グローブの成り立ち
一双のグローブを作るのに109パーツ・46工程・18の検査!
こちらは「グローブの構成パーツ」だ。HESTRAグローブの場合、ワンペアは実はこんなにもたくさんのパーツから成っている。その数はなんと109! 生地素材を縫い合わせたり、細かいパーツを取り付けたりのプロセス(工程)は46アクションも必要だ。加えて18種類のクオリティーチェックを通過しなくてはらなない。ひとつのグローブが完成するまでに要する時間は1時間27分という。なんという手間がかかっていることか!
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グローブの構造
上のグローブの分解パーツがグローブになると、いわゆるグローブの構造はこんなふうになっている。(下図)
外側からシェル(表地)・メンブレン(防水フィルム)・ライニング(中綿)・裏地と、一番多いのが4層構造だ。メンブレンが入っていない3層構造のグローブもあるし、ライニングが入っていない薄手のグローブもある。
■ 一番多いのが4層構造
ライニング(中綿)
保温性を保つための考え方は、ウエアのレイヤリングと同じだ。ミッドレイヤーにダウンを着るか、トレーナーのようなコットンを着るかで温かさを調整するように、グローブではライニング(中綿)の厚さや素材で調整する。ライニング下の写真のようにライニングが取り出せるタイプのグローブもある。
中綿にはポリエステルから作られているフリース素材や、ウールが使われているものもある。ウールの強みは多少の湿気を含んでも保温性を維持してくれること。グローブの中に雪が入ってしまい少し濡れても意外と冷えない。
シェル(表地)
グローブのシェル、いわゆる表地に使われる素材は、大きく分けるとナイロンと皮革の2つ。ナイロンには厚みや性質の違うさまざまな素材があり、ナイロンの利点は、防水性、防風性、耐水性、透湿性、耐久性、軽さなどが挙げられる。また、ポリエステルや合成ゴム素材も使われる。
皮革の利点は圧倒的な耐久性と柔らかさだろう。皮革は使い込むたびに柔らかさを増し、しなやかに手の動きに馴染むようになる。また、透湿性に優れた皮革もある。その快適さは、一度使ったら誰もが実感するだろう。皮革のスノーグローブのアイコンともなっているHESTRAでは、創業の1936年から一貫して皮革を使用したグローブ作りをしているが、その背景には天然素材ならではの高い機能性と自然に調和した味わい深い風合いが、ユーザーを惹きつけてやまないからだ。
■ 動物の革の種類
我々の日常生活にも皮革製品はあふれている。革靴、革のバッグや財布、革のジャケット、革のソファなどいろいろだ。革と一口に言っても、実はさまざまな種類があり、動物の革にはそれぞれ特長があるのだ。
牛・羊・山羊(ヤギ)・馬・ワニあたりはポピュラーで想像しやすいが、水牛(バッファロー)、鹿、豚、イノシシなどもある。水牛革は高級な革ジャケットに使われていたり、眼鏡のお手入れに使うセーム革は鹿革を油でなめしたもの、馬革のコードバンと呼ばれるお尻の革は美しいツヤと気品、耐久性で世界最高級とされる、イノシシの革は高級でなかなか手に入らない、などと聞くと、革の世界は実に興味深い。
■ スノーグローブでは山羊と牛・鹿がメイン、’24-25季はカンガルーも登場!
しなやかさと耐水性が高いことで、スノーグローブで多くで使われているのは山羊(ヤギ)革と牛革だ。そこに一部、鹿革が加わる。ヤギ革は強く丈夫で個性的なシボ(革の表面の立体的な皺模様)に味があり、経年変化を楽しめる。子どもの山羊の革(キッドスキン)は大人の革(ゴートスキン)より特に柔らかで美しく、靴や手袋に愛用されている。
牛革は表面加工のバリエーションが豊かな素材のため、鞄や靴、手袋など、あらゆる革製品に使われているのはご存知の通り。牛革の「Cowhide」は、擦り傷に強く、透湿性に優れるため、グローブにマッチしている。HESTRAの「Omni」はCowhideを採用。
また、鹿革の伸びて元に戻る性質が手袋の素材として優れており、「Elkskin」はスウェーデンとフィンランドで育てられたヘラジカを、「Deerskin」は北米のオジロジカの革を加工したもの。いずれも驚くほど柔らかで保温性にも富む皮革だ。山羊や牛革よりも値は張るが、そのクオリティは魅力的。
’24-25季には、SWANYからカンガルーの革を使ったグローブが登場。カンガルーの革は薄くて軽くて耐久性が高いのが特徴だ。その薄さは、他のスキーグローブと比べると格段で、物を握ったときの感覚は、実に素手に近いほど。カンガルー⁈ と聞いて驚く人も少なくないだろう。
SWANY
SX-501 Duetipo
Material:Goat Leather,Kangaroo Leather,GORE-TEX
¥20,900
手の甲側は山羊革を使い、掌にはカンガルーの革を採用。一番ストレスのかかる掌側に耐久性を持たせて長く使える。
こんなふうに革の豆知識を得ると、グローブにもこれまでとは違った愛着が湧いてくるような気がしないか。
メンブレン(防水フィルム)
スノーグローブが濡れないように機能するメンブレンもいろいろな素材があるが、最もよく知られているのが「GORE-TEX®」だろう。グローブ内の熱と湿気を外部に放出する、人間の肌と同じ機能を持つ防水透湿素材。水の侵入を防ぎ、雪の中でも手をドライで快適な状態に維持してくれる。また、風もシャットアウトすることで手が暖かく快適に保たれるというわけだ。
一方で、GORE-TEX®を入れるとどうしても硬くなり、フィット感が落ちるのは否めない。手指をよく動かすための作業系のグローブには使われていることはほとんどない。ちなみにHESTRAでは他にも「CZone®」という
防水透湿素材を採用。フィット感を損なわずにグローブに適した裁断が可能な利点もある。このように、メンブレンはニーズに合わせて採用されているのだ。