主演は松村北斗!新海誠ワールドの原点『秒速5センチメートル』が実写化決定

興行収入250.3億円を記録した『君の名は。』(16)、141.9億円の『天気の子』(19)、149.4億円の『すずめの戸締まり』(22)と3作品の累計興行収入が異例の540億円を超える記録的な大ヒット作を生みだし、日本を代表するアニメーション監督となった新海誠の劇場アニメーション『秒速5センチメートル』(07)が実写映画として制作されることとなった。新海誠アニメーションの実写映像化作品が公開されたことはなく、本作が初の実写化作品となる。

『秒速5センチメートル』は、『ほしのこえ』(02)、『雲のむこう、約束の場所』(04)に続く、新海の3作目の商業公開作品にあたり、2007年に公開。小学生の頃に出会い、互いに惹かれ合うも離ればなれとなった少女への想いを抱えたまま30歳を手前にした青年の、18年間にわたる人生の旅が描かれる。映像美、音楽、特徴的なセリフで編まれた詩的な世界観は、「新海誠を新海誠たらしめている」センチメンタリズムが凝縮された新海ワールドの原点との呼び声も高く、公開から17年以上たったいまもなお、日本のみならず世界中で愛されている作品だ。

今回の実写化決定を受けて原作者の新海監督は、「いまの自分には決して作れないでしょうし、再現も出来ません」としたうえで、「奥山監督をはじめとした若く熱心なチームが再び、『秒速5センチメートル』に向き合ってくれていることに、私はとても興奮しています」、「誰よりも完成を心待ちに、応援しています」とコメントを寄せている。

主演はSixTONESの松村北斗で本作が映画初の単独主演。『すずめの戸締まり』ではオーディションで宗像草太役に選ばれている松村について、新海は「最も信頼する俳優である松村北斗くんに主演を務めてもらえることにも、人生の不思議さを感じます」と感慨深げ。松村は2021~22年にかけて放送されたNHK連続テレビ小説「カムカムエヴリバディ」で注目を集め、岩井俊二監督の『キリエのうた』(23)、三宅唱監督『夜明けのすべて』(24)に出演。2025年2月には脚本が坂元裕二、監督を塚原あゆ子が務め、松たか子と共演する『1ST KISS ファーストキス』の公開が控えるなど、名だたるクリエイターたちから出演を請われる実力派俳優として注目を集めている。

監督を務めるのは奥山由之。映像監督、写真家として若くして高い評価を国内外から得ており、「ポカリスエット」のコマーシャル写真&映像や、米津玄師の「感電」に「KICK BACK」、星野源の「創造」といったミュージックビデオを監督し、オムニバス長編映画『アット・ザ・ベンチ』(11月15日公開)では広瀬すず、仲野太賀、森七菜、草なぎ剛、神木隆之介らが集結するなど、いま最も注目を集めているクリエイターの一人だ。現在33歳の奥山監督は、新海が33歳の頃に『秒速5センチメートル』を制作していたことに言及し、「ただの数字とはいえ、大切な巡り合わせを感じております」とし、「いましか作れないもの」にしたい、自らの中に残る「センチメンタル」をこの作品に全て置いていくつもりであると意気込んでいる。

さらに脚本には、『愛に乱暴』(24)、『BISHU〜世界でいちばん優しい服〜』(10月11日公開)の鈴木史子が参加し、「(人生の)どの地点でこの作品と出会ったかによって違う切実さを感じる深遠な原作を前に、喜びと緊張を持って向き合わせていただきました」と本作への思いを説明する。

公開は2025年秋を予定。名作アニメーション『秒速5センチメートル』が実写化でどのように生まれ変わるのか?続報が待たれる!

■<コメント>

●新海誠(原作)

「私が二十年近く前に監督したアニメーション映画『秒速5センチメートル』は、とても未熟で未完成な作品でした。しかしその未完成さ故に、いまでも長く愛し続けてもらえている作品でもあります。初期衝動―未知への憧れと畏れだけをただぶつけたあのような映画は、いまの自分には決して作れないでしょうし、再現も出来ません。ですから、奥山監督をはじめとした若く熱心なチームが再び、『秒速5センチメートル』に向き合ってくれていることに、私はとても興奮しています。最も信頼する俳優である松村北斗くんに主演を務めてもらえることにも、人生の不思議さを感じます。どうか、皆さんのいまでしか作れない映画にしてください。誰よりも完成を心待ちに、応援しています」

●松村北斗(主演)

「僕自身、何度も見返してきた作品だからこそ、重責を日々感じています。この原作はたくさんの方の人生に深い影響を与えてきました。ファンの皆さんはそれぞれの解釈と世界を持っていて、僕もその一人です。そんな作品の実写化に未熟な僕が参加するのかと一歩踏みだせないでいました。しかし、奥山監督をはじめとする製作陣の原作への憧れと愛。そして、新海さんから言っていただいた『北斗くんで見たいですね』というお言葉がこのチームで挑戦する理由をくれました。『秒速5センチメートル』に影響を受けて憧れてきた者が集まったチームで作る今回の作品。原作チーム、ファンの方への敬意を胸に挑ませていただきます」

●奥山由之(監督)

「新海誠さんが当時33歳の時に紡ぎ上げていた物語を、いま33歳の僕が撮らせて頂くことに、ただの数字とはいえ、大切な巡り合わせを感じております。いましか作れないものがあるということ、いずれは忘れてしまう眼差しがあるということに気付かされながら『秒速5センチメートル』と向き合っている日々です。どことない喪失感、焦燥感を抱える貴樹の背中に、温もりある手を添えるようにして、心から信頼するチームの皆さんとともに、1シーン1シーン、1秒1秒を丁寧に、切実さと誠実さをもって、真摯に撮り重ねたいと思います。僕の中に残る『センチメンタル』をこの作品に全て置いていきますので、どうかご期待ください」

●鈴木史子(脚本)

「新海誠監督の『秒速5センチメートル』を初めて観たのは20代の頃でした。チームの中には中学生や高校生で観たという方も多く、どの地点でこの作品と出会ったかによって違う切実さを感じる深遠な原作を前に、喜びと緊張を持って向き合わせていただきました。人と人が近づいたり離れたりする巡り合わせのことを。とても真摯な奥山監督や信頼するスタッフ、誠実なキャストの皆さんとたくさんの対話を重ね、その時間のすべてを脚本に込めました。多くの方々の“いま”に届くことを願っております」

●玉井宏昌(プロデューサー)

「世界中で愛されている不朽の名作を実写化するという無謀な挑戦を受け入れてくださったばかりでなく、言葉を尽くしてのご助言をはじめ本プロジェクトを支えてくださっている新海誠様、コミックス・ウェーブ・フィルムの皆様に感謝申し上げます。映像監督、写真家としてフロントランナーである奥山由之監督、松村北斗さんと共演者の皆様、脚本、映像、音、デザイン、それぞれの専門領域において並外れた才能と技術、そして研ぎ澄まされた感性と美意識を持った方々が集結しています。公開までの続報も楽しみにしていただけたら幸いです」

文/平尾嘉浩

※草なぎ剛の「なぎ」は弓へんに前の旧字体、その下に刀が正式表記