四代目 桂梅枝(ばいし)を襲名した桂枝光(しこう)と、五代目 桂慶枝(けいし)を襲名した桂三風(さんぷう)のW襲名披露公演が、9月27日(金)に大阪・なんばグランド花月で開かれました。口上には月亭八方、桂文珍、笑福亭仁智、柳亭市馬、桂米團治、桂文枝という錚々たる面々が登場。梅枝、慶枝らの落語も披露され、2人の門出を賑々しく祝いました。
出典: FANY マガジン
文枝「皆さんにかわいがってもらえますように」
緞帳が上がると、舞台には主役の四代目梅枝、五代目慶枝を筆頭に、落語家がズラリと勢ぞろい。口上の司会は、梅枝の兄弟子である桂小文枝が務めます。
まずは慶枝の師匠である六代桂文枝が口火を切り、「2人の門出を祝っていただいて嬉しく思う」と感謝。文枝は自身の襲名について、「師匠の色気にはなかなか届かないなと大変だった」と振り返りました。
それに比べて、梅枝、慶枝の名跡は100年ぶりに復活するため「誰も知らない」と指摘して笑わせながら、「2人にはこの名前を大きくしていってほしい」と期待を込めました。
続いて、前日に風邪をひいたという月亭八方は「声が出ないのに驚いて、もう引退しようかなと思った」とひとボケ。名跡襲名について、「お客さんはもちろん、本人も馴染むのに時間がかかる」と話し、「皆さまに1日も早く知っていただけるよう、ご支援いただけるようどうぞよろしくお願いいたします」と挨拶しました。
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桂米團治が「米朝一門から参加の人間国宝のご子息」と紹介されると、会場から笑いが起きます。これを受けて米團治は「私がここに並ばせていただくのは、ひとえに父親のおかげ」としたうえで、「名前の力ってあります。その名前がいつか背中を押してくれるように思える瞬間があります。その力を信じて」と襲名した2人に呼びかけました
続いては桂文珍が慶枝について、「いつも奥さまに怒られている」と暴露。さらに「小つぶから3回名前変えはった。奥さんも3回……」と梅枝の結婚歴をイジり始めると、まわりから「2回!」とツッコミが入ります。文珍は「おふたりの名前を覚えていただいて、皆さんにかわいがっていただけますように」と続けました。
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柳亭市馬は「芸歴も40年を超えるひとかどの噺家である2人が、いずれも由緒あるいい名前になることで、これからますます芸の道が広がっていく」と明言。そして「うれしかったり、めでたかったりすると、一節いきたくなる」と、祝いの相撲甚句を披露しました。
口上のトリは上方落語協会会長の笑福亭仁智です。梅枝が北海道で寄席を復活させたことや、慶枝が観客参加型の落語を商標登録するアイデアマンであることを説明。そのうえでW襲名を機にますます成長するよう2人にエールを送り、最後は“大阪締め”で口上を締めました。
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梅枝「2人に風を送っていただきたい」
口上が終わると、まずは桂坊枝が「手水(ちょうず)廻し」を披露。「手水」を知らない男たちの姿をユニークに演じて、客席を沸かせます。
市馬の噺は「藪医者」。なんとかして繁盛したい医者と、それ盛り上げる男の様子を面白おかしく聴かせました。
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文枝は「改めて2人の門出を祝っていただいてありがとうございます」と会場に伝えると、タクシーの運転手とのやりとりをマクラに、ユニークなタクシー会社が舞台の創作落語「真心サービス おじんタクシー」を披露しました。
この日の主役である梅枝は酒好きの男とその女房のやりとりを聞かせる「替り目」を口演。体を大胆に使ったかと思うと、お馴染みのCMを盛り込んだり、小道具も使ってどんどん盛り上げました。
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仲入り後は、米團治の「足上り」から。丁稚のユニークな告白の様子、芝居好きな番頭の熱演からの見事なサゲで笑いをとりました。
文珍は楽屋を訪ねてきた同級生との爆笑のやりとりや、シャレや時事ネタをたっぷり盛り込んだマクラに続いて、現代のIT用語を盛り込んだ創作落語「地蔵の散髪」を聴かせました。
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トリを務めたもう1人の主役である慶枝は「三風改め五代目桂慶枝でございます」と挨拶。「噺家生活の第二章をがんばりたい」と語り、「もう一度、やり直したいという男が2人出てくる」と「愛宕山」を一席。その熱演ぶりに拍手が起こるなか、師匠である文枝のギャグも盛り込んで観客を沸かせました。
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最後に再び緞帳が上がると、舞台には梅枝と慶枝の姿が。慶枝は「こんなにたくさんお越しいただきまして、新しい慶枝としてスタートを切ることができました」と感謝すると、梅枝も「芸人は風を送っていただかないと前に進むことができません。今日を境に2人に風を送っていただきたい」と客席に呼びかけ、会場は大きな拍手に包まれました。