スキー・スノーボードゴーグルの正しい選び方’24ー25

スキー・スノーボードをする際、一面真っ白な雪山で視界を確保し、瞳を紫外線から守るゴーグル。視界不良による道迷いを防いだり、他人や木への衝突を未然に防いだりといった身の安全を守るためにも重要なアイテムの一つだ。だからこそ、改めて基本的なことを知っておきたい。フレームの形状、フィット感、ベンチレーションや曇り止め加工の技術、そしてレンズテクノロジー。ゴーグル選びでチェックすべき点に加えて、各メーカーがしのぎを削って開発を進めるレンズテクノロジーを紹介しよう。ぜひ次のゴーグル選びの参考に。

ゴーグルの各パーツの機能

フレーム

フレームはゴーグルの輪郭を決定づけ、顔を守るためにある。そのため素材に主に用いられるのは加工が容易で丈夫、しかも軽いという特性を持つTPU(=熱可塑性ポリウレタン)。ブランドによってはカーボンや植物由来のプラスチックを用いることも。これは、さらに強度を上げて顔を守るために使用されたり、地球環境に配慮したモノづくりをするために用いられている。

TPUを用いたフレーム

ジャパンフィット

ゴーグルブランドの多くは海外発祥だ。そのため、欧米人の顔型に合わせて制作していて、額の丸みや鼻の高さなどが日本人に合わない。仮に、顔に合っていないものを使用すると、ゴーグルと顔の間に空いた隙間から雪や風が侵入し、レンズが曇る原因にもなる。それを解消するのがアジアンフィット、ジャパンフィットモデル。日本人の顔に合わせ、額や鼻の高さをスポンジの使用量で調整している。

もちろんジャパンフィットでなくとも日本人に合うものはあるし、顔のシェイプも人それぞれなので、ジャパンフィットだからといってすべてが日本人万人に合うわけではないことを付け加えたい。ゴーグルの購入を検討する際は、実際に付けてみないとわからない部分が大きい。

鼻の部分が肉厚になっているスポンジ

ベンチレーション

ベンチレーション、つまり換気システムのことだ。レンズが曇ってしまうと視界が悪くなり安心して滑れなくなるなど、せっかくのスキーも楽しさが半減するだけでなく、危険もある。多くのゴーグルはレンズの下部と上部に通気口が空いており、空気の循環を促している。その穴はスポンジで覆われているだけのものもあれば、強度の高い素材でカバーされているものもある。通気口の形状からカバー素材まで、各メーカーは様々なテクノロジーや開発を凝らしている。

また、レンズを曇らせないためのテクノロジーはベンチレーション以外にもある。レンズ自体が水分を吸い、ゴーグル内の水蒸気を飽和させないようにしたり、レンズとフレームがワンタッチで外せて、ダイレクトに換気させるものもある。スキーヤー・スノーボーダーの天敵であるレンズの“曇り”を徹底的になくすために、各メーカーがしのぎを削っているのだ。

スポンジ

顔へのクッション性を高めるスポンジ。スポンジの種類を使い分け、2層か3層構造になっているものが多い。フレームに近い側のスポンジは硬くて強度の高いものを使用し、顔に触れる側のスポンジは柔らかく、衝撃吸収性の高いものを使用している。

レンズの形状

レンズには大きく分けて「平面レンズ」と「球面レンズ」の二種類の形状がある。

平面レンズの SMITH|Squad MAG™
球面レンズの SMITH | 4D MAG™S

平面レンズはレンズ加工時に歪みが少なく、クリアな視界が保てる。一方球面レンズは、レンズのカーブが眼球の丸みに近いため、どの方向を見ても視界がリアルに近かったり、レンズと顔の間の空間体積が曇りづらいなどの利点があるが、ベンチレーションの箇所で述べたように、最近は曇り止め技術が向上したため大差はないという認識がほとんどだ。

バンド

ゴーグルがズレるのを防ぎしっかりと頭に固定するためのバンド。ほとんどがゴム製。近年は視界を広げるために大型フレームを採用するモデルも多く、フレームが大きくなるにつれ重量が増すので、バンドもそれに合わせて太いタイプもある。なかには内側に滑り止めのシリコンを配したモデルや、バンドそのものがシリコン製というものもある。

