認知症は40〜50代の生活習慣が原因に
早期発見だけでなく、発症の原因を知り病気そのものを予防することも重要だ。
アルツハイマー型認知症は主に65歳以上で発症することが多いが、40〜50代の生活習慣が大きく影響するという。予防するには、高血圧や糖尿病などの生活習慣病の対策が必須である。過度な喫煙や飲酒をしている人は特に注意が必要だ。
脂っこいものや炭水化物を過剰摂取するような偏った食生活を避け、適度な運動を行なうことで肥満を防ぐことも忘れてはいけない。また、慢性的な睡眠不足やストレス蓄積もリスクを高める。定期的に血圧や血糖値のチェックを行ないつつ、生活改善に努めることが推奨される。
「認知症予防の基本は、運動習慣、社会活動、余暇活動を充実させることです。運動習慣は、アミロイドβを分解する酵素の活性を高めるため、アミロイドβが蓄積しにくくなると言われています。さらに、コミュニケーションを取ることや脳に刺激を与えることが、脳内の保護物質を増やすのに役立ちます」
高齢で退職すると自由時間が増える反面、日常の刺激が減少する。家に一人で引きこもると、認知症発症のリスクが高まってしまう。そこで、趣味を通じて社会交流を積極的に行なうことが重要だ。
例えば、囲碁好きなら碁会所へ、麻雀なら雀荘へ、また社交ダンスやお花教室に通うのもよい。友人との談笑や散歩、カラオケも予防に効果的だ。身体機能が低下している場合は、デイサービスで体操などの運動やおしゃべりを楽しむのも一案だ。
両親が自発的に外出しない場合は、買い物や小さなイベントに誘い出すのもよいだろう。
今後もしばらくは認知症対策は、早期発見・早期治療、そして予防が最も重要だと言えそうだ。だが羽生氏によると、今後は更なる医療の進歩と規制の緩和が予想されているという。
「アルツハイマー病では、アミロイドβとともに『タウ』というタンパク質が蓄積して脳に問題を引き起こします。タウに対する抗体薬も近い将来登場する見通しがたっています。アミロイドβだけでなく、タウも抑制できれば、アルツハイマー病の予防効果は大きく向上するはずです。また、現在の治療対象は軽度認知障害に限られますが、数年後には、認知機能検査で異常が見られなくても、脳内にアミロイドβが蓄積していれば保険適用の上の治療が可能になると予想されています」
早期治療を実現できれば、認知症の進行をさらに遅らせることが期待できる。健康的な生活を心掛けつつ、認知症が完治する新薬の登場を待ち望みたい。
写真/shutterstock
取材・文/福永太郎
取材協力/羽生春夫(総合東京病院認知症疾患研究センター)