「めっちゃオモロいやん」だけでいい
――何かを感じるだけでいいんだったら、一気に楽になりました(笑)。
よかったです(笑)。この作品も、私は狙って笑いを取ろうと思って作ってないんですけど、めちゃくちゃ笑ってくれる人が多いんですよ。
海外で出展したときも、この作品の前では、みんなの口角が上がるって好評なんです。私は笑かそうと意図して作ってないんですが、面白いと感じてくれたなら、それでいいんです。逆にこの作品を見て、泣いてしまう方もいるんですよ。
――泣いてしまう方は、この作品をどういうふうに感じているんですか?
写真を撮るときって、実際の自分より可愛くなろうとしたり、キレイになろうとする方が多いじゃないですか。そういうことに必死になってしまっているような方がこの作品を見ると、「頑張ってキレイに写らなくてもいいんだ」「コンプレックスがあっても別にそこまで気にしなくていいんだ」と気分が解放されて、泣いてしまうようです。
出典: FANY マガジン
――1つの作品でも見る人によって、喜怒哀楽のいろんな感じ方があるんですね。
そうなんです。この作品を見て、笑わせようとか泣かせようとはしていないんですが、見た人が笑ったり泣いたりしているのは、人の心が動いてるということじゃないですか。私の作品を見て、嫌いという方もいるんですよ。そういう方でも「嫌い」というパワーを使ってるな、それだけ人の心に響いているな、と思うので私は嬉しいんです。
だから、作品を見て自由に感じてもらっていいんですよ。難しい解釈は、専門家の方に任せたらいいんです。そして専門的な解釈を知りたければ、専門書を読めばいいんです。「めっちゃオモロいやん」と思ったら、「めっちゃオモロいやん」でいいんですよ。
――それでいいんですね! 僕も今日、この作品を見て「めっちゃオモロいなあ」と思ったんですが、そこからどう解釈すればいいかわからなかったんですよ。
「めっちゃオモロいやん」だけでいいですよ(笑)。そこから私以外にもどんな写真の作品があるのかな、という入り口になれたら、私はすごく嬉しいです。
横山奈美《LOVE》2018年 豊田市美術館蔵