OUTOF|ELECTRA2
バンドが太いゴーグルの代表格
OAKLEY|Line Miner L
ストラップ内側にシリコンライニングが施されている

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レンズテクノロジー

レンズは内レンズと外レンズの二枚が貼りあわされている

ダブルレンズについて

ゴーグルのレンズのほとんどはダブルレンズを採用しているということは多くの人が既知のことだろう。仮にレンズが1枚しかない場合、レンズの内側が体温で温まっているのに対し、外側が外気にさらされているため、ゴーグル内のレンズに近い部分の水蒸気が飽和し、内レンズに細かな水滴となってくっついてしまう。冬に車に乗るとフロントガラスが曇るのと同じ原理だ。

2枚のレンズを貼り合わせる理由は、外気と内気の温度差を軽減し、曇らせないためである。外レンズの素材は熱可塑性に優れるポリカーボネイトを使用。ミラーコーティングがしやすいなどの特性がある。内レンズはレキサンビュートレートと呼ばれる素材を採用しているブランドが多い。これは曇り止めなどの加工が容易となるためだ。

レンズカラーによる見え方の違い

カラーコーティングの違いは、天候によって使い分けることで見やすさの向上に繋がる。また、斜面の凹凸やコントラストを高める効果もある。主なレンズカラーの使い分けは以下の通り。

【オレンジ系】
晴天から曇天まで幅広く見やすい
【イエロー系】
降雪時や曇りの日に最適
【ブルー系】
晴天時から曇天時に見やすい。雪面の凹凸もはっきりする
【ピンク系】
薄く晴れた日から曇りの日に使いやすい
【ブラックやグレー】
晴れた日に見やすく、自然の色見そのままに見える
【クリア】
ナイターなど明かりが少なくて暗いシチュエーションに

ゴーグルの明るさを決める「可視光線透過率

雪山は標高が高いぶん日射が強い。また雪面からの照り返しも強い。アスファルト10%なのに対して、雪は80%もの紫外線を反射する。まぶしいうえに目にも好ましくない影響を与える。そのため、レンズは光の量を調整するサングラスのような効果も果たしている。

目に届く光の量をレンズで調整する際に、目安となるのが「可視光線透過率」だ。レンズにカラーコーティングやミラーコーティングを施すことでその数値を調整している。裸眼が100%として、まったく光を通さない状態が0%だ。晴れの日は照り返しも強いので10%~20%。雪の日は20%~40%の物が使いやすいだろう。ナイターの時は60%程度のものがオススメ。

ハイコントラストレンズとは

GIROで使用されているVIVIDレンズでの見え方の違いイメージ
©Lotus International CO.,Ltd.

近年、各メーカーが開発に力を注いでいるのが、「ハイコントラストレンズ」。各ブランドの一定レベルのゴーグルには標準となった新しい技術だ。これは、レンズを通して入る特定の色光線を強調、減少させる、または影を強めることで雪面の凹凸や影を強調する技術。光が少ない曇天や降雪時でも斜面の凹凸がよりくっきり見えて滑りやすくなる、というものだ。

例えば、人間の眼の作用として、青い光よりも赤や緑の色のほうがものの形や奥行きが見えやすい。そこで、青い光をカットし、赤や緑色を増幅させることで、雪面の凸凹や地形などがよく見えるようにする、といったものだ。メーカーによって、どの色光線をどのように調節するかなど、方法が様々ある。一口にハイコントラストレンズと言えども加工方法はいろいろなのだ。

調光レンズとは

「調光レンズ」は、紫外線量や可視光線量に反応して色が変わるレンズのこと。強い光や紫外線を浴びると濃い色になり、室内などに入ると薄い色になるのが特長だ。レンズに調光フィルムを挟み込んだり、紫外線を当てたり温度が上がったりすると変質し、色が変わるという性質を持つ感光物質が入ったコーティングを施している。よって、太陽に照り付けられて眩しい雪面を見るときは色が濃くなることで斜面の凹凸が見えやすくなり、曇って光の量が落ちれば薄い色になるというわけだ。明るさに合わせてゴーグルやレンズを付け替える必要がないので便利だ。

偏光レンズとは

「偏光レンズ」は、光の乱反射をカットして、眩しさをなくすレンズのこと。レンズの中に挟んだ偏光膜と呼ばれるフィルムが光の反射だけをカットして、視界を良好にしてくれる。雪上では晴れているときは光の反射で非常に眩しいもの。調光レンズには乱反射を抑える機能はないため、この点が調光レンズと偏光レンズの大きな違いだ。