呼ばれる現象が働いています。下水道管の中に入っている空気の空間が、大量の雨水が一気に流入することで圧縮され、内側から外側にかけて強い空気圧がかかるんです。さらに路面が冠水していると、空気孔が埋まってしまっているため、空気の抜け道がなく、マンホールの蓋が吹き飛びやすくなります」(平松さん)

路面が冠水している状態でのマンホールは吹き飛びやすいほか、蓋のずれや隆起が起こっている可能性も高い。平松さんは「路面が冠水しているところは見えづらく、足を取られてケガをすることも多いので絶対に近寄らないで避難して」と注意を呼び掛けている。

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地下鉄や車の運転時…「急いで地上に出る」「長靴で行動」はむしろNG

〈ゲリラ豪雨で市ヶ谷駅が沈む〉〈市ヶ谷駅おわた〉〈豪雨がまるで川のよう〉

豪雨発生時、Xでは「市ヶ谷駅」がトレンド入りするほど、地下鉄冠水の様子は衝撃を与えた。地下鉄の乗車時や公共施設の地下街でこのような事態に直面した際、どのような避難行動を取るべきなのだろうか。

「市ヶ谷駅のような浸水が発生した場合は、慌てて地上に出ようとする方が危険です。雨水が流れる階段を使ったりすると水流で足を取られて転落したり、人がたくさん集まった場合は将棋倒しのような転落事故にもなりかねない。公共施設の地下空間は相当広いので、駅員の避難誘導に従い、改札階や地下街の冠水していない場所に留まることが得策です」(平松さん)

また、車の運転時に豪雨に見舞われた際、車の中で待機していた方がいいのか、そのまま走らせたほうがいいのか、迷う方は多いだろう。

「最も大事なことは安全なところに車を止め、豪雨が過ぎ去るのを待つことです。一番危険なのは視界が不明瞭な中、無理に車を運転して、交差する鉄道や道路などの下を通過する地下道『アンダーパス』に侵入したり、道路冠水しているところに車を止め続けること。浸水で車が機能しなくなったり、車ごと流されてしまうケースもあります」(平松さん)

さらに「雨」と言われてイメージするのが「長靴」だろう。
「ゲリラ豪雨が来るかもしれないし、長靴を履いていこう!」というのも実はNG行動だと平松さんは言う。

「長靴の方が安全と思いがちなんですが、中に水が入ってしまうと歩行が困難になったりして行動しづらくなったり、もしもの時に走りづらくなったりすることがあります。いくら傘を差し指しても足元って濡れるので、予備の靴や靴下がある状態で、底が厚めのスニーカーで出歩くことを推奨します」