SNSを眺めていると、様々な広告を目にします。その中には著名人の名を騙った詐欺目的のものも存在し、弊社記事でも数度にわたり注意を呼びかけてきましたが、先日話題になっていたのは、株式会社G-7ホールディングスが展開する「業務スーパー」が、SHARPの自動調理鍋「ヘルシオ ホットクック」を激安で販売する、という広告です。
その価格なんと320円。普通に買えば3万円以上はする自動調理鍋ですから、低価格をウリにする業務スーパーとはいえさすがに安すぎるのでは?今回はこの怪しさ満点の広告を調査していきます。
■ 本当に業務スーパーがヘルシオホットクックを320円で販売しているのか?早速調査
今回の広告はMeta社が運営するFacebook内で目撃されているもよう。筆者もチェックしてみると……ありました。本当に「業務スーパーがヘルシオホットクックを320円で販売している」という広告自体は存在するようです。
広告内の「注文する」をタップすると、画面が切り替わり、商品の販売ページへ。セール対象となるヘルシオホットクックは、どうやら2024年に発売されたばかりの最新モデル。これが320円で手に入るなんて……普通に考えればまずあり得ないでしょう。
ページを下部にスクロールしてみると製品のレビュー欄を発見。そこにはさも実在しそうなアカウントが、「やっと勝利を共有できる」「すごい、警告ありがとう」など実にたどたどしい日本語で購入の喜びをコメントしています。ちなみに筆者もコメントを試みましたが、投稿ボタンを押しても反応なしでした。
さて、ひと通りページをチェックしたので、いざ購入へ進みましょう。しかし、ページ内のどこにも購入ボタンはなく、どうやらその前に3つの質問に答える必要があるようです。
「自宅で料理をする頻度は?」「SHARP製品を使ったことがありますか?「業務スーパーで買い物をしたことがありますか?」という内容に回答すると……「素晴らしいニュースです!あなたの回答は無事認証されました!」という表示が。……ちょっと何を言っているのかよくわからない。
そして、次に画面に表示されたのは、9つのプレゼント箱。もしやこの中から購入権を引き当てろということなのでしょうか。ひとつ目をタップすると……残念ながら中身は空。案内によると、チャンスはあと2回あるらしいです。
続けてゲームにチャレンジすると、2つ目の箱も空……でしたが、なぜだか次は絶対に当たりそうな予感がします。自信満々に最後の箱を開けると……
や……やったぁー!見事ヘルシオホットクックの購入権を引き当てました……ってなにこの茶番!絶対当たるやつでしょ!(ちなみに、あとでやり直したところ、質問の回答を変えてもゲームにチャレンジできましたし、プレゼント箱はどれを開けても3回目に当たりました)
■ 購入権をゲットしたものの、怪しさ満点の情報入力
何はともあれ、無事に購入権をゲットできたので、手続きに進みましょう。まずはメールアドレスや氏名、住所、電話番号といった個人情報を入力する必要があります。すべて実在しない内容であることを確認したうえで、入力完了。「続ける」をタップします。
すると、次に表示されたのは、クレジットカード情報の入力画面。……はい、フィッシング詐欺の可能性がグンと高まりました。ここで誤ってカード情報を入力すると、まんまと情報を盗んだ相手に不正利用されてしまう、という危険性があります。
通常であれば3Dセキュアや他社の決済サービスを利用して決済取引を行う、といった表記があるはずですが、このサイトにはそうした案内が一切ありません。入力してしまったら最後、クレジットカードがいつ誰に使われてもおかしくない状況となってしまうのです。
念のため、テストカードの番号を入力してみると、「支払いが拒否されました」と案内が出ましたが、恐らく正規カードを使用しても同じ画面が表示されるでしょう。このパターンは何度もエラーを表示して複数回カード情報を入力させるのが狙いです。
その他不審な点はないかページをよくよく見てみると、320円だったはずの代金が380円に変わっていたり、2561件あるはずのレビューが5件しか表示されない、など至るところに「やっつけ感」が漂います。正規の販売店であれば、まずこうしたずさんなつくりにはならないでしょうね。
■ 業務スーパー、SHARPともに偽広告に対して注意喚起
調査結果としては、激安を謳った広告自体は存在するものの、金融情報を盗み取る目的の詐欺である可能性が非常に高いと言えるでしょう。
なお、本物の業務スーパー側は自社のHPにて9月19日に「業務スーパーの名称を使用した不審なSNS広告に関するお知らせ」との案内を出しており、SHARP側も8月30日に「シャープをかたる偽サイト・偽広告にご注意ください」として、これらの広告に一切関与していないことを発表しています。
少しでも怪しいと感じたらすぐに手を引くことが、詐欺に引っ掛からないための絶対条件ではありますが、そもそも大手SNSにこうした広告が出ること自体が大きな問題です。著名人を騙るにせよ、企業を騙るにせよ、広告の審査が緩すぎることは明らか。厳正な審査を行ったうえでの出稿となるよう、判定基準を見直してほしいところです。
<参考・引用>
業務スーパー公式HP「業務スーパーからのお知らせ」
SHARP公式HPお知らせ「シャープをかたる偽サイト・偽広告にご注意ください」
(山口弘剛)
Publisher By おたくま経済新聞 | Edited By 山口 弘剛 | 記事元URL https://otakuma.net/archives/2024100206.html