日本国内における定期運航の旅客機が就航する空港は97カ所。ただし、その中には運行本数が1日1便(1往復)と極端に少ない空港もある。9月末現在、オホーツク紋別空港(北海道)と、のと里山空港(石川県)、北大東空港(沖縄県)の3カ所だ。
ちなみに、のと里山空港は1月の能登半島地震の影響で、それまでの1日2便から減便している。また、北大東空港も7月末までは那覇に加え、隣の南大東島との2路線のフライトが運航されていた。
つまり、以前から「1日1便」だったのは紋別空港だけだ。同空港があるオホーツク沿岸部は北海道の東北に位置し、道内でも特に人口の少ない地域のひとつ。また、約100キロ離れた場所には女満別空港があり、羽田や関空の他、新千歳や札幌市の丘珠(おかだま)などの空港から道内便も飛んでおり、こちらが道東の玄関口となっている。網走や北見といったこの地方の中核都市に加え、世界遺産の知床にも近いため、利便性を考えれば女満別の利用が最適と言える。
当然、利用客は紋別空港のほうが少なく、いわば「秘境空港」といった趣。ところが、実は、この空港はリピーターが非常に多い空港として知られている。
しかも、リピーターたちは、羽田から到着後に、すぐに折り返しの便で帰京するという超弾丸旅行をするのが特徴なのだ。1日1往復の便を1日で体験するというもので、これは「紋別タッチ」の愛称で知られており、SNSなどで拡散されるとブームになった。メディアでもたびたび取り上げられている。
筆者も実際に体験したことがあるが、紋別空港に居られるのはわずか40分。だが、出発20分前までには保安検査場を通過しなければならず、実質的な滞在時間は20分しかない。
訪れた日は定刻通りの到着だったが、紋別市内や周辺の観光スポットに行く時間はなく、ターミナルの外から外観写真を撮るのがやっと。でも、空港内では紋別タッチ利用者向けにスタンプカードを発行しており、特製ステッカーのプレゼントの特典が受けられる。
さらに、1階の出発・到着ロビーにある空港唯一の飲食店「カフェ オホーツクブルー」では、地元産の食材を使った「タラバ蟹カレー」や「ホタテカレー」のほか、「流氷ドラフト」などの複数の地ビールも堪能できる。
特に冬場の流氷シーズンは、オホーツク海に流氷が広がり、まさに絶景。1日1便で短い滞在時間でも十分楽しむことができるため、日帰りでとにかく遠くに行きたいという方にはオススメだ。
(高島昌俊)
*写真は紋別空港