【DeNA】主戦捕手・祐大不在もなんの! コミュニケーション能力、洞察力、準備力…“頼れる兄貴分”戸柱恭孝の存在感

☆光る洞察力

 半年に渡る長いペナントレース。未曾有の激戦となった今年のセ・リーグも、1位と2位は確定し、ベイスターズとカープがCSを争っている。その最中、キラリと存在感を発揮しているのが、いぶし銀の戸柱恭孝。

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 プロ9年目のベテランは「ピッチャーって、やっぱり孤独だと思うんで。いいタイミングで話すようにはしてます。僕は人を見るの好きなんで」と投手陣のサポートを欠かさないと真剣な表情で話したあと「目、めっちゃ小さいんですけどね」と周囲を和ませる。この何気ないやり取りにも、戸柱の人間性が現れている。
  またその洞察力は、1日のゲームに発揮された。「いつものヒロムの投げ方とか、球の質がちょっと違ったので2球目で気づいた」と3連投となる伊勢大夢の異変を察知。打者ひとりを打ち取ったあと、すぐさまマウンドに直行した。

 コーチとともに状態を確認すると背中の違和感と告白され「言葉の選び方すごい考えました。あそこでヒロムがすんなり飲んでくれたので、ほんとによかったかなって。終わった後にありがとうございますみたいな一言ももらったので」と大事に至る前の降板をアシスト。「チームの大事な戦力が欠けずによかったです。欠けちゃったらチームとしてほんとに痛いと思うので。気づけてよかった」と表情を緩ませた。
 

☆主戦捕手離脱にも動じぬ準備力

 終盤の胸突き八丁の9月中旬、チームは攻守ともに躍動していた主戦捕手・山本祐大がデッドボールによる骨折で離脱。戦力低下が囁かれていたが、ベテランは遜色ない活躍を見せている。それには「本人が一番悔しいと思うんで」と後輩を気遣いつつ「ここはチームなんで。誰が欠けてもチームとしてはやっぱり勝ち続けていけるようにと、しっかり準備しているので」と窮地にも動じぬ強さを感じさせた。

 実際にバッティングでは5番や7番と得点に絡む打順で起用され、ここぞの場面で貴重な一打を放つ。これには「自分のスイングはできてるんで」と一定の自己評価をしつつ「みんなが繋いでくれて、チャンスの場面で何かことを起こせば起きる条件なので。みんなの勢いにそのまま乗っていってる感じですかね」と謙虚に振り返る。しかし三浦監督が「ルーティンとして毎日早出で練習している」と証言するように、その裏には蓄積された努力が結果に結び付いている。

 キャッチャーとしても、スタメンでマスクを被った直近のゲームでは1失点のみと好リードを披露。「ピッチャーのいいところを引き出すのを心がけるようにはしてます」と取り組みを明かすが「でもピッチャーが頑張ってくれてるんで、そのサポートというか。本当にゾーンにいいボールを投げてくれてるので、それが全てじゃないかな」と女房役としての矜持を示す。

 同時に「出てない時もね、あの時どういう気持ちで投げてたのとか。そういう話はよく質問したりしていたので、今になってあたふたせずにというか、手詰まりを起こさせないというのはありますね。やっぱり人間関係というか、日頃からしっかりコミュニケーションを取ってればね、相手もそうですし、僕自身もやっぱりしっかり会話ができるので、ずっと続けててよかったなと思います」と日頃の準備には胸を張った。
 

☆下剋上に向けて

 序盤に存在感をみせた中川虎大は「いいボールだよって自信つけてくれました」、移籍1年目で腕を振り続ける中川颯は「打者、捕手両面でアドバイスをくれます」と、様々なピッチャーから感謝の言葉が飛び交い、「漢の中の漢です。憧れます」と2年目のプロスペクトキャッチャー・松尾汐恩も心酔する“兄貴・トバさん”。

 チームでは残り少なくなった日本シリーズ経験者のひとりとして、横浜の大黒柱はいま、奮い立つ。

取材・文●萩原孝弘

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