自動車の車内でナビゲーションなどの機能の1つを使い、テレビを見ている人もいるだろう。通常、走行中にテレビやDVDを見ると「走行中は音声のみでお楽しみください」と警告され、音声だけになってしまう視聴制限がかかっている。だが、「テレビキャンセラー」などを装着すれば、これを解除することができるため、新車購入時にあらかじめディーラーで作業するケースも少なくない。

 もちろん、走行中にドライバーがテレビを「注視」する「ながら運転」は、道路交通法第71条により禁止されている。しかし、助手席や後席の同乗者がテレビを見るのは罰則の対象にはなっておらず、子どもや妻のためにテレビキャンセラーを装着している人は多いだろう。

 ところが、このテレビキャンセラーが今後、使えなくなる可能性が出てきた。10月から車検の際に「OBD検査」が導入されるのだ。この検査は、自動車のコンピューターにプログラミングされている自己診断機能である「On Board Diagnostics(車載式故障診断装置)」を使って、レーンキープアシスト、自動ブレーキなどの運転支援装置や自動運転技術が正常に作動しているかチェックを行うというもの。電気系統の故障は見た目では判断が難しいため、OBD検査でトラブルの発生箇所を特定するのである。だが、一部のテレビキャンセラーを装着していると、エラーが出る可能性があるという。自動車ライターが語る。

「近年、OBD2(OBDがバージョンアップされたもの)ポートにテレビキャンセラーやレーダー探知機を接続したことで、トラブルが発生する事例が増えています。車がこれらの機器をセキュリティ上の脅威と判断し、運転支援機能が使えなくなったり、エンジン始動が出来なくなる場合もあります。やっかいなのは、必ずしもシステムエラーのアラートが点灯するわけではなく、普段は全く異常がないのに、いざというときに車の性能が100%発揮できない場合があること。粗悪なテレビキャンセラーなどを使っていると、車検で弾かれる可能性もありますね」

 OBD検査は、国産車が今年10月、輸入車は来年10月から始まる。また、国産車は21年10月以降、輸入車は22年10月以降の新型車が検査の対象となる。テレビキャンセラーを付けた比較的新しい車に乗っている人は注意が必要だ。

ケン高田

【写真ギャラリー】大きなサイズで見る