イスラエルメディアが自国の攻撃に異議を…パレスチナで民衆が殺されるほど、ハマスはより強大になる…イスラエルが即刻戦争をやめるべき理由

2024年8月にBBCが発表したデータによると、ガザ地区での死者数は4万人を超え、その多くが子どもや女性、高齢者だという。23年の12月にイスラエル軍によるジェノサイドに対してイスラエルの自国メディアからも疑問視する声が上がっていたが、日本でそれが報道されることはあまりなかった。

もうすぐ1年が経とうとしている武力衝突だが、ハマスはイスラエルの攻撃を経てさらに強大になることが予想されるという。救いのない現実を『ハマスの実像』より一部抜粋・再構成して解説する。

イスラエルのメディアが自国の攻撃に疑いを示す

2024年3月25日、国連安全保障理事会はイスラエルとハマスに停戦を求める決議を採択した。それまで停戦案に繰り返し拒否権を行使してきた米国は棄権した。その時点でガザの死者は3万2000人を超え、そのうち1万3000人が子供という惨状であり、対応の遅さは国連安保理の無力さをさらけ出した。

その2か月前の1月26日、国際司法裁判所(ICJ、オランダ・ハーグ)は南アフリカがイスラエルをジェノサイド(集団殺害)条約違反で提訴したのを受けて、イスラエルに対してガザのパレスチナ人へのジェノサイドを防ぐ「あらゆる措置」をとるよう命じる仮処分を出した。

最終決定が下されるまでの間、一定の措置を示すことが必要と判断したもので、事態の深刻さを認識したうえでの暫定措置命令である。

イスラエルはガザの住宅地や民間地への攻撃について、「ハマスが民衆を人間の盾にとっている」と繰り返してきた。

しかし、攻撃から1か月を過ぎてガザの死者が1万人を超えたころから、イスラエルの攻撃の異常さに対する批判が世界のメディアで出始めた。2023年11月25日付の「ニューヨークタイムズ」紙は「イスラエル軍の集中攻撃の下で、ガザの民間人の殺害は記録的な増加」というタイトルの記事で「ガザから報告された死傷者数を控えめに読んでも、イスラエル作戦中の死者数の増え方は今世紀に入ってからほとんど前例がない」という軍事専門家の見方を伝えた。

この時点で死者1万4000人、子供と女性の死者が1万人。民間人の死者の多さについて、同紙は超大型爆弾の使用を指摘し、軍事専門家は「イスラエルが密集した都市部に超大型兵器を多用している。高層マンションを破壊できる米国製の2000ポンド(約1トン)爆弾も含まれており、驚くべきこと」と語った。

イスラエルの有力メディアである「ハアレツ」紙は12月9日、ガザ攻撃について「イスラエル軍はガザでの自制を失い、前例のない殺戮がデータで明らかに」という検証記事を掲載し、「今回の攻撃で民間人の死者の割合がこれほど高いのは、戦闘員と非戦闘員を区別する原則が守られなかったからではないか、あるいは(軍事目標を達成するために過度に民間の犠牲が出ること軍民を区別しない無差別攻撃と、軍事的に不均衡な攻撃は戦争犯罪を構成する要素であり、「ハアレツ」紙は自国の攻撃に戦争犯罪の疑いがあることを示したのである。

(広告の後にも続きます)

イスラエル軍が、ハマスの戦闘員とイスラエル人の人質を一緒に銃撃して殺害した

米国、英仏独、日本など「西側主要国」は、ハマスによる民間人殺害をテロとし、イスラエルの「自衛権」を認めるとしてガザ攻撃を支持した。しかし当初、1400人の市民が殺害されたとイスラエルが発表したハマスの攻撃の中身は、時間経過とともに変化した。

イスラエルは攻撃から約1か月後の11月10日に、死者数を1200人と下方修正した。死者の中に200人余りのハマス戦闘員が含まれていたという。

イスラエルメディアによると、12月初めまでイスラエル当局は1133人の死者を確定、死者は兵士274人、警察官57人、地域の治安関係者38人で、残る764人が民間人と認定した。

さらに、イスラエル軍による制圧作戦に巻き込まれ、かなりの数のイスラエル市民がハマス戦闘員とともに殺害されたことが、警察発表やメディア報道で明らかになってきた。

襲撃で生き残ったユダヤ人女性から「駆けつけたイスラエル軍が、ハマスの戦闘員も、イスラエル人の人質も一緒に銃撃して殺害した」という証言がイスラエルのオンラインラジオのインタビューで流れた。

また、米CNNはイスラエル政府から出た「ハマスが多数の乳児を惨殺した」と報じたが、その後、根拠がないと否定した。イスラエルが主張するハマス戦闘員が多数の女性をレイプしたという情報を裏づける証拠も2024年6月末の時点で出ていない。

ハマスが越境攻撃でイスラエルの民間人を殺害したことは疑いようがないとしても、詳細な事実については戦闘終結後の調査に委ねられる。