夏休みが明け、全国各地の学校で修学旅行シーズンに突入しつつある。小中学校の修学旅行先の定番の一つが、東京ディズニーリゾートだが、そもそもなぜ、修学旅行でディズニーに行く慣習ができ、今もずっと続いているのだろうか。
複雑化して“ガチ勢”御用達になるディズニーランド
この時期、SNSを見ると、〈明日修学旅行行ってきまーす!! 2泊3日でTOKYO行きます! ディズニー楽しみ(千葉県)〉〈修学旅行でディズニー行くんですけどハロウィン期間中らしいです、楽しみ〉〈来月修学旅行でディズニー行く~! おすすめの推しのグッズとのおしゃれな写真の撮り方教えてほしい〉〈まじでディズニーも中華街も国会議事堂も全部楽しみ 早く修学旅行行きたい〉など、修学旅行でディズニーランドに行くことを楽しみにしている学生たちの声を多く確認できる。
学校や住んでいる地域にもよるが、小学校か中学校のどちらかの修学旅行でディズニーに行き、素敵な思い出を作った人は多いだろう。
ただ最近のディズニーはシステムの複雑化などが進行し、初心者が楽しみづらくなっているとの指摘もある。はたして今の時代、何も知らない子どもたちが、ふらっと修学旅行でディズニーに行って、楽しむことができるのか。
また、そもそもなぜ、学校側はやたらと修学旅行先にディズニーを選ぶのだろうか。神奈川県在住の30代男性・小学校教員に、その辺の詳しい事情を聞いた。
「確かに昔から今でも変わらず、関東に近い学校 では修学旅行といえば東京。どこの小学校もだいたい1日は上野と浅草と国会議事堂に行き、もう1日はディズニーorキッザニアあたりが定番として選ばれています。ではなぜそもそも東京に行くのかというと、これにはきちんとした理由があります」(30代・小学校教員、以下同)
「学習指導要領の中の宿泊行事の目標として、『平素と異なる生活環境にあって、見聞を広め、自然や文化などに親しむとともに、よりよい人間関係を築くなどの集団生活の在り方や公衆道徳などについての体験を積むことができるようにする』とあって、地方の学校にとっては東京という場所がこれに当てはまるのです。特に、“公衆道徳”という点で、東京(都会)はどの場所でも人が多いことと、電車などの公共交通機関を使って移動できる点などから、選ばれる理由になります」
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そもそもなぜ、修学旅行で東京に行くの?
経済や交通、文化、流行などの中心地である日本の首都・東京が、どんな街なのか実際に行って見ることは、社会科を中心に学習したことを、実体験を伴いながら改めて習得するのに効果的という観点から、選ばれる理由にもなっているという。
ただ、ここまではあくまで修学旅行先に“東京が選ばれる理由”であって、ディズニーを選ぶ理由ではない。なぜ、学校はディズニーを旅行先に選ぶのだろう。
「実は学習指導要領の中には、『楽しい思い出をつくる』という項目もあるのです。これを手っ取り早く満たせるのが、ディズニーというわけです。また、さきほどあげた“公衆道徳”の点でも、多くの人が利用するテーマパークはそれに当てはまるため、教員たちがディズニーを選ぶのです」
しかし最近のディズニーは前述したように、システムの複雑化が進行している。行く前には入念な下調べをしてルートを決め、効率よく回らなければ普通に楽しむことすらままならないとまで言われている。
例えば、人気アトラクションを楽しむためには、有料のディズニー・プレミアアクセス(DPA)、無料のプライオリティパス、スタンバイパス、エントリー受付などを駆使しなければならないが、詳しくない人がこのワードを聞いてもチンプンカンプンだろう。
さらに、初心者が新エリアに入ろうなんて夢のまた夢で、人気のエリアはパークの勝手を知り尽くし、お金も時間も思う存分かけられる“ガチ勢”たちに占領されている状態だ。
今年6月6日には、東京ディズニーシーで、新エリア「ファンタジースプリングス」がオープンしたが、こちらに入園する権利をめぐっては、今なお熾烈な争いが白熱。SNSでは〈あそこは条件満たした人以外は入れない〉〈今のディズニーはマジで情報戦だから事前準備は必須だよ〉〈ディズニーに行ってまでスマホとずっとにらめっこで疲れた〉といった声があがっている。