レバノンでは9月17と18日、イスラム教シーア派組織ヒズボラの戦闘員らが所有するポケットベル4000個とトランシーバー1000台が各地で相次いで爆発。合わせて37人が死亡し、3400人以上が負傷したとレバノン保健省が発表した。
これを受けて20日、国連安保理では緊急会合が開かれ、出席したレバノンのハビブ外相は、イスラエルによる無差別な攻撃だとしたうえで「イスラエルはこのテロ攻撃によって軍人と民間人を区別するという国際人道法の原則に違反した」と非難した。
今回の爆発については、イスラエル側がポケベルなどの端末の製造・流通過程で爆発物を組み込み、通信によって遠隔操作して爆破させた可能性が指摘されているが、これに危機感を持ったのがイギリスだという。
というのも、イギリスでは核弾頭が配備された基地や医療機関などでポケベルが今も多用されており、懸念の声が上がっているそうだ。
「スコットランドの地元紙『ザ・ナショナル』は核弾頭が搭載可能な海軍のミサイル潜水艦の母港と弾薬庫勤務の隊員らが現在もポケベルを広く使用していると報道。安全保障上の懸念があると指摘したのです」とは夕刊紙記者。
「さらにイギリス公的医療機関では今でも多くのポケベルが使用され、その数は世界で使われているポケベルの10%を占めるといわれているそうです」(同)
今回の爆発はサプライチェーンを利用した敵対勢力に対する工作が可能であることを示し、各国にとっては、ライバル国への技術依存を減らす取り組みの緊急性が高まったといわれている。
武装組織がポケベルを使うのは、GPSで容易に位置を特定される携帯電話の使用を避けるためとされるが、ポケベルと聞いて懐かしさを覚えている場合ではないようだ。
(鈴木十朗)
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