9月20日から22日に開催された男子テニス団体戦「レーバー・カップ」(ドイツ・ベルリン)の創設者である元世界ランク1位のロジャー・フェデラー氏(スイス/43歳)が、大会期間中のインタビューで片手バックハンドを使う選手が減っている現状に触れ、「悲しいこと」と所感を語った。
24日時点のランキングにおけるトップ100選手の中で、片手バックのプレーヤーはグリゴール・ディミトロフ(ブルガリア/10位)、ステファノス・チチパス(ギリシャ/12位)、ロレンツォ・ムゼッティ(イタリア/19位)、ジョバンニ・ムペシ・ペリカール(フランス/51位)、ドゥサン・ラヨビッチ(セルビア/65位)、アレクサンダー・コバチェビッチ(アメリカ/72位)、クリストファー・オコネル(オーストラリア/75位)、ダニエル・アルトマイヤー(ドイツ/83位)の8人。
このうち20代の選手はチチパス(26歳)、ムゼッティ(22歳)、ムぺシ・ペリカール(21歳)、コバチェビッチ(26歳)、アルトマイヤー(25歳)の5人。ここからさらに「20代前半」というカテゴリーに絞ると、ムゼッティとムペシ・ペリカールの2人しかいない。
実は1973年にATPランキングが開始した時は、トップ10のうちなんと9選手が片手バックを使っていた。当時のトップ10で両手バックハンドを使用していたのはジミー・コナーズ(アメリカ/元1位)の1人しかいなかったのだ。
時を経て徐々に片手バックの使い手は減っていったが、2000年代に入ってからもスタン・ワウリンカ(スイス/元3位/現234位)やリシャール・ガスケ(フランス/元7位/現122位)、ドミニク・ティーム(オーストリア/元3位/現242位)をはじめ片手バックの選手はまだ多くいた。だがここ数年は確かに大多数の若手選手が両手バックを使っている印象が強い。
今年2月にはチチパスが約5年にわたって維持してきたトップ10から陥落し、ATPランキングの開始以来、初めて10位圏内から片手バックを使用する選手が消滅。現在もトップ10で片手バックの選手はディミトロフだけである。こうした状況を踏まえ、フェデラー氏は自身の見解を次のように示した。
「片手バックの選手が減っている原因はトレーニングによるものだと思う。世界1位と2位の選手が片手バックでプレーすればそれは素晴らしいことだが、今はそうではない。つまり片手バックの世代を生み出すためのインスピレーションがないわけだ。
若手は世界最高の選手のプレーに注目する傾向が強いが、それらの選手が両手バックを使っているのを見たら、それが進むべき道だと考えるだろう。たとえそうではないとしてもね」
では片手バックの使い手が減り続けている現状を打開する解決策はあるのか?この問いにフェデラー氏はこう答えた。
「両手バックよりも片手バックの方が良いプレーをする選手がいるということを理解できるのは、世界中のコーチだと思う。試しに片手で打ってみたことがあるかが問題だ。コーチはそれを知る必要がある。また、選手はかつて私がやったように、片手を試してみるという衝動的な意欲を持たなければならない」
「片手バックは現代のゲームでもまだ通用すると思う。もちろん、リターンとディフェンスでは両手バックの方が戦え、片手バックではそれが困難になる可能性はある。今日私が目にしたのは、両手打ちプレーヤーのスライスが優れているということだが、私がツアーに参入した20 年前は必ずしもそうではなかったと思う。片手バックの選手がますます少なくなるのは悲しいことだ」
片手バックならではのメリットや魅力等をコーチが伝えていくべきだとフェデラー氏は主張したいのだろう。各指導者にその想いが伝わることを願いたい。
文●中村光佑
【画像】史上最強の王者!絶大な人気を誇るロジャー・フェデラーの「ウインブルドン2019」を振り返る!
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