9月23日、米中対立やロシアによるウクライナ侵攻など世界の分断が進む中、ロシア軍の哨戒機1機が北海道・礼文島北方で3度にわたって日本の領空を侵犯した。
防衛省によると、ロシア軍のIL38哨戒機が極東シベリア側から飛来し、礼文島北方の空域で午後1時ごろに1分間ほど日本の領空に侵入。その後、周辺空域で旋回などを繰り返し、午後3時半ごろに2度ほど再び領空侵犯したという。これに対し、航空自衛隊のF35とF15戦闘機がスクラングル発進し、強い熱と光を発するフレアを用いた警告を初めて実施、日本側は外交ルートを通じてロシア側に厳重に抗議した。ロシア軍機による領空侵犯は2019年以来となる。
しかし、ロシアが日本の抗議に耳を傾けることはない。ロシアによるウクライナ侵攻以来、日本はウクライナ支援に回り、欧米諸国と足並みを揃える形でロシアへの制裁を強化し、日本と欧州を結ぶ国際便はロシア上空を飛べないほど関係は冷え込んでいる。プーチン政権は今、対ウクライナ政策一本のように見えるが、極東シベリアでも軍事的挑発を継続することで自らの脆弱性を払拭し、日本を含む欧米陣営を牽制する狙いがあったことは間違いない。
一方、ロシアは中国がどのような軍事的挑発をしているかを注視しているように思われる。長崎県五島市の男女群島沖の上空では8月26日、中国軍のY9情報収集機1機が日本の領空を2分間にわたって侵犯した。中国軍機による領空侵犯が確認されたのは初めてとなったが、情報収集機は中国大陸から東に向かって飛行し、男女群島沖上空で複数回にわたって旋回、その間に2分あまりにわたって日本の領空に侵入した。その後、航空自衛隊が無線で領空に接近しないよう再三にわたって警告したものの、情報収集機はその後も1時間半程度、周辺上空を旋回し続けた。日本政府は今回のように中国に強く抗議したが、中国政府は如何なる国の領空を侵犯する意図はないと主張し、謝罪や再発防止に関する発言は一切なかった。
今回の2つの事案は別のものかもしれないが、政治的連動性はあったことだろう。双方、領空侵犯という点では同じである。世界の分断が進む中、今後、中露両国はいっそう軍事的挑発で協力を強化してくるだろう。そして中露共闘で日本を揺さぶる手段として、ロシアによる尖閣諸島、中国による北方領土への挑発といった行動も取ってくることだろう。
(北島豊)