CLの“プレミアvsセリエ”、イタリア勢も互角に戦えることを示した「インテル、アタランタにとって内容と結果は大きな自信になるはずだ」【現地発コラム】

 9月17日、欧州最高峰のフットボールコンペティションであるUEFAチャンピオンズリーグ(CL)が、これまでにないフォーマットとなって開幕した。最大の変更点は、長年親しまれてきた4チーム×8グループの「グループステージ」が廃止され、新たに「リーグフェーズ」が導入されたこと。これは、参加全36チームがそれぞれ異なる相手と8試合を戦い、その総勝点で1~36位までの順位を決める仕組みだ。

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 シーズン後半の3月以降は従来通り、ベスト16によるホーム&アウェーの「ノックアウトフェーズ」(決勝トーナメント)が行なわれるが、そこに進出する16チームを決めるシーズン前半の仕組みが全面的に刷新されたわけだ。

 新フォーマットでは、リーグフェーズの1~8位が直接ベスト16に進出。残る8枠は9~24位の16チームによるホーム&アウェーのプレーオフ(2月に開催)を勝ち上がったチームに与えられる。

 9月17日から19日にかけて行なわれた第1節では、バイエルン・ミュンヘン、バイヤー・レバークーゼン、リバプール、ボルシア・ドルトムント、ユベントス、レアル・マドリー、パリ・サンジェルマンなどが勝利を収めた一方で、マンチェスター・シティとインテル・ミラノ、アタランタとアーセナルがそれぞれ引き分け、バルセロナ、ACミランが敗れるなど、早くも明暗が分かれる結果となっている。

 新フォーマットの最大の魅力は、シティ対インテル、リバプール対ミランといったメガクラブ同士の直接対決が、シーズン前半の段階から数多く見られる点だ。組み合わせ抽選は、36チームをUEFAクラブランキングに従ってポット1からポット4までの4グループに分け、各チームが1ポットあたり2チームとバランスよく対戦する仕組みになっている。そのため、優勝を狙うポット1、ポット2の強豪がぶつかるビッグマッチが、従来と比べて大きく増加した。

 第1節で注目されたのは、ミラン対リバプール、シティ対インテル、アタランタ対アーセナルと、イングランドとイタリアの強豪同士の対決が3日連続で組まれていたこと。リーグとしての「格」からいえば、プレミアリーグがセリエAを上回っているのは明らかだが、イタリア勢も一昨年のCL決勝でシティを苦しめたセリエA王者インテルを筆頭に、昨シーズンのUEFAヨーロッパリーグ(EL)を制したアタランタ、そして伝統のユベントス、ミランも復活基調にある。
  はたして蓋を開けてみれば、ミランはリバプールに1ー3と完敗を喫したものの、インテルはシティと、アタランタはアーセナルと互角かそれ以上に渡り合い、ともに0ー0の引き分けをもぎ取った。いずれの試合も質の高い攻防が展開された充実した内容だった。

 17日のミラン対リバプールは、ともに新監督を迎えて再構築のプロセス上にあるチーム同士の対戦だった。ユルゲン・クロップの後任にフェイエノールトからオランダ人監督アルネ・スロットを迎えたリバプールは、前体制からのスタイルを継続的に発展させるアプローチで、攻守両局面ともすでに高い完成度を見せていた。
 
 それに対して、ステーファノ・ピオーリの後任にポルトガル人のパウロ・フォンセカを指名したミランは、マンツーマンのアグレッシブな前進守備からゾーンのミドルプレスへ、攻撃も縦に速いダイレクト志向からポゼッション志向へと戦術を大きく転換したこともあり、まだチームが形になっていない印象だった。

 序盤に昨シーズンまでを思わせる縦指向の展開から先制したものの、その後はリバプールの秩序立ったプレッシングの前に自陣からボールを持ち出すことすらままならず、逆にセットプレーから2失点を喫し、さらに後半カウンターからダメ押しの3点目を許して完敗。セリエAでの戦いぶり(4試合で勝ち点4)も含めて今後に小さくない不安を残した。

 週末には宿敵インテルとのミラノダービー(過去2年間で6連敗中)を控えており、その内容と結果次第では、フォンセカ監督の早期解任もありうるとの見方が強まっている。
  18日のシティ対インテルは、2年前のCL決勝と同様に90分を通して拮抗した好試合だった。ボールと主導権を握って攻勢に立つシティに対し、5ー3ー2のコンパクトなローブロックで受け止めるインテルが、自陣でのボール奪取から再三再四、カウンターアタックでシティゴールに迫るという流れ。しかし、シティ守備陣の的確な対応もあり、シュートにいく前の段階でプレー選択をミスしてチャンスを無駄にする場面を繰り返した。
 
 試合の大半を敵陣で進めたシティも終盤、得意のコンビネーションからイルカイ・ギュンドアンが3度の決定機を得たがいずれも決め切れず、0ー0のままタイムアップ。ともに長期政権下にあり熟成段階に入っているチーム同士ということもあり、ミスの少ない高度な攻防が続くCLらしいハイレベルな一戦だった。
 
 19日のアタランタ対アーセナルは、3年越しの大改築が終了して、陸上トラック付きの老朽スタジアムから最新鋭の「専スタ」に変身したベルガモのゲヴィス・スタジアムが舞台。昨シーズンのELでリバプール、レバークーゼンを下して王者に輝いたアタランタは、昨今では珍しいマンツーマンディフェンスに基盤を置く、欧州サッカーの中でも特異な個性を持つチームだ。

 シティやバルセロナに通じるポジショナルプレー志向のモダンなスタイルを持つアーセナルに対し、マンツーマンのハイプレスを仕掛けて後方からのビルドアップを封じ込め、強力な武器であるブカヨ・サカ、ガブリエウ・マルチネッリにもタイトなマークでほとんど仕事をさせないなど、ほぼ完全に「牙を抜く」ことに成功していた。
  アタランタは後半に入ってPKを得るも、GKダビド・ラヤのスーパーセーブに阻まれ、勝機を逸した格好だ。アーセナルは司令塔マーティン・ウーデゴーを故障で欠いたこともあり、アタランタのマンツーマン守備を打開する術を見出すことができず、終盤にマルチネッリが唯一のビッグチャンス(シュートは枠を捉えず)を得るにとどまった。

 3試合をトータルで見れば、格上のイングランド勢、とりわけプレミアリーグで首位を争うシティ、アーセナルという強豪に対し、イタリア勢も互角に戦えることを示した格好。インテル、アタランタにとってこの内容と結果は大きな自信になるはずだ。
 
 まだ1節だけの消化なので順位表を云々することにはほとんど意味がないが、2節、3節と進んでいくなかで、全体の勢力地図が徐々に明らかになり、これまでのCLとはまた違った景色が見えてくるはずだ。 

 次の第2節は10月2日~3日に開催予定。ここでもレバークーゼン対ミラン、アーセナル対パリSG、RBライプツィヒ対ユベントスといったビッグマッチが組まれている。個人的には、イングランド対イタリアの第4幕となるリバプール対ボローニャ、初戦に古橋亨梧らのゴールで5ー1と大勝したセルティックが強豪ドルトムントとぶつかる一戦を注目したい。

文●片野道郎

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