今や世界一の規模を誇る中国高速鉄道。現時点での総延長は4.5万kmと日本の新幹線の約13倍で、2035年までには7万kmに達する見込みだ。

 ところが、高速鉄道を管理・運営する国営企業、中国国家鉄路の23年末時点での負債総額は6兆1282億元(約125兆円)。これは国鉄がJRに分割民営化する1987年時点での負債総額約37兆円の3倍以上となる。

 国の威信をかけた大事業とはいえ、これは21年に破綻した同国の大手不動産会社、広州恒大の負債総額2兆3900億元(約49兆円)の比にならない。

中国高速鉄道は支線、通勤用の近距離路線なども合わせると90以上の路線がありますが、黒字なのは京滬高速線(北京―上海)をはじめ、京津都市間鉄道(北京―天津)や広深線(広州―深セン)、寧杭旅客専用線(南京―杭州)など数えるほどしかありません」(元中国総局の大手紙記者)

 また、江浦駅や紫金山東駅(いずれも江蘇省)、衡南駅(湖南省)などのように、高速鉄道専用駅として建設されるも未使用のまま廃墟化している駅が少なくとも26駅あるという。

「地方政府の関係者は『駅を作れば街として発展する』と話していましたが、その見込みの薄い地域にも駅を次々と建ててしまった。要はそのツケです。そもそも中国高速鉄道の途中駅は、そのほとんどが郊外。各都市の中心部からのアクセス、乗り継ぎに不便なところばかりで営業していても秘境駅化しているところが少なくないのが現状です」(同)

 そのため、秘境駅化や廃墟化する高速鉄道駅は、今後さらに増える可能性が高いという。

中国の場合、面子を重んじる国なので日本の国鉄末期~JR初期、近年のJR北海道のように簡単に廃線にしないと思います。でも、今以上に膨らんだ負債が地方政府や中央政府にとって大きな足かせとなるのは間違いないでしょうね」(同)

 お隣の韓国では18年にソウル―仁川空港を結ぶ高速鉄道が利用者数の低迷などを理由に、わずか4年で廃止されている。中国の高速鉄道も路線によっては“勇気ある撤退”を検討すべき時期を迎えているのかもしれない。

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