平安時代に成立した短編歌物語集である「伊勢物語」。中でも代表的な「東下り」は、都(平安京)から東国(関東地方)へ赴くことを意味する言葉として用いられてきましたが、これを現代で再現した写真がXで注目を集めています。

 承香院(じょうこういん)さんが投稿したのは、平安貴族の衣装をまとって、新幹線「のぞみ」に乗り込む自身の後ろ姿。これはまさしく「超高速東下り」……。

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 普段から平安時代の装束や文化を実践しながら、独自に研究しているという承香院さん。2024年にはその活動のひとつの集大成として「あたらしい平安文化の教科書」を刊行、さらにアニメ映画「つるばみ色のなぎ子たち」の制作にも協力するなど、多方面に活躍の場を広げています。

 この写真は“過去に投稿したものを再掲”したもので、大阪、京都、東京間を、平安装束のいくつかを着用して移動した際のようすを何気なく撮影したもの。投稿に添えた「超高速東下り」というフレーズは、当時の投稿に寄せられたリプライのひとつだったそうです。



 特に目を引くのは、やはり平安時代の貴族を思わせる装束。上着は購入品で、厳密にいうと平安時代の形状の装束ではないそうですが、穿いているのは指貫(さしぬき)という平安貴族が着用していた袴で、こちらは承香院さんの手作り。様々な資料から平安時代中期の形を再現して縫いあげたという作品です。

 「平安文化に関する活動の際は、できるだけ何か一つでも実践して平安時代の感覚のヒントとなるデータを収集しようと努めている」という承香院さんは、移動の際も極力平安装束の要素が入った服装で過ごすことを心掛けているのだそう。

 たしかにこのまま移動となると、トイレに行くことが大変だったり、食事をとればすぐにお腹いっぱいになったりと、実体験として平安時代のリアルな感覚に迫ることができるでしょう。「そうして集めた感覚のデータも、平安装束の復元などの際に大きなヒントとなるのでございます」と、尋常ではないこだわりを語ってくれました。



 承香院さんを見た方の反応は様々で、驚いて固まってしまう方や「一緒にお写真を撮らせていただいてもいいですか」と声をかけてくれる方も。時々、突然カメラを向けられることもあるそうで「できましたら一声おかけいただけますと幸いです。襟などを直したいこともございますので」と呼びかけました。

 伊勢物語と言えば、平安時代初期に実在した貴族である在原業平を思わせる男の恋愛物語が描かれた作品ですが、「東下り」が千年以上後の令和の世にも受け継がれているとは、思いもよらないことでしょうね。

<記事化協力>

承香院(じょうこういん)平安時代 周辺文化【実践】研究さん(@jyoukouin

(山口弘剛)

Publisher By おたくま経済新聞 | Edited By 山口 弘剛‌ | 記事元URL https://otakuma.net/archives/2024092706.html