“若者のディズニー離れ”は幻想だった? 今なお、修学旅行先に選ばれ続ける理由を現役教師が語る「保護者の方から意見が…」

スマホがない小学生でもディズニーランドを楽しめるのか問題

こうした現状を考えると、予備知識ナシの小学生たちがディズニーで気軽に遊べるかは定かでない。特にパーク内では、アトラクションに乗るためのパスをとったり、レストランに向かうための道を調べたりなど、何をするにしても“スマホ必須”なのだが、ほとんどの小学校では修学旅行では“スマホNG”という。

「私の勤務する小学校でも、たとえ修学旅行でもスマホは絶対ダメと指導しています。ですがディズニーでは実は、スマホがなくてもキャストにパークチケットを見せたらファストパス的なものを発券してくれます。

なので、教員たちは事前に子どもたちに、『アトラクションの入り口近くにいるキャストさんにパークチケットを持って声をかければいいよ』と伝えています。ただそれ以上のことは特に伝えず、あとは子どもたちに任せていますね。そもそも、われわれ教員だって、ディズニーにそこまで詳しくありませんから」

道に迷ったとしても、ディズニーではキャストに聞けば親切に道案内をしてくれる。ただ、いちいち人に尋ねるこの方法では、どうしてもスマホを使ってテキパキ行動する取る人よりは出遅れてしまうため、アトラクションに乗る回数は減ってしまう。さらに修学旅行では時間制限もあるため、効率よく回ったとしても、子どもたちは2つのアトラクションに乗るので精一杯なのだとか……。

「ほかにも、子どもたちは各自で、パーク内でご飯を済まさないといけません。混み具合を考えて時間と場所を選ばないと、そこでもかなりの時間を無駄にしてしまいます。慣れている子どもがいるグループは、道沿いにあるホットスナックみたいな軽食を選んで待ち時間を短くし、アトラクションに並んでいる間に食べるといったこともしています。

しかしこれは、何度か行ったことがある子どもにしかわからないこと。家庭環境によっては遊園地すらあまり行ったことない子もいるので、人によってはホントにパークのエンターテインメントに圧倒されている間に時間が過ぎちゃうことがあるのも事実です」

話を聞いていると、やはり修学旅行にディズニーを選ぶことが最善策とは思えない。こういった現状を知っていても尚、教員たちがディズニーを選び続ける理由はなんなのか。

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最近では「キッザニア」も台頭

「ディズニーでは前述したさまざまな苦労があったとしても、旅行を終えた多くの子どもたちが『楽しい思い出ができた!』『最高だった!』と笑顔で感想を言ってくれます。また、そんな子どもたちの話を聞いた保護者が、他の保護者にも話を伝えることで、『うちの子の学年でもディズニーに連れて行ってほしい!』という意見が毎年必ず上がってくるのです。

もちろん、『そこまで楽しめなかった』という子も一定数いるので、そんなことも考えて、誰もが簡単に楽しめて、キャリア教育もできるキッザニアを選ぶ学校も増えています。私たち教員は、修学旅行先を選ぶときには、子どもたちと保護者の意見を加味しつつ、学習指導要領の目標を達成できるような行程を旅行会社と相談しながら決めています。ただ、よほど大きなトラブルが無い限りは、前年度踏襲の内容になることが多いので、ディズニーが選ばれ続けるのです」

先日、“若者のディズニー離れ”がネット上でバズったほか、お金と情報を持った人がパークを制すシステムになりつつあることから、ディズニーを資本主義の権化として“修羅の国”と呼ぶ人まで出てきている。しかし子どもたちにとっては今でも、ディズニーが“夢の国”のひとつであることに違いはないようだ。

取材・文/集英社オンライン編集部